外来業務はクリニックか病院か?

非常勤などで多い外来診療のお仕事ですが、クリニックでの外来診療と、病院での外来診療のお仕事に大きく分かれます。それぞれの特徴について考えていきます。

クリニックの特徴

比較的軽症の患者さんが多い。

クリニックに来院する患者さんは、ほとんどは軽症の方です。慢性疾患も多く、安定していて、do処方で済んでしまう方も多いです。軽症な患者さんをテンポ良く診察することが得意な先生はクリニック向きと言えます。

搬送が必要なときはやや面倒

ごくまれに来る重症な患者さんや、高齢で入院が必要な患者さんが発生した際は結構面倒です。院長先生と2診体制だったり、連携病院があれば特に問題なく済むケースが多いですが、都会のビル診だと、そのようなことがめったに起きない分、やや手間取ることもあります。しかし基本的には他のスタッフもいますので、先生一人で抱えることはありません。非常勤の先生に全ての責任を任せるクリニックはまずありえないでしょう。

カルテ記載がやや面倒。

いままで病院勤務だった先生はあまり気にしたことがないかもしれないですが、特定疾患の管理料を請求するためには、しっかりとしたカルテ記載が必要になります。シュライバーさんがいる場合は、バックアップしてくれますが、いない場合は先生もある程度カルテのポイントを把握して、患者説明とカルテ記載が求められます。しかしこちらも先生に任せっきりにすることは考えにくく、最初の説明でポイントを抑えて説明してくれると思います。特に難しいことはありません。食事、運動療法の指導や、内服の注意点を説明して、そのポイントをカルテに記載するだけです。

患者数が多めのことが多い。

クリニックで非常勤の医師を募集している場合、そもそも患者さんの数が多くて、体制強化のために募集していることが多いです。そのため診察する患者数は、病院に比べて多めです。経営的にもシビアなことが多く、テンポのよい診察を求められます。あまりに一人に長い時間をかけていると、声がかかることもありますので、ある程度その医療機関が求める医師像を演じて勤務することも必要です。

病院の特徴

規模にもよるが、入院が必要な患者さんなど、ある程度重い人も来る

病院の外来では、他のクリニックからの紹介や、精密検査を前提で来院する場合など、ある程度重い症例も来る可能性があります。もちろん病院の規模や、体制にもよりますが。あまり重症な患者さんを診ることを好まれない先生は、クリニックの外来のほうがオススメです。

CTやMRI、即日結果がわかる血液検査など、検査体制は充実している

病院ではクリニックよりも検査体制は良いので、色々な検査を駆使して診療することに慣れている先生は、病院の方が良いかもしれません。

しかし逆に捉えると必要な人には検査をしないといけないケースもあります。クリニックでは設備がないからという理由で、検査しないで済むものも、病院ではそうもいかないです。CTやMRIなど、指示を出した場合は、一次判読は先生がしなければなりません。あまり得意でない分野がある場合は、結構悩ましいです。また2次読影の体制がしっかり整っているところはまだよいですが、いまだに無いところもあります。先生が見落としてしまうと、誰の目にも触れなくなってしまうケースが、実は結構あります。なかなか怖いです。

病院での外来勤務を検討される場合は、2次読影の体制、読影依頼の可否、他の医師へのコンサルトができるかをしっかり確認した方がよいでしょう。これは結構見落としがちなポイントです。入職後に余計なストレスを抱えないためにも、事前に確認が必要です。

内科でも小児をみなければならないケースもある、

意外かもしれませんが、内科外来でも小児の診察を頼まれるケースがままあります。小児科がない病院で小児患者が来た場合、明らかな外傷などでなければ、ほとんどのケースで内科に回されます。小児に抵抗がない先生は問題ないですが、小児科があるかどうかは、念の為確認したほうが良いです。
実は私は以前小児科がある病院で外来をしていたことがありますが、たまたま私の曜日だけ、小児科の先生が不在で、内科外来を担当していた私に回ってくるケースもありました。こんなこともあるのかと思ったものです。

救急対応を頼まれることもある

外来が比較的空いていて、逆に救急車対応が多い日などは、救急の応援を頼まれるケースがあります。これは本来は雇用契約になければ、先生がやる必要のない業務ですが、実際の現場ではなかなか断りにくいでしょう。多いケースではありませんが、心配な先生は入職前にこのようなことがないか、確認するようにして下さい。

他科連携

病院では他の診療科と連携して診療することが普通ですが、この他科連携がスムーズな病院と、そうでない病院があります。明らかに他科の症例なのに、最初にタッチした診療科に押し付けるような、ひどい体制のところもあります。結構闇深い問題です。

入院となった場合の割り振りが面倒

外来担当の先生が、本来はここまで気にする必要はありませんが、入院になった場合、常勤の医師で症例を押し付け合いのようになるケースがあります。この闘争に先生が巻き込まれると厄介です。結構なストレスになります。ここはドライに、あとは常勤の先生におまかせするようなスタンスで、深入りしない方がいいです。もしその医療機関で対応が難しい症例などは、先生判断で送ってしまう方が早いケースもあります。本当に悩ましいです。特に終業直前の入院割り振りは、紛糾したものです。結局若手に押し付けられるようなことが多く、苦い思い出です。

一般内科は要注意 守備範囲が想像以上に広いケースもある

細分化されていない一般内科や、総合診療科外来の場合、かなり広い守備範囲で診療を求められるケースもあります。具体的には脳神経外科があるにもかかわらず、脳梗塞が内科に回ってきたり、泌尿器科があるにもかかわらず、尿路感染症は内科がみることになっていたりと、ローカルルールでめちゃくちゃとしか言いようが無い病院も実際にありました。一体どういう経緯でそうなったのかと思いますが、困ったものです。内部の医者はそれで納得していればいいですが、外から来た先生は驚きます。

総括すると、無難なのはクリニックかと。

このように考えると、外来診療の仕事を検討される先生は、一般的にはクリニックの外来のほうが無難かもしれません。病院は面倒事を抱えるリスクがややあります。私の経験ですが、特に内科の先生は注意が必要だと思います。事前にどのような病院か、上記のリスクがないかを確認していただく必要があります。

ただ一般的に病院の方が経営的には安定しています。病院が潰れるリスクは、クリニックよりも低いです。長くじっくり落ち着いて勤める予定の先生には病院もよいと思います。上記は注意喚起も含めてなので、リスクを中心に説明させて頂きましたが、実際は良い病院も多くあります。逆に結構ブラックなクリニックもあるのも事実です。(一日100人近く診なければならないクリニックなど。。。)個別の求人をよくご検討頂き、先生にとって良い求人をチョイスをしていただければ幸いです。

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