
今回は転職では欠かせない存在である、転職エージェントの話題です。先生は転職エージェントにどのようなイメージをお持ちでしょうか?先生によってそれぞれかと思いますが、今回は転職エージェントを信用しすぎ、頼りすぎると、思わぬ落とし穴にハマることがあるという注意喚起の記事です。
今回の記事は2回にわたって転職エージェントについてお届けする、前編になります。後編(転職エージェントは大きな力になる。)では別の角度から転職エージェントを考えていくのでそちらも楽しみにしていて下さい。
転職における転職エージェント
転職エージェントは転職にはなくてはならない存在です。先生が転職をしようとする場合、転職エージェントの協力なくしての転職はできません。転職ではもっとも近い存在となり、ある意味家族よりも転職に深く関わることになります。そのためどのような転職エージェントがサポートしてくれるかで、転職の結果が異なってきます。
このように転職において非常に重要な転職エージェントですが、難しい面が一つあります。それは先生が転職エージェントを選ぶことはできないということです。どのようなエージェントが担当になってくれるかは、完全に運次第になります。優秀なエージェントがバックアップしてくれれば、転職は非常にスムーズに進みますし、そうでない場合、なかなか難しい話になります。
医師求人会社の利益構造
転職エージェントと上手に付き合うには、相手の利益構造を把握することが重要です。転職会社は先生と医療機関を仲介することで、成り立っています。基本的には成功報酬型が多く、先生がとある医療機関に転職された場合、その年収の20%前後を報酬として、医療機関から求人会社に支払われます。先生がそのエージェントから転職をしなかった場合、報酬は発生しません。当然それでは商売が成り立たないので、困るわけです。そのため求人会社、転職エージェントとしては、自分の会社を経由して先生の転職を成功させたいという心理が大前提にあります。
この構造は先生にとってはメリットがあります。先生は金銭的な負担なく、事務手続きや条件交渉を転職エージェントに依頼できます。年収アップの交渉などは、成功すればその分仲介手数料が増えるので喜んで交渉してくれます。
その反面、デメリットもあります。それは先生にとってあまり良くないような転職先でも、仲介手数料が欲しさに、積極的にすすめてくる可能性があるということです。転職エージェントとしては、非常にドライなことを言えば、先生が自分の会社から転職をしてくれれば、その後の事はどうでもいいわけです。先生の転職が本当に上手くいこうが、いくまいが、自分の商売には関係ないと考えている人もいるということは、先生には覚えておいて頂きたいです。
求人エージェントにいいようにされてしまう先生も
求人エージェントの立場で考えてみると、もっとも良いお客さんは、「数年おきに転職を繰り返してくれる医者」ということになります。転職をするたびに仲介することができれば、その都度数百万円のお金が仲介手数料としてそのエージェントに入ってくることになります。実は転職後すぐに先生が退職してしまうと、手数料の一部しか受け取ることができないため、転職してから1年ほど経過したタイミングで次の転職を唆すような、悪徳に近いエージェントも中にはいるようです。
転職業界の不都合な真実
求人エージェントの本音としては、先生にベストな転職をしてもらうよりも、そこそこの職場である方が実はよいわけです。ベストな転職先を先生にご紹介し、先生が定年まで勤められた場合は転職を仲介するタイミングは一度きりになります。しかし先生が何度か転職をされれば、その度に高額の仲介手数料がエージェントや求人会社の懐に入ってくるわけです。これはあまり語られない不都合な事実ですが、相手も商売なので、責められるようなことではなく、構造的にやむを得ないことであると思います。
先生にご注意を頂くことは、このような事実を頭の片隅において、転職活動をしていただければと思います。
悪質なのは数年おきに転職を唆すエージェント
上記でも少し触れましたが、転職エージェントにとってもっとも都合がいいのは、転職して1年ほど経ったあたりで、再転職を繰り返してくれるような先生です。先生の転職を斡旋して、1年程経った頃、久しぶりに以前転職を手伝ってくれたエージェントから連絡があります。「最近どうですか?その後困っていることはないですか?」と。だいたいどんなに優良な職場でも、1年もすれば一つや二つの不満や、気に入らない点は出てくるものです。先生の話を聞きながら、「実はいまご紹介したい優良な求人が出てきたので、そのご紹介も兼ねて一度面談はいかがですか?」と持ちかけます。面談に行くと先生の愚痴も聞いてきくれて、それではこちらの求人に再度転職はいかがですか?と続き、いつの間にかまた転職する流れになっていく、、、というわけです。
これはかなり極端な例ですが、似たような例はあります。実は医師だけでなく、看護師さんも転職が多い業界なので、もっと露骨なことも行われています。実際に休憩室で看護師さんが、求人会社から、再転職を持ちかけられているのを偶然耳にしたことがあります。(その職場は休憩室と診察室が隣り合わせで図らずも会話が筒抜けでした。。。)給料がいまよりアップする、あなたにメリットしかない、一度話をしましょうと、、、かなり押しの強い営業トークを受けていました。職業倫理的にはどうかと思わなくはないですが、向こうも商売ですから、ある程度は仕方ないのでしょう。
求人エージェントの見分けかた
先生にとって良いエージェントと、注意しなければならないエージェントの見分け方ですが、これは非常に難しいです。正直最初の見た目や印象では分かりません。明らかに人としてこれは、、というような人は別ですが、人当たりが良くても良い人とも限りません。こればかりは、何人かと会ってみて、徐々に慣れていくしか無いと思います。正直運の要素が大きいです。
私の個人的な経験ですが、優秀であった方は、レスポンスが早い、都合が悪いことも教えてくれる、嘘はつかない、などの特徴がありますが、ざっくりしていてあまり参考にならないと思います。
むしろ注意しなけばならないエージェントは、異常に押しが強い、メールの返信が深夜などブラックな環境で働いている、こちらの希望を聞かずむしろ妥協を迫ってくる、そんな希望は通りませんなど初めから探す気が無い、明らかに危険な案件を推してくる(先生の好きなように標榜を変えて自由にやって良いという怪しいクリニックの院長案件など、、、これは詳しく書けません。)、などの特徴があったと思います。
また年配のエージェントであっても、医師転職業界で経験が豊富とも限りません。医師転職が一般的になってきたのは、比較的新しいことです。年配のエージェントが新卒で入社してずっと医師転職の仕事をしていたとは、考えにくいです。もしそうなら現場エージェントではなく、その会社の幹部クラスになっている可能性が高いでしょう。ややこしい話ですが、転職エージェント自身も転職して、この業界に入ってきているケースもあります。この場合年齢が経験の指標にはなりません。そのため若手のエージェントでも新卒から仕事をしている場合、かなりの経験があるケースもあります。私が出会って優秀だったり、親身になってくれるエージェントは比較的若い30代前後の方々でした。
逆に危険性を感じたのはある程度の年齢であるものの、この業界の経験があまりなさそうなエージェントでした。あくまで私個人の経験です。
人柄と求人内容が相関しないこともままある
求人エージェントも大事ではありますが、もっとも大事なのは求人内容です。エージェントとの付き合いは転職時までですが、転職先での付き合いは長く続きます。なかなか悩ましいのが、求人エージェントがよければ、求人内容もよいかというと、必ずしもそうでないことです。むしろ今ひとつやる気がないと思われるエージェントが、ピッタリの求人を持ってきてくれたりするものですから、なかなか難しいものです。
そのような場合は、もちろん求人内容を優先してください。一生懸命動いてくれるエージェントを経由して転職したい気持ちはあるかと思いますが、転職先で実際に働くのは先生ご自身です。転職では、多少わがままなくらい、ご自身のこと第一に考えることを忘れないようにしていただければと思います。
まとめ
今回は求人エージェントについての注意喚起に関する記事でしたので、ややマイナスな印象を抱かれたかもしれません。ちなみに次回はプラス面にフォーカスしていきます。
結論として先生に注意して頂きたいのは、エージェントも自身の仕事を遂行する以上、必ずしも先生のことを第一に考えているわけではないということです。繰り返しになりますが、転職活動を行う中で、何かおかしいと感じたり、違和感を覚えた場合は、おそらく先生の感覚が正しいです。危険信号が点滅しています。その場合は、そのエージェントと距離を置くか、思い切って転職活動を一旦止めてみて下さい。適当に転職してしまうと多くの先生は後で後悔します。それなら時期を待った方がよいです。
もしそのエージェントと合わないと思ったら、別の会社のエージェントと話してみると視点が変わって、あっさり解決することもあります。転職活動では、求人会社を一つに絞るのはハイリスクです。かならず複数の会社と関係を持つことをオススメします。