医師求人会社の利益構造

今回は転職の際に必ず利用する医師求人会社についての記事です。求人会社は先生は無料で利用することができますが、当然何かしらの収益を得ることでビジネスが成り立っています。求人会社の利益構造を理解することで、転職を有利にすすめる事ができます。特に転職が思うように運ばなかった際に注意することも含めて考えていきます。

求人会社の利益構造

医師求人会社は、先生と医療機関をつなぐマッチングビジネスです。先生を医療機関にご紹介することで、医療機関から手数料をもらい、商売が成り立っています。相場としては先生の年収のおよそ20%ほどと言われています。先生が年収2000万円の勤務先に転職したとすると、求人会社には400万円もの仲介手数料が支払われる仕組みになっています。転職ビジネスの中でも医師の給与は高めなので、高額のお金が動くことになります。

求人会社は先生に転職してもらいたい

上のような利益構造のビジネスなので、求人会社としては、先生に転職をしてもらいたいという心理が働きます。高額なお金が動くビジネスなので、それは当然の心理です。先生が希望の条件を出すと、医師求人会社は必死に条件に合うような医療機関を探してくれます。ピッタリ合う求人が見つからない場合も、似た条件の求人をいくつも提案してくれることが普通です。

先生のことを第一に考えているわけではない

ここで先生に覚えておいて頂きたいことは、医師求人会社は先生が転職先で幸せになれるか、転職してよい人生になるか、ということを第一に考えているわけではないということです。医師求人会社は先生が転職してくれるかを第一に考えています。それは向こうにとってもビジネスなので、責められることでは無いでしょう。転職してくれないと、こちらの商売が成り立たないと露骨に口に出しては言いませんが、内心はそのように思っている場合もあると思います。

そのため先生が転職してもいいかな、というような求人が見つかった際は、必ず転職する方向で勧めてきます。冷静に先生が納得して転職されるのであれば全く問題ありませんが、このような状況ではエージェントは転職方向で話を持っていきたがることを覚えておいてください。

また医師求人会社は併行して複数利用するのが普通ですが、もしA社のエージェントに、B社の求人で迷っているところがあると相談しても、まずそちらを勧めることはありません。A社には1円にもならないからです。ポジショントークが普通であることも忘れないようにしてください。

早く結果を出したいエージェントは焦らせることも

エージェントによっては、先生を焦らせ、急き立ててなんとか転職をさせようとする場合もあります。おそらく医師求人会社にもノルマや上司からの圧力があるのでしょう。切羽詰まっているエージェントはこちらにも伝わってしまう程に必死です。このような状況では、よい転職ができるはずがありません。一度そのような会社とは距離をおいて、冷静な判断力を取り戻しましょう。一番やっては行けないことは、先生が焦ってしまい、よく考えずにとりあえず転職してしまうことです。

先生ご自身のことを一番考えることができるのは、先生だけ

当然かもしれませんが、先生ご自身の幸せや、人生を一番考えることができるのは、先生ご自身しかおりません。転職活動が煮詰まってくると、当たり前の判断力が鈍ってくるので、どうかこれだけは忘れないでください。転職活動で一番近い存在は、ご自身を除けば求人会社のエージェントです。そこが転職の一番の落とし穴であると私は考えています。転職が思うようにいかないときに、相談出来る相手はエージェントなので、どうしてもエージェント寄りの考えになってしまいがちです。エージェントは仕事上、手持ちの求人で先生に転職を勧めなければなりません。先生にとってベストではないと内心思っている場合も、勧めざると得ないのです。もし先生に迷いがある場合は、一旦転職活動を止めることも選択肢にあることを思い出してください。

相手の利益構造を知れば、有利に転職をすすめることが可能

医師求人会社の利益構造を知ると、たとえ担当者に急き立てられても焦る必要がないことがわかります。加えてこの利益構造を利用して有利に転職を進めることも可能になります。もっとも良い例が、給与の交渉です。一般的に年収が上がるほど、仲介手数料も上がり、求人会社に入るお金も多くなるため、給与アップの交渉は喜んでやってくれます。休みを増やしたいより、給与を増やしたい方が求人会社にとってはモチベーションになるのです。

※余談1 一番医師求人会社にとって良い先生は、数年おきに転職を繰り返してくれる先生

医師求人会社にとって最も良い先生はどのような先生でしょうか?それは一回の転職でよい転職先をみつけて、定年まで勤め上げてくれる先生ではありません。数年おきに転職を繰り返してくれる先生なのです。理由は簡単で、転職の度に仲介手数料が医師求人会社に支払われるからです。一回の転職で最高の職場を見つけることができたら、その先生は以後転職することはなく、求人会社に手数料も入りません。かたや数年おきに転職してくれる先生をみつければ、数年おきに数百万円ものお金が入ります。求人会社にとってどちらの先生が都合がよいかは明白です。

しかし数年は勤め上げるというのがミソです。一般的に1年以内に先生が退職してしまうと、医師求人会社への手数料が減ります。そのため先生にとって絶対合わないような職場はまず紹介しません。

真偽のほどは不明ですが、我慢すれば続けられるけど、少し不満もあるくらいのところに紹介し、数年後にもっといい求人がありますよ、と連絡をするエージェントもいるとかいないとか。。。。

※余談2 直接医療機関への応募は?

この話を聞いて、それでは医師求人会社を経由せずに、直接医療機関に応募したほうがよいのでは?と思われる先生もいるかも知れません。しかしこれは先生の立場から考えると、労力面や、契約交渉の面から私はおすすめしません。

医療機関によっては、ホームページに求人を載せているところもあります。直接応募して就職となった場合はお祝い金を支給する医療機関もあります。お祝い金を支給しても、求人会社に支払う手数料を考えたら安く済むからです。医療機関にとっては直接応募してくれる先生のほうが正直ありがたいでしょう。

しかし先生の立場で考えた場合、応募の書類の作成、面接の手配や、契約の交渉などすべて先生ご自身で行わなければなりません。仕事をしながらこのようなことまで行うのは現実的には難しいでしょう。特に条件や給与の交渉などは、医師求人会社のほうが長けています。交渉に慣れていない先生は、足元を見られてしまい、不利な条件で契約となるリスクがあります。現状ではお金を先生が負担する必要ないので、求人会社は利用させてもらったほうがよいと思います。

非常に優秀なエージェントもいる

このサイトは先生方に転職を成功していただきたいので、どうしても医師寄りの発言になってしまいますが、中には非常に優秀なエージェントもいるのも事実です。そのようなエージェントと組めば、先生が想定していた以上によい転職先に巡り合う可能性もあります。

私が出会った優秀なエージェントの方をご紹介します。その方は不思議なことに、終始全く私に転職を勧めることはしませんでした。問い合わせた求人について質問すると、すぐにメールで返信をくれました。またすぐにかわらないことは、先方の医療機関にすぐに問い合わせてくれました。かなり忙しそうな方でしたが、レスポンスが早かったのが印象的です。その方は私を紹介した医療機関に患者として実際に足を運んだ経験もあるとのことでした。そこまでやるものかと驚いたものです。

面接の時も当然同行してくれました。医療機関の担当の方からも非常に信頼されているのがわかりました。既に私の他にも何名も系列の医療機関に紹介した実績があったようです。エージェントの中にはここまで優秀な方もいるのだと、感動すら覚えました。

結局この方の紹介で非常勤の勤務が決まりました。転職後も時期をみてメールをくれることもあります。通常は転職してしまえばそれで終了のケースが多いですが、アフターフォローもされる方はこの方が初めてでした。

まとめ

先生方に注意して頂きたいという気持ちから、今回の記事を通して医師求人会社に少しネガティブなイメージを抱いてしまったかもしれません。しかしビジネスである以上、先方にもやらなければならない仕事があることも事実です。それは全く非難されるようなことではなく、資本主義の世界では当然といえます。

お伝えしたかったことは、医師求人会社は100%先生の味方とは限らないこと、利益構造を知ることで、注意するポイントが分かることです。逆説的ですが医師求人会社の助けなくして、転職の成功は難しいです。ベストなのはお互いにWin-Winの関係を築くことであると思います。

今回の記事が少しでも先生の転職の助けになれば幸いです。

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