転職事例検討 その2

掘り出し物の求人について
転職市場をみていると、時折相場よりも高額な求人や、福利厚生などの待遇が非常に良い求人にめぐりあうことがあります。今回は、優良求人を具体的に取り上げ、掘り出し求人に出会うための情報収集の方法について解説していきます。

求人例1

老健のケース

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介護老人保健施設(東海地区)
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<POINT>
■ 週4日~週5日 1,200万円
■ 土日祝休み
■ 転居費用、医師住宅手当あり
年収  :週4日~週5日 1,200万円
科目  :専門不問
仕事内容:主に福祉施設を利用している高齢者の健康管理、回診、書類作成等
勤務時間:9時30分~13時00分
応募要件:医師免許、保険医登録済
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解説1

こちらは常勤で週4−5日の勤務ですが、午前中のみというのが、最大のポイントです。通常老健での募集は一日通し勤務がほとんどで、半日の求人はかなり珍しいです。土日祝の休みに加えて、平日の午後も毎日休めるというのは、労働環境としてはかなりの優良求人で、仕事はそこそこに、家庭やご自身の時間を大事にされたい方には最適な求人でしょう。

デメリットとしては、都心から離れた地域であり、田舎の方が好きな先生には問題ないですが、都会が好きな先生には不向きでしょう。交通の便もやや不便で、都会に出るには距離の割に時間がかかります。一般的に、掘り出し物とされる求人は、都会から離れていたり、交通の便がよくないなどの、地理的なデメリットを抱えていることが多いです。元々その地域に住んでいる場合などは全く問題ないですが、移住を伴う場合は、その地域が先生の水に合うかどうかも重要なポイントになります。

注意点

注意する点についても解説していきます。求人情報はパッと見では、先生に都合の良いことや、メリットしか書いておらず、詳細は相談となっているものが多いです。今回、こちらの求人情報には、当直やオンコールについては記載されていませんでした。ゆったり勤務をアピールしている求人なので、おそらくは免除も可能と思われますが、はっきり書いていないことについては、注意が必要です。

また老健の場合は病院が併設されているか、グループ内に急性期病院があって受け入れが可能か、近隣に高次医療機関があるかなどもチェックしておくと良いです。

求人例2

急性期病院のケース

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急性期病院 最寄空港より車で70分。
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<POINT>
☆年収2,500万円
☆土日祝休み
☆赴任手当、住宅補助、帰省費用補助あり
年収  :週5日 年収2,500万円前後(※経験によって応相談)
科目  :一般内科、消化器内科
仕事内容:外来
勤務日数:週5日
勤務時間:08時45分 ~ 17時15分(休憩:60分)
休日  :土曜日、日曜日、祝日
当直  :無し
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解説2

こちらは急性期病院での募集で、年収が2500万と保険診療ではかなり高額に設定されています。この求人のポイントは、土日祝休みで、当直も免除にもかかわらず、給与が2500万円と高めであることです。また赴任手当、住宅補助に加えて、帰省費用補助も用意されています。単身赴任のように定期的に帰省することを想定されているのでしょう。帰省費用まで病院持ちで用意してくれるところはかなりレアです。また最寄りの空港へは1時間ちょっとかかりますが、空港から直行便が出ている地域であれば、利便性は高いです。仕事内容も外来のみであり、病棟を持たないため、オンコールもありません。オンオフもはっきりしており、週末に帰省や旅行もできます。

注意点

年収についてですが、経験により相談となっていますので、卒後10年目くらいまでの先生では、もう少し年収が下がる可能性があります。またもしかすると、役職がつくことが条件になるかもしれません。このケースではおそらくは大丈夫だと思われますが、法人の理事になることが条件の場合、経営にも関与したり、場合によっては経営責任が関わってくる場合もあるので、注意が必要です。
科目では一般内科・消化器内科で募集となっているので、内視鏡などの手技が出来ない場合も年収に影響する可能性はあります。

求人例3 

療養病院のケース

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療養型病院 最寄空港より車で30分。
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<POINT>
☆年収2,300万円~2,400万円
☆土日祝休み
☆赴任手当、住宅補助あり
年収  :週5日 年収2,300万円~2,400万円
科目  :一般内科
仕事内容:病棟管理、外来
勤務日数:週4.5~5日
勤務時間:08時45分 ~ 16時45分(休憩:60分)
休日  :土曜日、日曜日、祝日
当直  :月0~4回程度(希望により調整)
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解説3

こちらは療養病院での求人です。療養病院は一般的に安定している患者さんが多く、勤務は急性期に比べるとゆったりとしています。そのため収入は一般的には低めになりがちで、週5常勤でも1500万円に届かないところも多いです。しかしこちらの求人は療養病院でありながら、年収2000万円を超える高額な給与が提示されています。勤務時間も実働7時間で、17時前に仕事が終わるのは嬉しいポイントです。こちらも上記のケースと地理的な条件は似ており、やや不便な地域であるものの、空港からのアクセスはよいです。土日祝もやすみで、当直なしでも相談できるようです。

注意点

療養病棟でも病棟をもつ場合はオンコールについての確認が必要です。一般的に療養の場合は当直医対応の場合も多いですが、病院によって対応や考え方が異なるので、オンコールについては事前にしっかりとした確認が必要です。また当直も事前に確認しましょう。最初はないしでも良いと言われても、後々頼まれる可能性もあります。もし当直が負担になる場合は、当直は出来ないけれど、それでもよいかと念を押しておく必要があります。

労働条件について

ここでオンコールを含めた労働条件について解説してみます。

労働条件については、決して曖昧にしないほうがよいです。特に最初が大事です。例えばオンコールの場合、「ほとんどありません」、というように担当者から説明されることがあります。これは裏を返せば「たまにはありますよ」と受け取ることができます。もし絶対オンコールは避けたい先生は、雇用契約書に「オンコールなし」の記載を入れてもらいましょう。もちろんこれでも完全に守られるわけではありませんが、書面であるか、ないかではもし問題が起きたときに、対応が違ってきます。

一番良いのは、そこで実際に働いている先生にインタービューすることです。採用担当の方に、「もし私が思うような環境でなくて万が一、早期に退職してしまうと貴院にご迷惑をおかけしてしまうのが申し訳ないので、ミスマッチを避けるために、実際に現場で働いている先生と一対一でお話がしたい」 などと先生がおっしゃれば、まず断られることはないと思います。特に常勤で、引っ越しを伴うような、割と大きい動きをされる場合は、慎重にコトを進める方が良いです。万が一実際に働いている先生と、先生が接触することを渋る場合は「なにか訳アリの求人」の可能性が高いです。もう一度その職場が適切かどうか、再検討したほうが絶対によいです。

求人例4

非常勤のケース

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訪問診療待機業務(非常勤、都心)
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<POINT>
訪問診療の待機業務のお仕事です。訪問診療の患者様から相談があった際の臨時往診の対応をお願いします。(施設、在宅)
午前:0-2件 
午後:0-2件
給与  :日給 90,000円
科目  :一般内科、その他
仕事内容:訪問診療
勤務日数:週1
勤務時間:09時00分 ~ 18時00分(休憩:60分)
コメント:在宅診療未経験可
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解説4

最後は非常勤の掘り出し求人をご紹介します。こちらは一見、訪問診療の募集のように見えますが、よくみると、「待機業務」となっています。こちらは先生が訪問診療に行く業務ではなく、訪問診療でかかりつけの患者さんから要請があった場合に、先生が臨時往診を請け負うお仕事です。基本的に待機業務になると思われます。訪問診療を普通に行う場合でも、日給9万円ならまあ普通ですが、待機で9万円はかなりコストパフォーマンスがよいと思われます。

注意点

おそらくこのクリニックは、複数名の医師が勤務しており、訪問診療の人手は充足しているのでしょう。訪問診療の医師の負担軽減を目的として、緊急時の往診専従の医師を募集している背景が推測されます。このような募集を、比較的高給与で行うことからも経営は安定しているのでしょう。注意点としては、絶対に必要な人手とは言えないため、たとえば今後この医療機関が経営不振に陥った場合は、真っ先に切られる可能性が高いということです。これは非常勤医師の宿命ですが、医療機関がコストを削らなければならない場合、最初に着手されるのは、最もコストのかかる非常勤医師であるということです。

また訪問診療の医師が不足した場合は、先生に待機業務ではなく、訪問診療を頼まれる可能性もあります。特に問題なければよいですが、もし抵抗がある場合は、事前に確認した方がよいでしょう。

コラム・医療機関に募集される背景を聞く

普通よりも、条件がよい医療機関に応募する場合は、なぜ今回このような条件で募集をかけているのかを、尋ねてみるのがよいです。募集背景を知れば、転職失敗のリスクを軽減できます。

今回のような一般的な水準よりも待遇がよい募集の場合は、何かしらの理由がある場合が多いです。最も多いのは、医師不足の地域で、交通の便がよくない例です。こちらは先生の好みにもよりますが、特に地方での生活に抵抗がなければ問題ないでしょう。地方でも、今回紹介したように、空港から近ければ、それほど大きな不便を感じないこともあります。

注意が必要なのは、何かしらの「訳アリ、難あり」求人の場合です。何らかのトラブルで常勤の医者が急に退職したケースなどは、急募求人で募集をかけている場合があります。何かしらの問題を抱えている医療機関はたとえ待遇が良くても一般的には避けるべきです。長続きしないケースが多く、結果的に先生ご自身に負担をかけることになります。特に、管理医師の急募の場合は、下手に応募しない方がよいかもしれません。管理医師の場合、医療的な面ではなく、経営責任や管理責任も最終的に先生に関わってくる可能性があり、何かしら不安がある場合は、様子を見たほうがよいと思われます。

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