メンタル疾患(うつ病)と転職

医師もメンタル疾患にかかるケースはあります。医師は非常にストレスが多い仕事です。当直明けの勤務、オンコールなど連日のハードワークで体調を崩すことも珍しくありません。また人間関係の問題でつらい思いをされる先生もいます。長期間の無理がたたり、ある時うつ病を発症したり、うつ状態に陥ったりすり先生もいらっしゃいます。

今回はそのような先生が今の職場では無理だと思い、転職を考える際の内容です。

医師に限らず医療従事者はメンタル疾患が多い

先生ならご存知の方も多いかもしれませんが、医師はもちろん、医療従事者にはメンタル疾患を抱えていたり、過去に患っていた方はかなり多いです。抗うつ剤や抗不安薬を内服しながら仕事をされている方もいますし、眠剤を含めたらさらに頻度は上がります。実際私も同僚にこのような薬を出した経験も多くあります。先生も同僚に眠剤を出した経験はおありではないでしょうか?またうつ病やパニック障害、不安障害で休職した同僚や知り合いの医師も多くいます。そのためもし先生ご自身がメンタルの調子が悪くなっても、珍しいことではないのです。いざ自分がなると、まさかと思ってしまいますが。

私自身もハードワークで病んでしまい、うつ状態と診断され、抗うつ剤を処方され療養を余儀なくされたことがあります。本当にその時は目の前が真っ暗になり、何も希望を持てず、仕事をしたくても頭が回らない状態で、非常につらい思いをした経験があります。

先生にまず思い出して頂きたいのが、医師のメンタル不調は全く珍しいことではないということ、そして多く医師は適切な治療を休養を経て、現場に復帰していることです。私の同僚や友人の医師も一時期休職した期間はあったものの、その後何事もなかったように仕事に復帰し、以前と変わらない状態で働くことができています。そのため、先生も今は非常につらい状況かもしれませんが、かならず未来は開けると希望を持っていただきたいです。

メンタル異常がある場合はにまず行うこと。

先生にこのようなことを申し上げるのは大変恐縮ですが、メンタルの不調を感じたら、早めに専門医の受診をおすすめします。ギリギリまで頑張らない方がよいです。早めに介入すれば、復帰もその分早くできます。メンタルを崩す先生は真面目な方が多いので、自身の限界ギリギリまで頑張ってしまいがちです。しかしもうこれは長くは続かないと思ったらどうか早めに受診して、休みをとって下さい。

また医師にありがちですが、ご自身で診断して、薬を同僚に出してもらうようなことは止めた方がよいです。メンタルを崩しているときは、ご自身を客観視することは難しい状態で、想像以上に判断力も落ちている状態です。かならず精神科の先生の受診を仰ぎましょう。ご自身が精神科の医師でも、他の医師にかならず診てもらってください。

メンタル疾患があると転職は難しいのか?

メンタル疾患を持っていても転職した例は多くあります。前述のように医師のメンタル疾患は珍しいものでは無いためです。私も同僚や友人の医師に多くの実績を知っています。

もちろん条件としてある程度、勤務できるレベルにまで回復する必要はあります。またハードワークが求められる医療機関への転職は難しいかもしれません。しかし条件を整えれば問題なく勤務できるような先生であれば、転職は通常通り可能です。

うつ病でも転職した事例

私の友人医師の例を2例ご紹介します。

彼は初期研修医のときは内科を志していましたが、研修中にうつ病を発症しました。今後内科で続けていくことは困難と判断し、病気のことも含めて医師求人会社に相談したそうです。彼にとっては当直や時間外の勤務が負担になっていたので、そのことも含めて全て率直に相談をしたとのことです。

その結果、内科で続けていくことはやはり難しいということになり、コンタクト処方の眼科に進路を変えて、その後問題なく勤務しています。研修医のときはかなりの量の抗うつ剤を飲んでいましたが、その後薬はすべて断薬できたと連絡がありました。ご家族とも幸せに暮らしているようで何よりです。

もう一人の先生は後期研修中にハードワークからバーンアウトしてしまいました。治療、休養の後に少し余裕がある病院に移り、総合内科の後期研修を再開しました。その先生も率直に病気のことを伝えて転職し、転職当初は週3日の軽減業務からスタートし、1年ほどかけて内科の通常の常勤に復帰されました。その後は後輩医師の指導も行うなど精力的に診療をされています。その先生から言って頂いたことで印象的な言葉があります。「医者だって時には病気になることもある。精神科にかかることは全然恥ずかしいことではない。私は今はだいぶ良くなったけど、いまでも定期的に受診はしている」という言葉でした。当時は私もつらい状況にいたので、この言葉に非常に救われました。

転職の際にはメンタル疾患を繰り返さない条件が必要

転職をする際には、体調を崩してしまった原因を分析し、転職時にはそのような条件がないような転職先を探すことが重要です。例えばオンコールが負担になっていたのなら、主治医制ではなく、グループ診療制や、当直が対応してくれる病院を選ぶことや、当直が負担になっていたのなら、当直免除の求人や、クリニック外来など当直がない求人を選ぶことが重要です。このような分かりやすいものでなく、人間関係の問題では実際入職してみなければ分からないこともありますが、風通しの良い職場などの情報をエージェントから教えてもらい参考にしましょう。

メンタルが理由での休職経験があっても必ず道は開ける

メンタル疾患で現在つらい状況にある先生や、休職中の先生は、本当につらい状況あると推察します。私も同様の経験がありますので、お気持ちはよく分かるつもりです。しかし休養し、体調を回復すればかならず道は開けてきます。私自身もどうでしたし、多くの同様の先生を見てきてそのように思います。

とくにくつらい時期は治療と休養に専念しましょう。たとえ退職することになって、ブランクが出来てしまっても、道はいくらでもあります。こだわらなければ求人は多くあり、医者の仕事がなくなることは当面ないでしょう。かならず道は開けることを信じて、先生の新たな挑戦を少しでも後押しできれば幸いです。

補助解説動画