
以前の記事で転職を検討している医療機関が、先生にマッチするかどうかを見極めるには、実際に働いている先生へインタビューすることをおすすめさせていただきました。今回はこのインタビューについて、考えていこうと思います。
実際に働いている医師へのインタビューはおすすめ
そもそも転職で失敗したと感じるのは、転職後に思ったような職場でなかった!と気づく場合です。本来は入職してみないとわからないことも多いですが、事前に実際に働いている先生に話を聞くことで、こんなはずでなかった!となるリスクを、かなり減らすことができます。事務さんや採用担当の方はやはり都合の悪いことは言わないことが多いです。その点、実際に働いている先生であれば、特に利害関係は薄いので、本当の話をきくことが可能です。
インタビューをすると言ってもせいぜい30分ほどです。30分ほどの面談で転職失敗の可能性を減らせるのであれば、コストパフォーマンスは非常によいです。特に常勤で入職を検討している場合は、必ず行ったほうが良いと思います。
先生だけでなく、医療機関側にとっても利益がある
転職を検討している段階で、医療機関に実際に働いている先生との面談を依頼することに、抵抗がある先生もいらっしゃるかもしれません。まだそこまで本格的に考えているわけでもないのに、話を聞きに言ってもいいものかと、躊躇われる先生もいらっしゃるかもしれませんが、実は先生がインタビューされることは、先生だけでなく、医療機関側にもメリットがあります。
先生がインタビューをした結果、その医療機関のことが気に入り、入職してくれれば、長く勤めてくれる可能性が高いです。その医療機関の内情を分かった上で、応募してくれるわけですから、少なくとも入職後にすぐに辞めてしまうようなことはないでしょう。採用側としては、良い先生に長く勤めてもらえる方が嬉しいです。
逆に医療機関側が一番困るのが、入職してくれたはいいけれど、短期間で退職してしまうパターンです。これは採用側が最も避けたいパターンになります。医師一人を紹介してもらうには、常勤の場合は数百万円の費用がかかります。事務的な手間も少なくありません。もっとも損してしまうのは、仲介する求人会社にもよりますが、入職して半年から1年後に辞められてしまうパターンです。入職1ヶ月など、ごく短期間で辞めた場合などでは、通常は一部の手数料が返ってきますが、一定期間勤めると、仲介手数料は返金されません。これは医療機関側にとってかなりの痛手となります。経営状態に与える影響も少なくありません。直近にこういう事例があると、医師不信のように陥っている採用担当の方もいます。
インタビューのタイミングは?
インタビューのタイミングについては、入職を検討できるところが見つかった時点がよいと思います。
まず先生が見つけた求人や、エージェントから紹介してもらった求人の中から、よいと思われる求人について、細かい条件を詰めていき、また疑問点をあぶり出します。待遇の問題点や、交渉できるポイントを、転職エージェントを通じて、質問、交渉を行います。もしこのやり取りの時点で、先生の希望通りでなさそうなら、ここで一旦止めて、違う求人に移りましょう。例えば当直免除希望の先生が、当直免除は難しいという医療機関に話を聞きに行っても、それは時間の無駄だからです。
条件の交渉や確認の中で、先生の希望が叶えられそうな医療機関であれば、病院見学を転職エージェントに設定してもらい、その時に、実際に〇〇科で働いている先生で、入職した場合、深く関わる現場の先生とお話させて頂きたい、と言っていただければ、インタビューを設定してもらえると思います。
この見学の時点では、採用試験などは兼ねない方がいいです。インタビューの結果、先生としては印象が微妙だったけど、先方は是非来て欲しいと言われた場合、断ることに罪悪感を感じる先生もみえるためです。見学の結果、先生の印象が良ければ改めて依頼すれば、後日採用面接を組んでもらえます。二度手間に感じるかもしれませんが、この手間は惜しまない方がいいと思います。
転職の盲点ですが、先生の本心よりも、情に流されてしまうこともままあります。特に医療過疎地域など、事情を知ってしまうと、なんとかしてあげたいと思われる先生も少なくないですが、あくまで先生のお気持ち、人生が一番ということは決して忘れないで下さい。
質問は遠慮しない方が良い。
質問の項目は、事前のやり取りでは見えないような、入職してみないとわからないような、実際的なことを質問しましょう。このとき遠慮はせず、聞きにくいようなことも是非質問して下さい。聞きづらいことを確かめに来ているのですから、質問しないと勿体ないです。
質問する項目は先生により異なると思いますが、思いつく限り以下に挙げてみます。
オンコールの頻度 日直 当直 時間外 健診業務 有給休暇の実際 夏季休暇 年末年始 長期休暇 受け持ち患者数 外来の単位数 医局の空気 他科連携のしやすさ 研修医指導の有無 医療設備 検査機器 搬送先 患者層 実際の退勤時間 残業代がでるか 医師離職率 スタッフとの関係 書類業務の範囲、、、など、質問は多岐にわたります。質問事項は漏れがあるといけないので、メモを持参して、先生が聞きたい項目を、あぶり出して臨むようにしていただければと思います。
ここまで、ずかずかと聞いていいのかと躊躇われることもあるかとは思いますが、実際に入職したら必ず見えてくる項目です。入職後にこんなはずで無かった!となるよりは、事前に分かっていた方が絶対によいです。たとえ先生の当初の希望と違っても、この点なら譲歩できるというような、妥協点も探ることができます。もちろん聞き方はあると思いますが、はっきりさせたい点については、遠慮せずに質問する方がお互いにとって良いと思います。
インタビューの目的は大外れを避けること
インタビューの重要な目的のひとつは、転職での大外れ、大失敗を防ぐことです。これを事前に知っていたら、絶対に転職しなかったのに!ということを避けることが一番の目的です。そのため譲れない項目については必ず念入りに確認するようにしてください。以下でオンコールにでの具体例を挙げてみます。
オンコールの具体例
オンコールについては対応が医療機関によってかなり異なります。完全主治医制のところもあれば、グループで当番制の病院、基本当直対応で対応困難の時だけの病院、めったに無い病院、完全になしの病院と様々です。
オンコールについては、医療機関の差が非常に大きく、入職してみないとわからない項目の筆頭です。オンコールなしとなっていても、どうしても主治医でないと判断が出来ないケースなどには、やむを得ずかかってくるケースもあります。その場合も電話対応だけでよいのか、出動しなければならないのかでも、労力が全然異なります。
このことは実際に働いている先生に聞くことが最適です。またその病院の空気として当直対応が普通となっているのか、主治医対応がないと困るというような空気なのかも重要です。病棟で担当を持つ以上はオンコールなしとなっていても、実際は稀に対応を求められることもあります。それはどうしても排除しきれないところだとは思います。その際に電話に出れなくても責められるようなことはないのか、それとも県外にいても駆けつけなくてはならないのかで、随分気の持ちようが違います。中には電話にでれないと罵倒されるようなひどい病院もあるので、オンコールについては特に抵抗がない先生でも、念の為確認した方がよいと思います。
ちなみに私は連日のオンコールで体調を崩した過去があり、病棟を持っているときは、オンコールなしの病院に勤めていました。それでも2年に1回くらい、自分でないと判断が難しい時があり、その際は対応していました。その病院は当直対応が前提だったため、コールバックして指示を出せば問題ない病院だったので、気は楽でした。そうでないと続けられなかったと思います。
うまくいかなくてもむしろラッキー
もしインタビューをして、この医療機関はないかな、と思うことがあっても全く気にする必要はありません。入職前に知るより全然マシです。転職する前にわかってラッキーだったくらいに思って下さい。もちろんその医療機関と対応してくれた先生には、時間を割いてもらったことに対して丁重にお礼を言って、仁義を通しておけば問題なしです。医療業界は狭いので、今後どこかで関わることもあるかもしれませんので、筋は通しておいたほうが絶対に良いです。
実際に足を運んで話をすると得られるものが多い。
インタビューをすることで良いのは、もしその医療機関での就職はなかったとしても、今後の転職の糧になることです。実際に働いている先生と話をすると、思った以上に得られるものが多いです。実際私も面談に行った医療機関には就職しなかったものの、色々とアドバイスを頂き、その後の転職に役に立ったことがあります。
また実際に現場に足を運ぶと、求人をみる目がどんどん養われてきます。求人情報から得られる印象を、実際に足を運んで答え合わせするような感覚です。最初は結構ギャップがありますが、慣れてくると求人情報でおおよその判断がつくようになります。こうなると掘り出しものの求人などにも目が利くようになります。