雇われる側のハイブリッド勤務 メリット編

以前ご紹介した「ハイブリッド勤務」という働き方について、今回は雇われる側の視点からメリットを整理してみたいと思います。週5日の常勤をそのまま続けるのではなく、あえて週4日常勤+週1日非常勤という組み合わせにすることで生まれる選択肢は、現代の医師の働き方において非常に意味があると感じています。

ハイブリッド勤務とは

ハイブリッド勤務とは、従来のように週5日間を同じ医療機関で常勤として働く形を一度見直し、常勤を週4日に抑え、残り1日を別の医療機関で非常勤として勤務するスタイルです。中には週3日でも常勤扱いをしてくれる医療機関もあり、その場合は常勤3日を軸に非常勤2日を組み合わせるといった応用形も考えられます。非常勤は裁量が大きく、週1日で軽めに働くこともできますし、体力的に余裕があれば週3〜4日組み合わせて週5日常勤以上に働くことも可能です。とはいえ、最も取り組みやすい形は「週4日常勤+週1日非常勤」ではないかと思います。

ハイブリッド勤務には実は多くのメリットがある

週5日同じ医療機関で働くという“安定型”のスタイルが一般的ですが、あえて週4日に抑えて週1日だけ別の医療機関で働くことには、想像以上に多くのメリットがあります。安定は確保しつつ、給与面でもプラスが期待できるため、多くの先生に十分提案できる働き方だと感じています。

給与面のメリット

まず代表的なのが給与面のメリットです。週5日の常勤を週4日にすると、常勤先からの給与は概ね8割程度に落ち着きます。しかし週1日の非常勤を、条件の良い医療機関で組み合わせれば、トータルでは週5日常勤よりも給与が増えるケースは多くあります。例えば平均的な医療機関で週5日常勤の場合、年収は1,500万円前後に収まることが多いのですが、週1日分の給与は年間換算で約300万円です。一方、非常勤の日給は保険診療で8万円ほど、訪問診療や自由診療であれば10万円に届くこともあります。年間50週で換算すると、8万円なら400万円、10万円なら500万円になります。単純計算ではありますが、週5日常勤より収入が増える可能性は十分あるわけです。

トータルの手取り額も増えやすい

ハイブリッド勤務の良いところは「給与額が増える」だけでなく、「手取りが増えやすい」点です。理由は社会保険料です。週1日の非常勤勤務には社会保険料がかからないため、週5日を単一の医療機関で働いて満額支払うよりも、週4日常勤+週1日非常勤に分けたほうが保険料負担が軽くなるケースが多く、結果として可処分所得が増える傾向があります。こうした制度的な相性の良さも、ハイブリッド勤務の隠れたメリットです。

社会保険の管理は常勤先が担う

さらにありがたいのは、社会保険の管理そのものは常勤先が担ってくれるため、医師側に新たな手続きが増えないという点です。給与所得が2カ所以上になるため確定申告は必要ですが、社会保険料に関する追加手続きは基本的には発生しません。常勤の安定感と、非常勤による収入アップの“いいとこ取り”ができる働き方と言えます。

気分転換としての効果

意外に大きいのが、勤務環境が変わることによる気分転換の効果です。週5日同じ職場だとどうしても環境に慣れすぎてしまいますが、週1日でも異なる医療機関で働くと、診療内容やスタッフ、働く雰囲気が変わり、仕事に良い刺激が生まれます。普段は外来中心の先生なら、週1日だけ訪問診療や自由診療を経験するだけでも新鮮で、長く働く上での“息抜き”にもなります。

リスクヘッジとしてのメリット

もう一つ重要なのは、ハイブリッド勤務がリスクヘッジになるという点です。かつては病院勤務=安泰という時代でしたが、今は医療機関の経営難が珍しくありません。常勤先が1つだけだと、その経営状態が生活に直結してしまいます。しかし週1日でも別の勤務先があれば、常勤先が経営不振に陥っても収入がゼロになることは避けられますし、その非常勤先で働きながら次の常勤先を探す余裕を確保できます。医師のキャリアは今後ますます転職が前提になっていくと思いますが、一つの医療機関に全労働力を預けるリスクは確実に高まっていると感じています。