
先生方の中には、転職活動を始めてみて、すぐに良いご縁に恵まれる方もおられると思います。
一方で、なかなか思うように進まず、先が見えない状況に不安や焦りを感じていらっしゃる先生も、少なくないのではないでしょうか。
今回は、そういった先生方に向けて、**転職活動には“自分の力ではどうにもならない側面もある”**という点について、私自身の実感も交えながらお話ししたいと思います。
求人が出なければ、どれだけ努力しても始まらない
まず最初に申し上げたいのは、求人情報そのものが出てこなければ、転職活動はどうしても停滞してしまうという現実です。
もちろん、転職サイトを複数活用する、エージェントと頻繁に連絡を取る、情報収集のアンテナを広く張る——そういった行動は非常に大切です。
ただ、それでも希望に合う求人が「今の時期」に出てこないということは、どうしても起こり得ます。
この「時期」というのが、非常に重要な要素であり、しかも私たちの力ではどうにもできない部分でもあります。
引っ越しとの共通点――タイミングがすべて、でも選択肢が限られる
実はこの感覚、私は最近「引っ越し」のときにも強く感じました。
引っ越しもまた、契約の更新日などの期限が定まっている一方で、自分の条件に合う物件がそのタイミングで出てくるとは限りません。
・早めに良さそうな物件が見つかっても、今すぐは契約できない
・条件が合わず、なかなか決めきれない
・ようやく出てきたと思ったら、すぐ埋まってしまう
…こういったことが普通に起こるのです。
そして転職もまた、非常に似たような「タイミング」と「運」に左右される部分があるのだと、改めて感じました。
転職の場合、「時期をずらす」選択肢が取れることも
ただし、引っ越しと転職の大きな違いがあります。
それは、転職は“時期を少しずらす”ことが可能であるという点です。
たとえば、3月末で退職が決まっている場合、多くの先生が「4月からの就業先を見つけなければ」と考えられると思います。
しかし、どうしても希望に沿う求人が出てこない場合は、思い切って2〜3ヶ月後の7月入職を目指すという選択肢をとることもできます。
非常勤やアルバイトで、つなぐという手段
先生方はすでにご存じの通り、医師免許があれば、一定の収入を得る手段は多くあります。
・健診バイト
・外来の非常勤
・当直業務 など
これらを組み合わせることで、常勤にこだわらずとも生活を支えることが十分に可能ですし、むしろ収入面では常勤よりも良くなるケースも見受けられます。
ですから、無理に「いま決まっている求人の中から選ばなければ」と考えるよりも、少し時間をかけて本当に合う職場を見つける方が、長い目で見て有益であることは多いと感じています。
ブランクを過度に恐れる必要はありません
先生方の中には、「2〜3ヶ月、常勤の空白ができてしまうと履歴書に傷がつくのではないか」とご心配される方もおられるかもしれません。
しかしながら、実際のところ、短期間の空白期間はほとんど問題視されないのが実情です。
「家族の事情があって」
「少し時間を取って整理したかった」
「準備期間に充てていた」
…と、何かしら理由をお話しすれば、それ以上深く問われることは、実はあまりありません。
本当は行きたくない職場に行くくらいなら、少し待った方が良い
これは個人的な経験や周囲の先生方のお話から強く思うことですが、焦って「本当は行きたくない場所」に入職することほど、後で大きな後悔を生むものはありません。
職場の雰囲気、人間関係、勤務体系…事前に分からないことが多いからこそ、「あれ?やっぱり違った」という違和感が出たときに、もう辞めにくい状況になっている。そういうことが起こってしまうのです。
転職活動には“期限”も必要です
一方で、「ずっと探し続けてしまう」という落とし穴もあります。
ですので、あらかじめ3ヶ月や半年など、自分なりの期限を決めておくことも大切です。
その中で、希望の80%程度叶う職場が見つかれば、残り20%は工夫で補う。たとえば、
・収入を増やしたい場合
→週4日常勤と非常勤を組み合わせる。(参考記事→ハイブリッド勤務の考察(週4常勤+週1非常勤) ハイブリッド勤務)
→有給休暇を利用して、スポットバイトを入れる
・通勤時間が合わない
→思い切って引っ越しをしてしまう!
…といった調整も一つの手だと思います。
先生ご自身の「健康」が最も大切です
このサイトには、心身の不調をきっかけに転職を考える先生方も多く訪れてくださいます。
・うつ状態になってしまった
・パニック発作が出るようになった
・もう朝がつらくて仕方ない
・仕事に行けなくなってしまった
…そういったお話を、実際にたくさんお聞きしてきました。
「ここを辞めたら、もう次はない」
「転職したばかりだから我慢しないと」
そのお気持ちは痛いほどわかります。ただ、それでも申し上げたいのは、心を壊す前に、どうか逃げていただきたいということです。
医師免許と健康があれば、必ず道はあります
少し矛盾するように聞こえるかもしれませんが、たとえ再転職になってしまったとしても、先生の健康が保たれている限り、道は必ず開けます。
履歴書に多少の傷がついたとしても、それで人生が終わるわけではありません。
ご自身が納得のいく環境で、無理なく長く働くことができることこそが、患者さんにとっても、社会にとっても大きな価値であると、私は信じています。
最後に
このサイトでは、これまでのご経験が豊富な先生だけでなく、初めて転職を考える若手の先生方や、体調面に不安を抱えながら新たな職場を探しておられる方々にも、何かしらヒントや安心を提供できればという思いで、発信を続けています。
もし今、転職活動がうまくいかずに不安を感じておられる先生がいらっしゃいましたら、**「求人が出ていないだけで、自分が悪いわけではない」**ということを、どうか忘れないでいただけたらと思います。
そして、ご自身の健康を最優先にしていただけたら——それが、私の一番お伝えしたいメッセージです。