
転職において必要とされるコミュニケーション能力は、実は特別なものではありません。
社会人として当たり前のことができれば十分で、大きな問題になることはまずありません。
逆に言えば、医師は一般的な社会常識から少し外れて見えることもあり、その点をきちんと整えておくだけでむしろ高く評価されます。つまり、特別なスキルを磨く必要はなく、普通に接することができればそれで十分なのです。
今回はコミュニケーション能力ということについて、考えて行こうと思います。
実は大したものは必要ない
私自身、人とのコミュニケーションが得意な方ではありません。外来で患者さんと話したり、スタッフと必要なやり取りをする程度はもちろんできますが、「話し好き」や「コミュニケーションが特別に得意」というタイプではありません。それでも仕事をする上で特に問題を感じたことはありません。
むしろ問題になるのは、「話しかけづらい」「怒られそう」と思われてしまうケースです。実際、本人にそのつもりがなくても、相手からすると「きつく言われた」と受け取られてしまうことが意外と多いようです。これを避けるには、普段からワンランク柔らかく接することが大切です。丁寧に話す、強い言葉を避ける、それだけで誤解を減らせます。
「なぜそこまで気をつける必要があるのか」と思うかもしれませんが、周囲にとって先生が「怖い人」ではなく「話しかけやすい人」だと感じられるだけで、不要なトラブルはまず起きません。もちろん厳しい現場では一定の注意をせざるを得ない場面もありますが、普段から柔らかい口調を心がけることで大きな問題にはなりにくいのです。
転職活動においても、相手に見えるのは面接や短い接点に限られます。そのため、必要以上に高度なコミュニケーション能力を意識する必要はなく、丁寧さと柔らかさを意識するだけで十分だと思います。
転職の際に注意するポイント
見た目も含めたコミュニケーション
面接では話し方だけでなく、身だしなみも大切です。
服装は基本的に問題ないと思いますが、髪やひげを整える、靴をきれいにしておくといった細かい部分が意外と見られます。清潔感を意識するだけで印象は大きく変わります。
時間を守る
最も注意したいのは時間厳守です。面接に遅刻すると、それだけで大きなマイナス評価になりかねません。むしろ早めに着くくらいでちょうど良いと考えた方が安心です。
柔らかく丁寧に話す
実際に話す場面では、怖い印象を与えないことが大切です。物腰を柔らかく、丁寧かつ誠実に質問へ答えることを意識すれば、まず問題になることはありません。
医師は普通にしているだけで、評価される不思議な世界
医師の世界は、一般社会と比べてもかなり特殊です。実際には、社会人として普通の常識やコミュニケーションを意識するだけで高く評価されるという、不思議な面があります。
逆に言えば、一般社会では「問題あり」と見られるような人も少なくないのが医療現場の実情です。ただ、最近は状況も変わりつつあり、若手の先生方はすでに一般社会の常識を身につけているケースが多いと感じます。
一方で、これまで良い環境で働いてきて、転職の経験が少ない年配の先生が、いきなり転職市場に出た場合には、一般社会とのギャップに戸惑う可能性があります。そこはあらかじめ意識しておいた方が良いかもしれません。
まずは怒らない、感情的にならない
今の時代、医師にとって最も大事なのは怒らない、感情的にならないということだと思います。面接の場でそうした場面はまずないでしょうが、日常の業務では特に意識する必要があります。
かつては感情的に叱責したり、汚い言葉を使うことが当たり前だった時代もありました。しかし今では、それは完全に「アウト」とされる世界になっています。暴力はもちろん、言葉による威圧や乱暴な物言いも絶対に許されないのです。
「昔はそれが普通だったのに」「今の方がおかしい」と感じる先生もいらっしゃるかもしれません。けれども、時代が変わった以上、そこに適応していくしかないのが現実です。
さらに今後は医師の数が増え、医療機関は減っていくことが予想されます。これまでのように「腕さえあれば多少問題があっても大丈夫」という時代ではなくなりつつあります。これからの転職市場で求められるのは、技術力に加えて、コミュニケーション能力や社会人としての基本的な常識です。
これはもはや「理想論」ではなく、医師が生き残るための現実だといえるでしょう。
常識的な振る舞いが最大の武器になる
ここまでお伝えしたことは決して悲観的な話ばかりではありません。むしろ、社会人としてのごく普通の常識や振る舞いを意識するだけで、他の先生方に比べて大きく差をつけられるというのが現実です。
つまり、この情報を知っているだけで有利になります。逆に、服装・身だしなみ・時間の厳守といった「ちょっとしたこと」を軽視してしまうと、本来なら良い転職のチャンスを無駄にしてしまう可能性があるのです。
転職において、印象の良し悪しは結果に直結します。だからこそ、つまらないことでつまずかないよう、ぜひ注意していただきたいと思います。ほんの少し気をつけるだけで、先生の評価は大きく変わり、その差が転職成功につながると思います。