10年で逃げ切り計画編

シリーズ いま転職するならどうするか?

今回のシリーズでは、もしも管理人が今からある状況、条件で転職をするなら、どのような戦略を立てて、どのような就職先を選ぶか?についてケース別に検討してきます。先生方の状況や条件に、ピッタリは当てはまらないかもしれませんが、近い状況のものであれば、一つの参考にはしていただけるかと思います。転職の戦略の一例として参考にして頂ければ幸いです。

今回は「10年で逃げ切り計画」というテーマで検討していきます。

状況、条件の設定

  • 想定医師 30代男性 未婚 診療科は問わず。
  • 早めに資産を築いて逃げ切りたい。
  • 10年で1億円を貯めて、その後は資産運用のお金で生活費を賄い、週一でバイトをしてそのお金は旅行などに充てたい。
  • 結婚は想定しない。
  • 事務的なことを自分で行うのは苦痛ではない。
  • 生活は質素。日常的に贅沢はしない。

戦略

医療脱毛クリニックの非常勤掛け持ち+マイクロ法人設立

今回の10年逃げ切り計画では、医療脱毛クリニックを非常勤で2-3院掛け持ち、週5日は全日勤務とし、週休は2日とします。また社会保険料を節約するために、プライベートカンパニーを設立し、マイクロ法人戦略を取ります。

医療脱毛クリニックの非常勤掛け持ち

医療脱毛は非常にクリニックが増えており、自由診療なので単価も高く、しかも勤務の負荷が少ないため、人気の仕事です。この戦略では、2-3院を非常勤勤務で掛け持ち、これを収入の軸にします。敢えて常勤にしないことは後ほど解説していきます。

医療脱毛クリニックでの勤務は拘束時間がやや長く、夜遅くになることがネックですが、それをクリアできれば、非常に割のよいお仕事です。日給は1日で、8-9万円を得ることができます。また日中は、比較的自由に過ごせるので、この空き時間を利用して、マイクロ法人の仕事や、事務仕事を片付けてしまいます。とはいえ空き時間の方が多く、本を読んだり、映画をみたり、好きなことをする時間も十分確保できると思います。

日給が8万円の仕事の場合は、週5日勤務とすると、年間で約260日勤務で年収は2080万円です。日給が9万円の場合は、2340万円となり、かなり割の良い仕事となります。もちろんここから税金がガッツリと引かれてしまいますが、、、それでも十分な貯金をすることができます。

生活を質素にして、節約をすれば、年間1000万円を資産運用に回すことも可能です。この場合は10年かけずに目標を達成できるでしょう。

マイクロ法人設立

今回の戦略では、ある程度資産ができた時点で、資産の一部を法人に移動し、比較的安定している高配当株ETF(VYMなど)で収益を得る方法が考えられます。

また診療とはまったく関係ない副業にチャレンジしてみるのが良いと思います。ブログ、ユーチューブ、SNS、コンサルティングなど、診療意外の収益であれば何でもOKです。不動産などは、詳しい先生は法人で管理することも視野に入るかと思いますが、一定リスクがあるのと、私が詳しくないのでここでは割愛します。

マイクロ法人に関する情報はこちらは別の記事でも触れていますので、こちらも参考にしてください。(参考記事→非常勤の最適解 応用編

なぜ敢えて非常勤を掛け持つか?

非常勤を掛け持つのではなく、常勤にした方が良いのでは?と思われる先生もいらっしゃるかと思います。しかしここでは敢えて、非常勤を掛け持つ選択をしています。それには以下の理由があります。

管理医師リスク

医療脱毛クリニックでの常勤は、ほとんどの場合、分院の院長を任されることになり、管理医師となる必要があります。もちろん経営やその他の雑務は先生が直接行うことはありませんが、それでも管理医師の場合は、勤務医とは立場が全く異なり、先生の責任は非常に重くなります。特に名目上、先生の個人開設の形で院長になる場合などは、リスクが高いです。経営やその他の事が上手く回っている間は問題ありませんが、下手をすると資産形成どころか、借金を背負うリスクがあります。もちろん中には、その辺のリスクをクリアした優良な求人もありますが、よくよく注意が必要なのは事実です。経営や商売のプロではない医師は、私を含めて、優良な求人かどうかを見極めるのは極めて困難です。そのため立場的にはやや不安定ですが、非常勤の方が総合的に考えてリスクが低いと判断します。

リスクヘッジ

いくつかのクリニックを掛け持つことで、たとえ一つのクリニックが経営的に上手く行かなくなった時も、他の勤務で収入を補うことができます。もしひとつがダメになっても他のクリニックで収入を得ながら、新たな勤務先を探せばいよいので、精神的にはかなり楽です。もし一つのクリニックに依存していると、一気にすべての仕事を失うことになるので、かなりつらいことになります。

いくつか掛け持つときのコツは、全く関係ない法人に勤務を分散することです。名目上別のクリニックでも、同じグループ法人では、リスク分散にはなりません。正直慣れている勤務先の方が、やりやすいのは事実ですが、リスクヘッジの観点からは、いくつかの独立した収入源をもっている方がよいです。

医療機関が経営破綻するというのは、競争の激しい自由診療の世界では、いまや割と現実的な話です。こちらもそれなりのリスク管理をする重要性は、今後増してくると考えられます。

社会保険料の節約

常勤勤務に比べて、非常勤勤務でなおかつマイクロ法人を設立すると社会保険料を節約することができます。もちろん社会保険料を支払った分は、確定申告の際に所得控除を受けられるので、見た目の金額よりも節税効果は少ないかもしれませんが、事務的な仕事が嫌いでない先生であれば、チャレンジする価値はあるでしょう。

マイクロ法人の仕事をセミFIREに役立てる

マイクロ法人を作り、自己資産の一部を法人に移動させて、高配当株などで安定的に収益を得る方法もありますが、法人を立ち上げることは、診療とは関係ない副業にチャレンジするチャンスです。特に不労所得型の副業はオススメです。一度確立してしまえば、先生が目的を達成して、仕事をセミリタイアしたあとも、収入源の一つとすることができます。先生の資産規模からみれば僅かかもしれませんが、少しでも診療以外のビジネス、収益があると、引退後も退屈しないと思います。

ざっくりと戦略のまとめ

ここまでのことをざっくりとまとめると、戦略としては、

  • 1 自由診療でガッツリ給与所得を得る。
  • 2 生活費を節約して、給与所得から得たお金をなるべく資産運用にまわす。
  • 3 マイクロ法人も活用して、社会保険料を節約しつつ、副業も行う。
  • 4 資産運用の収益だけで生活費を賄えるようなレベルを目指す。

という流れになります。

資産運用はどうするか?

資産運用についてですが、ここで扱うにはかなり大きなテーマなので、簡単にだけ触れることにします。もし私が今回のケースで投資するとすれば、長期的にみれば勝てる可能性が高い、全世界株または米国株に連動した、低コストのインデックスファンドまたはETFを選択すると思います。せっかく高給を得ても、よくわからない投資に手を出して、お金を失ってしまっては目も当てられませんので。。。オススメはETFのVT、VTI、VOOあたりが良いかと思います。もちろんNISAの枠もフル活用します。

マイクロ法人で高配当株ETFで資産運用を行う場合は、VYM、HDV、SPYDなどが候補になると思います。私が行う場合もこれらから選択します。資産運用の世界は奥が深いので、ここでは軽く扱うにとどめますが、もっとも大事なのは、大切なお金を詐欺まがいのファンドや投資話で失わないことです。自信がなければ個別株も避けたほうが無難です。私は自信がないので、株主優待目的を除いて個別株はやっていません。広範囲に分散投資され、長期的にみれば勝てる可能性が高いETF、投資信託を選んで、買うほうがよいと思います。(投資信託でも詐欺まがいの手数料の商品も多いので注意が必要です。オススメはコストが低い、eMAXIS Slimのシリーズです。また間違っても銀行の窓口では買わずに、ネット証券を利用しましょう。)

【ちょっと休憩】非常勤でも有給はもらえる

非常勤だと有給がとれないとお考えの先生もいまだに多いのではないでしょうか?非常勤でも週一でも、有給は取得することが可能です。先生から申し出があった場合、雇う側はこれを拒否することはできません。かならず雇用契約書にも有給のことは小さくですが、明記されているはずです。万が一記載がなくても、法律が優先されるので、有給の請求は可能です。遠慮してお使いにならない先生も多いのですが、これは結構もったいないので、是非使うようにしてください。
有給の取得可能日数や期限などは、こちらの記事も参考にしてください。(参考記事→有給休暇は非常勤でも取れる!
私も実際に非常勤で勤務していますが、有給休暇は使わせてもらっています。有給休暇は労働者の権利です。是非使わせてもらいましょう。

まとめ

今回は、10年かけて資産を築いて、セミFIREを目指すプランでした。医師免許が今の価値である内に、資産に変えてしまい、資産形成後はゆっくり暮らすのを目標にしている先生を想定してみました。今回は収入の軸を医療脱毛クリニックに振り切りましたが、もちろん保険診療を維持したい先生は、週1で保険診療を入れるなどのアレンジは可能です。訪問診療の非常勤なども相性がよいです。もし状況や目標が似ている先生が、参考にしてくれれば幸いです。

追記:しかしリスクも、、

この手法は、脱毛クリニックのお仕事が当面なくならないという仮定のもとで書いています。もし脱毛業界、自由診療の業界に大きな動きがあった場合は、この手法はもはや使えなくなります。正直先のことは誰にもわかりませんが、リスクを減らすためには、上記のように保険診療の仕事も併用しておく方が無難であると思います。もしたとえば、この方法が途中までしか使えなくても、保険診療の仕事を持っていれば、保険診療の仕事を掛け持ち非常勤で継続することで走り続け、なんとか逃げ切ることは可能かもしれません。常に色々なリスクは想定して、対策を立てておく必要があります。