有給など 雇用条件がまもられるか?

転職の際は、雇用契約について、書面でしっかりと取り交わします。本来であれば雇用契約書に従って労働を行い、その対価として給与をもらうのが通常です。しかし医師の場合、雇用契約や労働条件が守られず、ひどい場合は労働基準法も無視されるような職場もあるのが実情です。先生もそのような職場で働かれた経験があるかもしれませんし、今まさにそのような過酷な現場で働かれているかもしれません。今回は医師の雇用条件に関する記事です。

現場が雇用契約書と違う。。。

先生が入職時に取り交わした、雇用契約や、労働条件は本来は守って当然です。しかし守られない方が多いという実情です。労働時間も9時始業の契約なのに、医局会が8時30分開始になっているなど、平然と無視されることはよくあります。また残業代を申請しても、なぜか勝手に修正されてしまい、労働分の給与が出ないことも珍しくないです(これは文書改ざんであり完全にアウト)。むしろきちんと支給しているところのほうが少ないでしょう。他の業種ではあり得ないことがまかり通っています。有給休暇の概念すらないところも多く、そもそも土日も夜中も関係なく仕事をさせられて、休みが取れないような職場もあります。当直明けの半休も、いまだに無視がまかり通って、徹夜明けで手術をされる先生もいらっしゃいます。あらためて考えると医療業界は、明らかに異常な労働環境です。

私もいくつも医療機関をみたが、これは本当に医療機関による

もちろんしっかりと雇用契約、労働基準法を守っている医療機関も存在します。私が勤めていた、とある医療機関は、朝の医局会も就業時間内に行い、ほぼ定時で帰宅可能でした。土曜日に代診で出勤した場合も後日振替で休みをもらえましたし、当直明けの半休も保証されていました。有給休暇も任意の時期に使い放題でした。優良な職場であったため、給与はそこまで高くないものの、長く勤務している医師が多く、離職率が低い職場でした。家庭生活とのバランスを取りたい先生が多かったように思います。このような優良な職場も存在するのは事実です。

実際に働いている先生に聞くのが一番いい。

以前、実際に働かれている先生にインタビューをするという記事を書きましたが、今回のように入職してみないことには分からない事柄は、現場の先生に尋ねるのが一番良いです。インタビューするときは、一般的には聞きにくいようなことも含めて、遠慮なく質問してください。本当に変に遠慮しない方がいいです。聞きにくいような事柄を聞きたくて来ているのですから、核心に迫らなければ意味がありません。

聞かれる立場を経験したことがありますが、色々聞かれても、特に悪い気はしません。むしろ真剣に入職後のことを考えてくれているのだという印象を受けます。一緒に働く医師の立場でも、入職して色々教えたあとにすぐに辞められてしまうよりも、納得した上で長く勤めてもらえた方がよいわけです。(参考記事→入職前に実際に現場の医師に話をきく )

時代の流れは変わってきたが、当分難しいかも

医師の労働時間も法律で制限がかかるなど、以前よりも時代の流れ的に改善される動きはありますが、おそらくすぐには変わりません。状況を一気に変えることは、現場医師が不足している状況から、どう考えても不可能だからです。医師数は増えているものの、現場で戦力になる医師に育つにはまだまだ時間がかかると思います。少なくとも10年単位の時間が必要だと思います。

我々はそこまで待っていられません。それなら優良な医療機関に転職してしまうのが、一番手っ取り早い方法です。状況が変わるのを待っていたり、先生自身が今の医療機関で改革をするのも割に合いません。難しい現状ですが、現状を改善するのに一番現実的なのは、転職という方法になります。

非常勤でも有休とれます。

今回は主に常勤を想定して書いてきましたが、当然非常勤の先生も雇用契約が守られる権利があります。特に見落としがちなのは、有給休暇です。週1の非常勤の先生でも有給休暇を取る権利はあります。これは万が一雇用契約に記載がなくても、法律で決まっているため、どんな先生にも発生します。労働者としての権利です。(参考記事→有給休暇は非常勤でも取れる!

前提として、有給休暇は権利

有給休暇が思うように取れないと悩まれる先生もいらっしゃいます。そもそもですが、有給休暇はすべての労働者に与えられる権利です。休まれると病院がまわらない、などは医療機関側の都合であり、先生が悩むことではありません。職員が有給休暇をとる前提で想定しない時点で、その医療機関の管理体制に問題があります。

もし有給休暇を断られたり、使えない場合は、労働基準監督署に通報すると、速やかに解決すると思います。どう考えても医療機関側の法律違反であり、先生は正当な権利を主張しているだけだからです。

退職時の有給消化も基本はみとめられるべき

また退職時に残りの有給休暇を消化することも本来は認められます。有給休暇は年度初めの4月1日に付与されることが多いです。たとえば4月1日に10日間の有給休暇が付与されて、5月末に退職する場合でも、4月1日に付与された有給休暇はそれ以前の残りと併せて使用可能です。年度の途中退職でも、日割りのようになることがありません。そのため、今回のケースでは本来であれば5月の大半は有給消化することが可能です。

しかし上記のようにできるケースはほとんどないでしょう。おそらく断られます。もちろん退職を急に申し出た場合は別ですが、事前に通告していた場合は認められます。この場合も労働基準監督署へ相談すると速やかに解決します。

これは医師でなく知り合いの看護師さんの例ですが、退職時に有給消化を申し出たところ拒否されたそうです。それを労働基準監督署に通報したところ、すぐに撤回され、最後の1ヶ月はまるまる休めたそうです。医療機関としては、公的なところに通報されることを嫌がります。どう考えても非があるのは自分の側であり、勝てる見込みがないためです。また通報が相次ぐと、立ち入り調査など、さらにややこしいことになるので、すぐに折れて解決できる場合が多いようです。

内部事情

しかし内部の事情、あえて医療機関側の立場でもコメントすると、看護師さんは本当に人手がいなくて、たとえば全員がこのような知識を持って、有給休暇をとってしまうと、本当に回らないようです。師長さんはシフトを組むことで随分頭を悩ませていました。本来休みを取らせてあげたいけど、どうしても人手が足りず、お願いせざるを得ない状況だそうです。そういう心労が重なってストレスになり、現場を離れる方もいました。師長さんも労働者であり、本来はもっと上の管理部が出てこなければならない話で、ある意味被害者でしょう。現在でもなかなか解決が難しい、非常に難しい問題であると思います。

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