
今回は有給休暇について考えて行こうと思います。医師であっても労働者である以上、他の職種と同様に有給休暇を取得することが可能です。そして常勤の先生だけでなく、非常勤の先生も有給休暇を取得することが可能です。週一の非常勤であっても有給休暇は発生します。
しかしながら有給休暇を取得している勤務医は多くありません。むしろ労働日以外にも病棟の回診のために出勤したり、オンコールで夜間出勤したりと、通常の休みさえ取れていない先生も少なくないと思います。
しかし有給休暇は取得しないともったいないです。今回はお金や時間に有給休暇を置き換えて考えていきます。
有給休暇付与日数のおさらい
有給休暇は常勤、非常勤問わず取得可能です。厚生労働省が作成しているリーフレットから引用すると、有給休暇の付与日数は下記のようになります。週5常勤の先生は上の表のようになり、週4以下の常勤の先生や非常勤の先生は週の労働日数によって、下の表のようになります。
有給休暇の有効期限
有給休暇には期限があります。付与されてから2年間です。2年以上経つと、使っていなかった有給休暇は時効を迎えて消滅してしまいます。例えば、2020年1月1日に週5日の常勤で入職した場合は、下記のようになります。
2020年1月1日 入職
2020年7月1日 有給休暇付与 10日(入職0.5年経過)
2021年7月1日 有給休暇付与 11日(入職1.5年経過)有給休暇を使用していなかった場合、累計21日。
2022年7月1日 有給休暇付与 12日(入職2.5年経過)有給休暇を使用していなかった場合、累計23日。(最初の有給休暇10日は時効を迎えて消滅)
このように、付与から2年経つと使っていない有給休暇も消滅してしまいます。これはもったいないので、期限内に使い切るのがオススメです。
有給休暇をお金に換算して考えると
以前も行ってみましたが、有給休暇をお金に換算して考えてみると、また違った印象になります。もちろん税金や社会保険料など、他にも考慮する要素はあるのでこの通りでは無いのかもしれませんが、イメージを持ちやすくするために、ざっくりと考えてみます。
週5日の常勤で年収を1500万円、土日祝休みで月平均の出勤を20日と仮定すると、年間240日の出勤の計算になります。これで年収を割ると、日給の概算は62500円となります。有給休暇一日あたりの価値は、ざっくりですが、62500円となり、例えば有給休暇が半年の時点で付与された場合は、62万5000円の価値を持ちます。また1年半経つと、有給休暇を使用していなかった場合、合計21日となり、およそ130万円分もの価値になります。これはかなり大きいです。1ヶ月分の労働以上の価値を持ちます。
今は有給休暇を一定以上使わなければならない法律もありますが、以前は、全く有給休暇をとらず、長く勤めている先生は、有給休暇が40日間!溜まっている先生も珍しく有りませんでした。この場合は、恐ろしいことに250万円分の有給休暇を持っていることになります。このように大きなものが、知らず知らずのうちに消滅してしまうことは、非常にもったいないと思います。
有給休暇を時間に換算して考えると
また考え方を変えて、有給休暇を時間で換算してみます。有給休暇が20日溜まっている場合は、月の平均出勤を20日とした場合、まるまる1ヶ月は休めることになります。もちろん臨床医が一気に1ヶ月まとめて休みを取ることは現実的ではないかもしれませんが、制度上はそのようになります。このように考えると、有給休暇のインパクトはかなり大きいとお考えになる先生も多いのではないでしょうか?有給休暇を取らないで我慢してしまうのは、この場合、1ヶ月分タダ働きをしてしまっているようなものです。働いてくれる医療機関側としては嬉しいですが、先生の立場から考えるともったいないと思います。
常勤の有給休暇のインパクト
週5日の常勤の先生が、同じ医療機関で6年半以上勤めた場合、1年毎に有給休暇は20日間もらえます。上記のようにほぼ1ヶ月分の労働に値する有給休暇であり、考え方を変えれば、週5日常勤で長く勤めている先生は、12ヶ月の内、1ヶ月は休んでいいですよ、ということになります。もちろん1ヶ月続けて休むのは難しいと思いますが、分散して有給休暇を取得することは可能です。この場合、夏休みなども含めれば、1ヶ月に2日ほどの休みを取得できます。これはかなりありがたいと思いますし、このようなスタイルでは長く働きやすいと思います。
もし取れない場合は、労働基準監督署へ
今時は少ないかもしれませんが、もし有給休暇を申請しても、取得ができないと言われたような場合は、労働基準監督署という公的な機関に相談すると、解決すると思います。有給休暇は基本的に全ての労働者の権利なので、取得出来ないということは考えにくいです。
しかし全ての医師が急に有給休暇をとったらどうなるのか?
私は医師サイドの立場なので、先生には有給休暇を取得することをオススメしますが、実際問題として、全ての医師が有給休暇の権利意識に急に敏感になり、労働基準法に則って付与された有給休暇を全て使うようになったら、たしかに回らない医療機関も出てくると思います。また有給休暇を取得した医師の補填のために、非常勤医師を雇うなどで、資金的に厳しくなり、経営が不安定になるところも出てくるかもしれません。
しかしこれは医師の世界に限らず、日本全体の問題であり、他の業界でも当てはまると思います。有給休暇が取りづらいような空気を作ることで、有給休暇の取得を抑制して、なんとか社会が成り立っている部分もあるのかもしれません。