
医師は一般的に高給取りであり、お金を持っていると思われる職業の一つですが、先生方の実感はいかがでしょうか?医師以外のライターが書いた記事は結構ありますが、現役医師が直接書いている記事は意外に少ないです。転職を転機に、ご自身の収入や、お金の使い方を見直される先生も多いです。今回は医師とお金というテーマで、医師の視点から見た記事を書いていきます。
医師は世間で言われるほどお金も持っていない。。
世間的にはお金を持っているイメージの医師ですが、先生方の実感としてはいかがでしょうか?給与としては悪くなくても、社会保険料、各種税金、さまざまなお金がごっそり天引きされ、手元に残るお金は、労力の割に思ったほどでもないというのが、多くの先生の実感ではないでしょうか。しかも学会費、専門医維持の費用、勉強のための書籍、講習費用などは税引き後のお金から負担しなければなりません。一般的にこれらの費用も、他の業界よりも高めです。専門書も数万円のものはザラです。地価が高い都会にお住まいの先生や、一人でご家族を養っている先生は、必要なお金を差し引くと、自由に使えるお金があまり残らない先生も、案外少なくないのではないでしょうか。
それでも計画的に貯金や資産形成をできていれば、優秀なマネーリテラシーをお持ちの先生でしょうが、まわりの先生をみていると、給与の割に全然貯金がない先生も少なくないです。。ある程度のお金が安定して毎月入ってくること、医師がくいっぱぐれる心配は少ないこともあり、また稼げばいいと思って、あるだけ使ってしまうのかもしれません。
研修医の時点でも他の業種に比べれば高給をもらえます。独身であれば、学生時代とは使えるお金が飛躍的に増えて、この時期に浪費するクセが付いてしまう先生が少なくないようです。しかも研修医が終わって数年は給与は右肩上がりに増えていきます。給与に従って、生活レベルも上がっていき、仕事のストレスも相まってなんとなく使うお金も増えていくのは、、、多くの先生が経験する、この時期の医師あるあるでしょう。
実は私も結婚前までは、あればあるだけ遣ってしまうタイプでした。そのため結婚後になってお金がないことにはじめて気づきました。家族に生活費を渡して、家賃を払い、一定額の貯金を差し引いて、光熱費や通信費を払うと、自分で自由に遣えるお金がほとんど残りませんでした。愕然としたことを覚えています。このままではまずいと思って急いでお金の勉強をはじめました。そこで初めて周りの友人医師が、私と似たような状況であることを知りました。また今まではよく分からなかった、給与から差し引かれる社会保険料、税金についてもそこで初めて真剣に向き合うことになります。給与という面だけでみれば、以下のように、勤務医はサラリーマンと構造的に同じということを知りました。
給与の面でみれば、医師はエリートサラリーマンと同じ
10年目前後の医師であると、多くの先生が年収は1000万円を超え、中にはもっと貰える先生もおられるでしょう。高給であっても、医師の収入は給与所得です。これは構造的に他の職種と代わりはありません。給与が増えるにつれて天引きされる社会保険料も、税金もうなぎ登りです。同年代の一流企業に勤めるエリートサラリーマンと構造的には同じです。医師の場合は、医師になりさえすれば上記年収が得られる再現性が高いこと、資格があるので潰しが効きやすいことはありますが、構造的には同じと考えられます。
勤務医では大金持ちには構造的になれない
勤務医で、美容領域で大成功して年収3000-4000万円を得ても、半分近くは税金や社会保険料で持っていかれてしまいます。もちろん世間的にみればかなり恵まれている状況ですが。それらの年収は、先生自身のスキルや腕に対する評価であり、先生の時間が限られている以上、物理的にそれ以上の給与は一般的には難しいでしょう。保険診療では世界屈指のスキルを持っていても、日本では上記に及ばないことが多いと思います。(これはあくまで収入の観点だけの話です)。テレビや雑誌などで、プライベートジェットを保有したり、海外にいくつも別荘を持つような、途方もないお金持ちが世界にはいますが、勤務医では、どんなに努力しても、構造的にそのような領域にはたどり着けないのです。
純粋に医師としてどんなに成功したケースでも、上場企業の起業家などは我々とは文字通り桁違いの世界であり、構造的に逆立ちしても敵わないのです。
医師でお金持ちのパターン
それでは医師でお金持ちの先生はどのようなパターンが考えられるのでしょうか?主に以下のパターンで説明できると思います。
もともと家がお金持ち
医師でお金持ちの先生は、もともと実家が地主や商売で成功してる家など、医師になる前からお金持ちのパターンが多いです。普通の家庭から医師になった友人で、大金持ちの先生には私はお会いしたことがないです。お金持ちのお子さんが医師になることで、医師はお金持ちというイメージが世間にあるのかもしれません。
成功した開業医
複数の分院を展開するなど、開業で大成功された先生も、もちろんお金持ちですが、これには医師の才能のみならず、起業家としての才覚が必要です。おそらく医師にならなくても、他の分野で起業しても成功するような方でしょう。医師というより起業家として成功したという方が適切かもしれません。起業家の才能がある人が、たまたま医師だったため、医業で成功したパターンであると思います。医師業界では割合からすれば少ない部類ですが、メディアに取り上げられる先生も多いため、世間的には開業医=お金持ちのイメージがついているのかもしれません。
高給取りの医師夫婦でダブルインカムがある
医師同士のご夫婦で、結婚後も高給で働き続ける場合は、高給パワーカップルであり、やはり多くのお金も持っています。資産形成を若いときからすれば、早くに引退することも容易でしょう。もちろん出費が多くて浪費してしまうパターンもあるとは思いますが。。。
医者はある程度までは再現性が高いが、それ以上は難しい
上記のように、医師はある程度の年収までは、再現性が高く、臨床をある程度続けていれば多くの先生が年収1500万円前後には達しますが、それ以上の難易度はとたんに高くなります。特に勤務医は給与所得のため有効な節税策も限られており、一定以上は難しい状況です。また年収1500万円前後は累進課税で所得税も増えて、コストパフォーマンスが悪くなります。昨今の増税の傾向からすると、一昔前に比べてかなり手取りとしては少なくなってしまっています。
ものすごい技術を持っていても、高給取りとは限らない
お気づきの先生もいらっしゃると思いますが、技術やスキルの高さと、年収は必ずしも比例しません。最先端の保険診療を行っている医師が、自由診療で問診だけ行っている医師に給与が及ばないことはザラです。自由診療などは完全に資本主義の世界であり、需要と供給で価格が決まってくるので、なんともし難いところもありますが。転職の際はこのあたりのことも考えて置くと有利に立ち回れます。ひたすらスキルを上げることが、必ずしも市場で高い評価を受けるとは限らず、むしろ初期研修医修了直後の若い医師の方が評価される世界もあることは、知っておいて損はないと思います。このあたりは世間にも、医師間でもあまり知られていない不都合な事実です。
まとめ
転職とお金は切っても切れない関係です。転職未経験の先生は、転職を意識して初めてお金について真剣に向き合うケースも多いと思います。しかし社会人として生きていく以上お金は大切です。聖職者とされる医師がお金について語ることはタブーな風潮がありますが、これからはそうはいかないと思います。このサイトでは、医師とお金の関係についても今後も記事をアップしていく予定です。先生方の転職、生き方の参考になれば幸いです。