メンタル不調で転職をお考えの先生へ

医師の仕事は激務です。病院の体制にもよりますが、オンコールや当直でほとんど休みなく働いている先生も多くいらっしゃいます。そのような先生ある日体調を崩してしまっても、不思議ではありません。むしろ今まで頑張りすぎた日々は異常だったのでしょう。体調を崩したことをきっかけに転職をお考えになる先生も多いです。今回はメンタルが不安定な状況での転職に関する記事です。

管理人の経験

私も激務で体調を崩し、メンタル不調で仕事を継続できず、転職をした経験があります。初期研修医のときでした。毎日のように夜中や休日にかかわらずオンコールがあり、病院に呼び出される毎日が続きました。次第に眠れなくなり、食事も喉を通らなくなり、体重もみるみる減っていきました。とうとう業務を継続できない状態になり、上司から休職を指示され、精神科にも紹介され、自宅療養になりました。あのときは本当に目の前が真っ暗になり、初期研修の段階でつまずいてしまった自分をひどく責めた記憶があります。半年近く休養し、その間に少しずつ体力を回復させ、結果としてはオンコールが免除された別の病院へ移る事になりました。その後もしばらくは電話への恐怖がありましたが、なんとか初期研修を終えることができました。

まずは受診を

医師であっても、特にメンタルを病んだ場合は、専門医に受診が必要です。病んでいる状況での自己判断や同僚に抗うつ剤などを処方して対処しようとするのは危険です。かならず精神科への受診をおすすめします。できれば勤務先とは別の医療機関のほうが利害関係もないので良いでしょう。一人で受診が難しい際はかならず家族など近くの人を頼ってください。一人暮らしの先生で状況が許せば、実家に一時的にでもお世話になるのもよいと思います。とにかく回復するまでは、とことん休んでください。

転職は状態が安定してからでも遅くない

転職を考えるのは、体調が回復してからでもまったく遅くありません。ここで焦りは禁物です。メンタルが弱っているときは、先生が思っている以上に判断力も鈍っています。またとにかく今の職場から離れられればよいと、妥協した条件で転職して失敗してしまう可能性も高いです。まずは体調の回復を最優先にして、先のことは考えずに、休養に専念しましょう。メンタルを壊す先生は真面目な先生が多いので、休養することに抵抗があるかもしれませんが、何も考えずにとにかく休んでください。本当の話、医師免許のお持ちの先生は、体調さえ回復すれば、復職はまったく難しくありません。

退職はあせらない

休職される先生の中には病院に迷惑をかけたくないと、早めに退職の判断をしようとする先生もいらっしゃいますが、退職は焦らない方がいいです。これにはいくつか理由があります。

1つ目の理由は、社会保障のうち、使えるものは使った方がよいためです。休職中は収入は途絶してしまいますが、傷病手当金が支給され、最大1年半、給与の一部が支払われます。また休職中も社会保険料の支払いは発生するものの、健康保険、厚生年金の加入は維持できます。退職してしまうとこれらの手続きも行わなければならず、体調が悪い状況ではかなりの負担になります。使える制度や社会保障はできるだけ使った方がよいです。

2つ目の理由は休職している場合も、履歴書上は勤務している状態に出来るためです。履歴書は休職のことまでは記載せず、入職と退職の時期のみ記載します。たとえある程度の期間休んだとしても履歴書には載りません。休職中に転職活動をして転職先が決まった状態で退職すれば、履歴書にブランクを作らずにすみます。

また体調不良で休職した場合は、先生が退職の意志を伝えない限り、基本的に医療機関の方から解雇することはできません。(1年半以上など、一定の期間を同じ病名で休んだ場合は、退職となる場合もあるようですが。)もし医療機関の方から退職を促されるようなことがあっても、可能な限り、先送りにしたほうが良いです。

復職も選択肢としてあり

休職中された先生は転職にこだわる必要はなく、元の職場に復帰することももちろんできます。その場合、負担になっていた業務を免除してもらったり、軽減業務や、週5日のフルタイムではなく週4日の契約に変えるなど、相談すると応じてくれる場合も多いです。しかし人間関係や病院のシステムそのものに問題がある場合、転職が現実的となるかもしれません。

転職について職場には言う必要はない。

休職中にある程度体調が回復した段階で転職活動をする場合は、特にそのことを職場に言う必要はありません。転職活動は当然の権利です。転職先が決まって、内定が決まったあとに、退職の意志を伝えることで問題ありません。

臨床を諦める必要はない

体調不良を契機に臨床を離れる選択を検討する先生もいらっしゃいます。しかし必ずしも臨床を諦める必要はありません。医師の働き方は多様になってきています。もしオンコールが負担になる先生なら、オンコールがない求人を探せばいくらでもあります。病棟を持たずに外来だけ担当する働き方もあります。当直は外部医師に委託し常勤で当直免除の求人もあります。もし臨床を続けたいお気持ちがあれば、多様な働き方を検討して見てください。このようなケースではご自身で求人サイトで検索するよりも、求人会社のエージェントの方が情報を持っているので、条件を伝えて探してもらうのがよいと思います。

常勤での復帰にこだわる必要はない

多くの先生は転職で、常勤での復帰をイメージされているかもしれません。しかし常勤での復帰にもこだわる必要はありません。非常勤でもいくつか掛け持つと常勤と遜色ない給与が得られます。週5の復帰が難しく状況でも、週1の勤務ができる先生なら、いくらでも選択肢はあります。体調に合わせて徐々に勤務日数を増やしていくこともできますし、どこかのタイミングで常勤に復帰をすることもできます。いきなり週5常勤ではなく、体力に合わせて、少しずつ勤務を増やすというのもありです。

リハビリ勤務のような配慮をしてくれる病院もある

あまり知られていませんが、メンタル疾患で休養した医師が復帰するのを手助けしてくれる病院もあります。超急性期病院ではなく、療養病床なども併せ持った比較的ゆったりした病院に多いですが、入職の段階から事情をお話して、軽減業務や当直免除で就職することが可能な病院もあります。一時期ブランクがあるような医師を復職させた実績がある医療機関だと、対応にも慣れていて、話も通りやすいので有力なの選択肢の一つになると思います。

医師の休職は意外かもしれませんが、全く珍しいことではありません。私の周りでも、少なくない数のメンタル疾患で休職した先生を見てきました。急性期でバリバリ仕事することにある時突然疲れ果てて、折れてしまったケースの先生が多い印象でした。そのような先生にとっては比較的ゆったりの病院ではリバビリ勤務の段階でも普通に仕事をこなせてしまう場合が多いです。私が知る先生方は、一時期リハビリ勤務のような状態を挟みつつ、いずれの先生もその後問題なく臨床の仕事に復帰されています、

比較的負担が少ない医師の仕事

復職にあたって今までの仕事に復帰するには負担がある場合は、比較的負担の少ない業務から始めてみて、まずは仕事への復帰を目指すことも可能です。

代表的なものとしては、健康診断の仕事、自由診療の問診業務、献血の問診、予防接種の問診、午前中のみの外来などがあります。先生の好みのものをスポット勤務で試してみると良いと思います。 案外気に入ったお仕事が見つかるかもしれません。スポットから非常勤への移行というのもありですね。

まとめ

医師が激務や人間関係のストレスなどで体調を崩してしまうこと少なくありません。メンタルが辛いときは、まずは何も考えずに十分に休養し、専門医の治療を受けましょう。回復してきたところで少しずつ今後のことを考え始めましょう。焦りや無理は禁物です。健康さえあれば、復職や転職は、医師の場合は容易です。焦らず、少しずつ、先生にとってよい勤務先を探していきましょう。