
FIREという言葉が、世間的にも認知されるようになってきました。FIREとは「Financial Independence, Retire Early」のことで、「経済的自立」と「早期リタイア」を意味する言葉です。先生のなかにも日々の激務に疲れ果てて、可能なら早く引退したいと考える先生もいらっしゃると思います。今回は医師とFIREというテーマで考えていきます。
医者とFIREの相性はよい。
先生がもし、独身で生活コストも低ければ、FIREは本気になれば数年で達成できます。極端な話、セミFIREでよければ、今日にでも実現可能です。家族を養っている先生や、生活コストがやや高い先生であれば、資産形成にある程度時間をかける必要はありますが、それでも他の職業に比べて圧倒的にFIREを達成しやすいです。
セミFIREは非常に現実的
医者の給与の特徴として、非常勤の給与が高く、なおかつ非常勤の仕事を得ることが容易であることが挙げられます。そしてこれが他の給与が高い仕事との決定的な違いです。年収1500万円を超える職業は医師以外にもあります。しかし週一の非常勤で日給10万円を貰える職業は他にはありません。しかも非常勤の仕事を探すことも簡単です。求人会社に登録して高額求人で検索をかけるだけです。こんなに簡単なことはありません。
完全にFIREをしようとすると少なくとも数千万円の資産が必要で、先生の場合は一般的には億単位の資産が必要だと思います。これはやはり高給の医師でも結構大変です。資産運用も併用して、お金を積み立てて、10年以上かかるのが普通であると思います。
しかしもし週2でも働くことが許容できれば、ハードルはかなり下がります。最初の数年間は頑張って数千万円の種銭を作り、あとはそれらをインデックスファンドに入れて運用しながら、非常勤で得た給与で生活をすればOKです。可能なら余った生活費を投資に入れれば、さらに資産形成の速度が増します。ゆるめに働きながら、資産を拡大できます。資産額に応じて、徐々に非常勤もフェードアウトしていくことが可能です。
FIRE後も非常勤で働く選択肢がある
FIREと矛盾しますが、FIRE達成後に完全に診療を辞めることもできますが、まだ働く意欲がある先生の場合は、週1回非常勤で働くなどで、診療能力を維持することができます。また臨床を続ければ専門医の維持も現実的で、万が一、何かしらの理由で、現場に本格的に復帰する必要が生じた場合も、スムーズに対応できます。
実は多くの先生は完全に臨床から離脱することを望んでないケースが多いように思います。しかし週5で働いて、当直、オンコールも行うのはきついという先生が多いのではないでしょうか?一度金融資産を形成してしまえば、働く、働かないは自由です。少なくとも生活のために時間を使う必要はなくなります。純粋に臨床のために仕事をすることが可能です。これは精神的なゆとりが全く違います。
医師FIREのためのプラン
FIREを目指す場合は、特に最初の数年、種銭を形成するまでが一番大変です。一度資産が固まって、転がり始めるとあとは雪だるま式に増えていきます。そのため最初は、高給が得られる職場を選び、生活費もある程度削って、そのお金を金融資産に投資することが重要になります。
高給を目指す方法はこちらのサイトでもいくつか紹介していますが、安定性を求めずに、純粋に高給を目指す場合は、非常勤で単価の高い求人を併用することが最適と考えます。もちろん非常勤ならではの注意点やリスクもありますので、こちらも参考にして下さい。(参考記事→常勤か非常勤か?)
また非常勤で高給を得た場合、問題となるのが社会保険料の高さです。これはマイクロ法人を併用することで削減が可能です。しかしこれは結構面倒なので、面倒な先生は深く考えずに、普通に支払って確定申告を行えばよいと思います。法人設立まで行うのは、かなりやる気がある人向けです。
マイクロ法人スキームの併用
実はマイクロ法人を設立するのは社会保険料削減だけでなく他にもメリットがあります。今回の例では特に、1.非常勤の暇な時間を法人の仕事に当てることができること、2.法人の収入をFIRE後に収入の足しにできること、3.法人に資産運用を分散することができるメリットがあります。
1.非常勤の暇な時間を法人の仕事に当てる
特に自由診療の問診専業の場合が、暇を持て余すことになります。暇というのは想像以上に辛いです。そんなときに先生の会社があれば、その業務を空き時間に当てることができます。給与所得と事業所得の2重取りが可能であり、タイムパフォーマンス的にも最高です。また法人の仕事が乗ってくれば資産形成をさらに加速させることができます。
2.法人の収入をFIRE後に収入の足しにできる
法人である程度収入を確立できれば、先生が診療をはなれた後も、サイド収入として確保できます。たとえ月に10万円でも診療以外の収入があると、気持ちが違います。
3.法人に資産運用を分散することができる
法人をもつと個人以外にもう一つ証券口座を開設することができます。個人資産の一部を法人に移し、そこで資産運用を行うことで、節税効果が得られます。結構マニアックな方法ですが、資産形成が拡大してきた場合、個人と法人の二刀流で資産運用を行うことで、実質の手取り額を増やすことが可能です。現在は株の税率は一律20%ほどですが、こちらが増税になった場合も、法人と併用することで、上手く対応ができます。さらに先生が居住する家賃の大半を法人負担にするスキームなど、法人は面倒ですが、もっていると何かと便利です。これ以上はマニアックになりすぎるので、気になる先生はYouTubeで検索してみてください。色々方法が出てきます。
マイクロ法人についてはこちらも参考にして下さい。(参考記事→非常勤の最適解 応用編(マイクロ法人戦略))
繰り返しになりますが、マイクロ法人はかなりマニアックな手法です。たしかに節税効果もありますが、法人そのもののコストや手間もあり、先生の時給を考えれば割りに合わない可能性が高いです。マニア向けの方法として参考に留めていただければ幸いです。
もしFIREを考えている先生は、早めに動くべき
医者の給与は今後、厳しい時代が予想されます。インフレ、他業種の賃上げの一方で、医者の給与は据え置きであり、相対的に医者の懐事情が厳しくなっていく未来は避けられない状況です。もしFIREを考えている先生は、早めに動き始めることをおすすめします。いつまで医師求人が売り手市場であるかはわかりません。現実問題として医師の求人状況は年々厳しくなっている印象です。(参考記事→医師求人の見通し)最初の数年は大変ですが、早めに資産形成の種銭を作ってしまえば、後はだいぶ楽になります。もし経済的自立を目指す先生は、転職市場を覗くことから是非始めてみてください。