週5の常勤は、もはやコスパが悪いのか?

医師の働き方では、一昔前までは、週5常勤が一般的で、土曜午前も含めての週5.5日というところも珍しくありませんでした。今でも医療機関によってはそのような労働環境の先生もいらっしゃると思います。また雇用契約では週5でも、事実上毎日出勤してお休みがないような先生もおられると思います。
しかしながら医師の働き方も、だいぶ変わってきました。もちろん今でも連日オンコールで休みがまともに取れないような職場もありますが、そのような劣悪な労働環境は確実に減ってきている印象です。働き方も多様性が認められるようになってきており、週4や週3の常勤求人もみられるようになり、また非常勤を掛け持ちする先生も増えてきました。今回は週5日の常勤と、他の働き方を比較して考えていこうと思います。

週5常勤の是非について考える。

従来から主流の週5日働く場合で、同じ医療機関に週5日勤務するケースですが、いくつかのデメリットがあります。最大のデメリットはどうしても給与が低くなりがちであるということです。平均的に医師日給は非常勤勤務の場合、一日で8万円前後であると思います。もちろん自由診療や訪問診療など、もっと単価がよいお仕事もあります。

週5勤務だと、月平均の勤務日数が平均21日と仮定すると、年間で252日勤務することになります。非常勤で日給8万円の仕事をした場合、8万円×252日で、年収としては、2016万円となり、2000万円を超えます。また日給9万円の場合は、年収2268万円、日給10万円では、2520万円となります。

しかしながら週5の常勤で、一般的な保険診療の勤務の場合、年収2000万円を超える求人は珍しいです。平均的にはある程度の経験年数で、1500万円前後に落ち着くところが多いです。年収1500万円で、日給を換算してみると、59,524円と、6万円弱になります。思ったより低めと思われる先生も多いのではないでしょうか?また年収1200万円では、日給換算で47,619円となり、日給5万円を切ってしまいます。優良な非常勤勤務の半分以下になってしまいます。

しかしこれは有給や社会保険料、退職金を考慮しない概算なので、実際としてはこれよりも差は少ないですが、常勤と非常勤の給与に差があるのは事実です。常勤と非常勤の比較については、こちらの記事も参考にして頂ければ幸いです。(参考記事→常勤か非常勤か?

常勤は、雇用形態の安定性、社会保険料、退職金など、目に見えにくいメリットがあるので、これらの分給与が低めに抑えられているとも考えられます。

週4常勤+週1非常勤という手法

週5常勤より週4常勤+週1非常勤の方が手取りは多い

週5で同じ医療機関に勤務するよりも、週4で常勤を確保しながら、週1の非常勤を組み合わせた方が手取りは大きくなります。しかも常勤の安定性や社会保険料の負担も確保した上でいいところ取りができます。

例えば週5日で年収1500万円の場合、週4日の勤務にすると、年収1200万円になります。週4勤務を認めてる医療機関では多くは単純に年収が4/5になります。そして非常勤では給与を重視して、日給10万円の勤務先を確保したとします。日給10万円で、仮に年間50日勤務する場合は、非常勤の年収は500万円になります。これに常勤と合計すると、年収1700万円になります。勤務日数が変わらず、常勤の安定性を確保した状態でも、先ほどと比べて200万円もの年収UPが可能になります。これはかなり有効な手法です。

社会保険料の負担も減る

また週5→週4になった場合、社会保険料も節約できるメリットがあります。社会保険料については、非常勤でいくら稼いでも上がることはありません。常勤の給与に連動するためです。そして週4になると、常勤の給与が下がる分、その分社会保険料が節約できることになります。これは隠れたメリットです。節税できる分、手元に残るお金が増えることになります。

退職金は減る

常勤の給与が減る分、退職金については減ってしまいます。多くの場合は週4でも退職金は出ると思われますが、退職金については医療機関によって異なるため、これについては個別の確認が必要です。

オンコールがあると、仕事がない日に休まらないリスクはある

仕事内容にもよりますが、オンコールが多い職場の場合、週5から週4にしてもさほど仕事負担は変わらず、単純に年収だけがダウンしてしまうリスクがあります。週4を認めてくれる職場であればそこまでハードな環境でないこと想定されますが、オンコールには注意が必要です。そもそも非常勤の日には他の仕事をしているので、対応が困難になります。理想はオンコール免除での週4常勤という形が最適と思います。

週5の常勤と週3の非常勤で、手取りはあまり変わらないケースもある

たとえば週3日で高単価のお仕事を行った場合、週5常勤と給与が変わらないか、ヘタをすると週5常勤の年収を超えてしまうこともあります。非常勤で日給10万円の高単価のお仕事を確保した場合、週1でおよそ年収500万円換算なので、週3の場合はこれだけで年収1500万円となります。もちろん非常勤のみの場合は社会保険料は先生ご自身で負担、管理しなければならないので、単純に非常勤の方が優れているとも言えませんが。。。

また非常勤では雇用形態の不安定さというリスクもあります。常勤と違い、非常勤は雇で目にあって、仕事を急に失う可能性もあります。そのリスクヘッジのために、非常勤の職場はいくつかの独立した職場に分散させる必要があります。

上記のように、単純な比較はできないですが、そうは言っても、額面上の年収では週3勤務で週5常勤を上回ってしまうこともあるのは事実です。リスク許容度にもよりますが、QOLを重視する先生には、ひとつの選択肢になるかと思います。

給与だけ見れば非常勤を入れたほうが良くなる

今後は週5常勤だけでなく、週4常勤や、非常勤をかけ合わせる方法など、働き方の多様性は拡大すると思います。
もしかすると、今後は同じところで週5日働くよりも、週4常勤+週1非常勤の方が主流になってくるかもしれません。実は週5日同じ職場に勤めることは、その職場に何かあった場合、一気に職を失ってしまうというリスクも存在します。今までは医療機関が潰れるということは珍しいことだったので、リスクが顕在化しませんでしたが、今後はどうなるかわかりません。医師もいくつかの職場に分散させてリスクヘッジすることが一般的になるかもしれません。

またQOLやライフワークバランスを重視して、週の勤務日数を減らしたり、非常勤をかけもつような医師は増えてくると思います。医師の世界も、日本全体の斜陽化の影響は避けられないので、ひたすらハードワークで高給を目指す考え方は、どこかの時点で難しくなって行くかもしれません。しかしながら、給与はそこそこでも、QOLやワークライフバランスを重視するスタイルは現実的になってくると思います。バリバリ働きたい先生には物足りないかもしれませんが、家庭や趣味と仕事を両立させたいという先生にはチャンスの時代かもしれません。厳しい世の中ではありますが、考え方によっては悪いことばかりではないのかなと思います。

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