求人エージェントに頼らずに自分でやる方がいいこと。

医師転職は、基本的には先生一人で行うことはなく、医師求人会社、求人エージェントにサポートしてもらいながら行うことになります。求人エージェントは強力な助っ人になりますが、関わり方を間違えると、先生にとって思っていなかった転職になってしまうことがあります。転職の際はどこまでを先生ご自身で行うか、どれを転職エージェントに任せるかの見極めが重要です。転職経験豊富な管理人が考える、われわれ医師サイドがやるべきポイントについてお伝えします。

求人情報検索

求人の検索はまずはご自身で

求人の検索は最初は先生ご自身でやることがオススメです。求人を先生がご希望する条件で検索し、求人情報をご覧いただくと、待遇や給与の相場を体感で把握頂くことが出来ます。たとえば内科で週5常勤だと、年収は〇〇円くらい、ということから始めて頂くのが重要です。求人をみていると、診療科、地域でだいたいの平均的な待遇が分かってきます。平均値を知っていれば、転職市場で待遇の面では、大ハズレを引く確率はかなり下げられます。

またいくつもの求人をみていると、先生の中で新たな希望が出てくるなど、転職条件が徐々に洗練されてきます。特に転職が初めての先生は、遠慮してしまい、不要な妥協をしてしまいがちです。転職を探し始める段階では、欲張りなくらいで求人を探してみる方が、結果的に希望の職場にたどり着きやすいです。検索するような段階では全く遠慮はいらないので、是非先生好みの求人をどんどん検索して、多くの求人情報に触れてみて下さい。併行してメルマガの活用も非常に有効な方法です。

極端な条件で検索してみる。

求人情報の検索に慣れてきたら、先生ご自身では全く希望しないような条件で検索してみて、他の市場を覗いてみるものオススメです。例えば東京で内科の常勤を探している先生であれば、内科の北海道の求人や、東京の美容皮膚科の求人をみてみると、現在先生が探されている市場とは全く違った風景が見えると思います。他の求人と比較してみると、先生ご自身の立ち位置がより明確になると思います。

業界の上限がみえてくる

ある程度の求人情報をみていくと、先生が希望する条件における、最も良い待遇というのが見えてきます。東京の内科の週5日常勤ではだいたい1500万円ほどが相場であると思います。年収2000万円まで行くのは結構難しいです。内科で年収アップを希望される場合は地方の病院に行く等の工夫が必要になります。しかし内科でも訪問診療に対応可能であれば、年収2000万円は比較的簡単に達成できます。このようなことが、肌感覚で分かってくると思います。

待遇については業界の構造的な限界もあります。地価が高い都心で、保険診療の範疇では、先生に払える給与にも限界があります。保険診療で高額な給与が提示できるのは、内科では診療点数が優遇されている在宅診療の領域くらいです。一方で美容皮膚科などの自由診療では週5常勤で年収2000万円を超えることが普通です。保険診療の縛りがなく、価格も自由に決めることができる自由診療では、高給を狙うことが可能です。

働く条件はもちろん年収だけではないので、福利厚生や働きやすさなど定量化しづらい面もよく考慮することが必要ですが、先生には、同じ条件で働くのであれば、なるべく良い条件で働いて頂きたいです。

求人情報を把握していると、求人エージェントにも依頼しやすい

ある程度その界隈における求人情報に精通した後は、求人エージェントに協力を仰ぐと、より有益な情報を得やすくなります。求人エージェントに探して欲しい希望を伝えるときも、事情が分かっているとより具体的で現実的な希望を伝えやすくなるためです。

たとえば、上の例では、何も知らない状態では、「常勤で2500万円を超える、東京の内科の求人を探して欲しい」と伝えてしまうかもしれません。それは現実的な条件ではないことは、ある程度情報を得ていればわかります。求人エージェントも困ってしまい、こちらが何も分かっていないと思われてしまいます。

一方でたとえば、「東京で年収2000万円を超える訪問診療の求人で、東京駅から60分圏内で探して欲しい。たとえば、〇〇のような求人を自分で見つけてチェックしているが、似た求人や、これより条件がよいものがあれば教えて欲しい」というような依頼であれば、求人エージェントも、具体的な求人を提示することが可能になります。

雇用契約書は絶対に先生が精読する

面談設定などの事務的なことは、求人エージェントに基本的にお任せする先生が多く、私も基本的にそれで良いと思いますが、雇用契約書はかならず先生が念入りにチェックして下さい。少しでもおかしいと思ったり、気になる箇所がある場合は、そのままにせず、必ず指摘して明確にして下さい。雇用契約は最初が肝心です。後から変えるのは本当に大変です。曖昧な部分は残さない方が後々問題が起きません。

求人エージェントも人間です。書類は基本的にコピペで使いまわして、先生にかかわる部分だけ修正しているケースも多いです。そのため思ってもいないところで、ミスをしている場合もあります。本当にくだらないことですが、根本的に条件を勘違いしているケースもあります。署名をしてしまったあとでは、たとえエージェントのミスであっても、責任は先生が負うことになります。署名する前には十分すぎるくらいに注意をしてください。

求人エージェントへの過度な信用は要注意

求人エージェントは転職において、本当に頼りになる存在ですが、頼りすぎ、信用しすぎなど、過度の期待は禁物です。求人エージェントは先生だけでなく他の先生の案件も複数抱えています。多忙な時期はどうしても一人に割ける時間が少なく、先生に十分な提案をできない可能性もあります。たとえ求人エージェントから色よい返事が得られなくても、がっかりせずにすぐに他の会社に相談されることをおすすめします。実際私も、求人エージェントにある条件で紹介を依頼したものの、そのような条件の求人は見当たらないと返答された後に、自力で検索したら目当ての求人が出てきたような例もあります。当然ですがエージェントも流動的な求人情報をすべて把握しているわけではないということです。

また求人エージェントは会社や人によって、力量や熱意にかなりの差があります。大手でしっかりと研修や上司のサポートがある会社もある一方で、そうでないところもあります。特に注意が必要なのは、一見年配で経験豊富に見える方でも、その人自身が医師転職業界に転職したばかりで、業界経験が浅い可能性があることです。これは一見ではわからないので、要注意です。

これはあまり言いたくありませんが、歩合制の一部の超優秀なエージェントはかなりの高給を得ている一方で、ほとんどのケースでは、先生の年収には届かないです。。。つまり先生以上の働きを期待することは、そもそも無理があるとお考え頂いた方がよいです。

また求人会社の利益構造もよく理解する必要があります。求人エージェントは、先生のことも考えてはくれますが、当然自分のことを一番優先して考えています。エージェントとしては、先生を医療機関に紹介しなければ収益が発生しません。なので、先生がまだ転職を迷っているような段階でも、積極的に転職をオススメしてきます。それは向こうも商売ですから、やむを得ないと思います。そのあたりの事情を把握したうえで、求人エージェントと関わると、お互いに良い距離感を保てると思います。

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