
医師求人サイトで先生が希望する、地域、診療科、条件で検索すると、先生好みの求人一覧が表示されます。同じような条件でも、求人によって、給与や待遇、福利厚生などはまちまちです。また施設区分や、残業、交通費など細かいところですが、意外に重要な項目もあります。今回は求人情報の読み方について解説していきます。
求人情報を読むポイント。
給与、診療科、診療科など基本的なことに加えて、いくつかチェックするポイントがありますので、項目別に解説していきます。
施設区分のチェック
施設区分はクリニックか、病院かによって大きく対応が変わります。クリニックの場合は特に問題になることはないですが、病院の場合は、外来業務の契約でも、病院の形態によっては、救急対応もお願いされることがあります。本来であれば、雇用契約書に記載が無いことは労働者である以上、行うことはできないのですが、医師の業務の特殊性ゆえに、通常の社会感覚が麻痺してしまっている職場もあるので注意です。
また病院の場合は、クリニックに比べると外来受付時間が曖昧なところが多いです。少々時間を過ぎても通常の受付をされ、最終の患者さんが終了するまでの勤務となります。院内での検査をした場合など、結果が出るのに時間がかかる場合は、午後の担当医に引き継ぐ体制があるかを確認したほうがよいです。基本的に先生が契約時間を超えて待機しても、残業代をしっかり支払ってくれる医療機関は多くないのが現状ですので。。。責任感の強い先生ほど、結果的に損をしてしまうようなケースも多いです。
残業代のチェック
医療業界は労働時間の管理はずさんなところが多いですが、本来は契約時間を超えて業務に従事した場合は、使用者は労働者に対して残業代を支払わなければなりません。本来は1分単位で払わなければならないのですが、30分を超えて残業が発生した場合のみ支払うようにしている場合や、うやむやにしてしまっているケースも多いです。また一時間まで、みなし残業とするとなっている場合もあります。このあたりは雇用契約の段階でもしっかり詰める必要があります。
祝日勤務、第5週目の勤務は?
非常勤の勤務では、祝日も勤務があるかどうかもポイントです。保険診療の外来などでは、祝日は休みのところが多いですが、自由診療や訪問診療の場合は、特に関係なく仕事があることも多いです。これは先生によって好みが分かれると思いますので、先生の希望に合致しているかよく確認してください。お子さんがいる場合など、祝日は休みたい場合は、祝日勤務がはじめから無いところを選ぶほうがよいですし、逆に休みがあるとその月の収入が減るので、仕事がある方がよい先生は、祝日勤務がある職場を選びましょう。
また訪問診療のお仕事では、月によって第5週がある場合は、訪問のスケジュールの関係で、休みになるケースもあるので注意して下さい。
有給が実際とれるかどうか。
常勤、非常勤にかかわらず、労働者である以上、有給休暇は取得が可能です。しかし特に医師は有給休暇の取得が進んでいないのが現状です。常勤の場合、一定以上の取得が義務化されましたが、実際はなかなか難しいようです。有給を取得しているはずの日に、病棟で仕事をしている先生を見かけたこともあります。。。ひどい場合は事務方の手続きで、知らない内に勝手に取得したことにされているようなケースもあるようです。
外来では発熱外来を含むかどうか?
特に内科の外来の場合ですが、コロナなど発熱患者の業務もあるかどうかは重要です。発熱外来の仕事はやはり負担が大きいです。家に小さなお子さんや、高齢の家族がいる場合などは、特に注意が必要になります。
「女性医師活躍中」「女性医師オススメ」の場合は男性医師は不可のことも
「女性医師活躍中」のような文言が求人にある場合、男性医師の応募は事実上不可能であることが多いです。美容皮膚科や婦人科でたまに見かけます。求人広告の決まりで、募集の段階で性別を指定して募集することが、現在厳しくなってきているため、このように濁す形になっています。
「〇〇歳台までの先生活躍中」という場合、事実上の年齢制限の場合が多い。
これも上の例と似ていますが、このような文言がある場合も、事実上この年代より上の先生が応募された場合も、採用されない可能性が高いです。特に美容領域に多いですが、訪問診療クリニックで、比較的若い先生が開業されて指揮をとっているケースでもたまにあります。あまりに自分よりも年上の先生が部下という形になると、少々やりにくさが生じるためでしょう。
書いてないことは、相談となる。
求人票にはっきり明示していないことについては、その求人に問い合わせると教えてくれますし、微妙なことについては相談になります。何も準備していかないと、基本的に先方の都合のよい条件になりますので、事前に求人票を精読して、疑問点は最初にあぶり出しておくことがオススメです。転職は本当にファーストコンタクトが重要です。
交通費は?
交通費については、一律支給、実費支給かでも変わってきます。医療機関によっては、3000円一律支給のようにしている場合もあります。このケースでは、極端な話、徒歩圏内でも支給されます。交通費は給与と違い非課税なので、まるまる先生の懐に入ります。頻度としては実費支給の場合が多いですが、中には給与とマルメになっている求人もあります。しかしこの場合でも、交渉すれば実費支給にしてもらえる可能性が高いです。一回の金額では数千円単位でも、長期に勤務する場合は、結構な額になります。交通費はもっとも交渉しやすい条件のひとつなので、支給がないとされている場合も諦めずに交渉をしてみる価値は十分にあります。
訪問診療の求人のポイント
訪問診療の求人では以下の注意点がありますので、こちらでまとめて解説していきます。
同行者はだれか?
訪問診療では、同行者が看護師さんか、事務さんか、ドライバーのみかなど、同行してくれる人によって業務負担が全く異なります。手厚いところでは、先生、看護師さん、事務さんの3人体制で、先生は診療だけに集中できるケースもありますが、実は看護師さんは同行せず、医療者は先生のみというところは意外なほどに多いです。その場合、採血、点滴、処置を含め先生がすべてを行う必要があります。場合によってはバイタル測定も先生が行うところもあります。訪問診療は診療環境によって、仕事のしやすさが全く異なりますので、特に注意が必要です
※多くはありませんが、先生一人で車の運転もして、患者さんの家にいかなくてはならない求人もありますので、本当に注意が必要です。
未経験可か?相談できる人はいるか?
訪問診療は需要が高まっている一方で医師の供給が追いついていないところもあり、訪問診療未経験可としている求人も多いです。外来や病棟で普通に診療できるスキルがあれば、基本的に問題ないです。もし訪問診療に初めてチャレンジしようとされる先生は、未経験可の求人のほうが敷居が低いでしょう。訪問診療に特化したクリニックでは、院長先生がサポートしてくれたり、相談に乗ってくれるところもあるので、このようなクリニックでは経験を積むのに最適です。
大手か?
訪問診療を行っているクリニックでは、個人開設の小規模のケースもありますが、数十院の大手医療法人の場合もあります。大手の方が、事務的なことや福利厚生などはしっかりしている印象があります。個人の場合は院長先生の人柄が見えやすいメリットもあります。こちらについては先生の好みでよろしいかと思います。
条件の交渉について
当直、オンコールは曖昧にしない方がいい。
もし先生が当直やオンコールを避けたい場合は、最初から絶対にやらないことを了承した上で入職する方がよいです。もちろん雇用契約書に明記してもらいます。最初のところは免除で、、、というように曖昧な形にはしないほうが絶対によいです。後になって頼まれると、いちいち断るのが結構なストレスになります。ただ医療機関側としては、当直はしない医師よりも、やってくれる医師を取りたいという本音はありますので、ここについてはうやむやにして、入職させてしまおうとするケースもありますので、十分注意してください。
盲点は、日直と土曜午後の残り番
ところで当直を避けたいケースでは、単純に夜間の勤務を避けたいだけのケースと、他の医師が不在の状況で、一人で病棟対応や救急対応することに抵抗があるケースに分けられると思います。もし後者の場合は、休日の日直や、土曜午後の残り番などの業務も避ける必要があります。実はこれは盲点で、当直免除で入ったにもかかわらず、入職後に日曜や祝日の日直を頼まれたりで、思っていた環境と違う!となる先生がいらっしゃいます。求人票にも、日直や残り番のことまで、言及していることはまずありません。もし気になる求人に問い合わせる際は、最初に確認するのが必要な項目になります。
雇用契約書をしっかり交わす
求人情報の読み方からはやや外れますが、雇用契約について軽く触れてみます。雇用契約を入職時にしっかりと交わすことは、入職後の先生を守るうえでも非常に重要です。行う業務、行わない業務についてはしっかりと明示してもらい、オンコール、当直についてもしっかりと明記してもらいましょう。できれば面接などをする前の段階で書類のたたき台を作ってもらえればベストですが、なかなか実際はそうはいかないと思います。しかしある程度話が進んだ段階でも、書面で条件をしっかり明示してもらえない場合は、その医療機関の就職を一度考えた方がよいです。条件を曖昧にしたまま転職して、その後、最初は守備範囲でなかった業務まで頼まれるようになると、結果的に先生の時間や労力を無駄にすることになりえます。雇用契約については、また別記事でも取り上げてみようと思います。