
一般的に難易度が高い仕事や、希少価値が高い仕事ほど、高額の給与を得ることができると思います。医師の給与が世間的に見て高めであることも、医師になる難易度や時間、仕事の責任の重さなどが総合的に評価された結果であると思います。
しかしながら医師の中の世界に限ってみると、難易度の高いスキル、高い診断能力、希少価値の高い知識などを有していても、必ずしも給与に反映されているとは限りません。むしろ問診だけのアルバイトよりも、給与が低いこともザラにあります。大学病院にお勤めの先生などでは、不当といえるような給与しか支払われていないケースもあります。今回は転職するにあたり、重要な要素の一つである、医師の給与について考えていきます。
仕事の難易度と、給与は必ずしも一致しない
なんとなく医師になる前は、難しい手術や、高い診断能力を有する医師は、金銭的にも評価されるようなイメージを持っていました。おそらく世間一般的には、今でもそのようなイメージなのではないかと思います。しかし保険診療においては、医師の技量を評価する項目は基本的にありません。若手が行っても、ベテランが行っても、保険点数は同じです。大学教授が診察する場合でも、研修医が診察する場合でも初診料は同じです。救外を担当する研修医の方が時間外加算がついて高い場合もあるでしょう。保険診療の構造上、医師の腕を評価することが難しいという側面があります。そのためかなりの技量や経験がある先生でも、給与の面ではそこまで高くない評価の場合も少なくありません。
忙しくても給与が高いとは限らず、余裕があっても給与が低いとも限らない。
外来のお仕事で、非常に患者さんが多く、一日で80-100人近く診察するような忙しいクリニックもありますが、給与がそこまで高いとも限りません。また自由診療で一日数人の問診で、ほぼ待機に近いお仕事であっても、給与が高いケースもあります。一般的な感覚だと、忙しいほど給与が良さそうですが、本当に意外なことにそうでもありません。同じ給与であれば、忙しすぎるより、ほどほどか少し余裕がある方がよいと思います。
これは転職の盲点の一つであると思います。給与が低ければ暇だろうと思って応募した職場が、めちゃくちゃ忙しいこともあるので、本当に注意が必要です。求人によってはだいたい平均の患者数を記載しているところもありますし、エージェントさんを経由して質問すればまず教えてくれます。実際の現場の忙しさが先生の想定と異なると、転職ミスマッチになる可能性が高いので、必ずチェックしていただければと思います。
実際私は、混雑する日には一日100人近くの患者さんを診察する忙しいクリニックの見学に行ったことがあります。主要駅近くのクリニックで、複数診の体制で、医師も多くいらっしゃいました。みな忙しそうに次から次へと患者さんに対応していました。そのクリニックからはテンポ良く対応できる先生を求めているというお話がありました。
他方で自由診療の問診のアルバイトに行ったときは、一日に3人ほどのお客様の対応で、空き時間はほぼ待機業務でした。そのクリニックでは一人ひとりに丁寧に対応して欲しいというスタンスでした。
上記では仕事内容にかなり乖離があります。しかしながら日給は全く同じでした。拘束時間もほぼ同じです。先生の好みにもよりますが、一般的には同じような拘束時間であれば、後者のお仕事の方がよいとお考えの先生が多いのではないでしょうか。
入職前に実際の現場を知っておくことが良いと思います
スポットのアルバイトであれば、一日我慢すればいいですが、特に常勤で、入ってみたら思ったような仕事内容や労働環境ではなかった!となってしまうことは避けたいです。エージェントさんに紹介してもらう場合も、実際に現場で働いているわけではないので、詳細はわからないことが多いでしょう。ミスマッチを避ける最も良い方法は実際に働いている現場の先生に話を聞くことです。やや面倒ではありますが、このひと手間でミスマッチの可能性をかなり下げられます。(参考記事→実際に働いている先生へのインタビューについて)
非常勤の場合も、もちろん見学に行ってもらうに越したことはありませんが、週一の非常勤でわざわざ、という場合は、エージェントさんを経由して、一日の患者数や対応件数などは少なくとも聞いておく方がよいです。面接時には、先方の担当者の方と直接お話できますので、そこでも遠慮なく聞いておきたいことや、確認しておきたいことは質問して下さい。内容によっては、聞きにくいこともあるとは思いますが、入職後にこんなはずではなかった!となって辞めるよりもはるかにマシです。先生はもちろんですが、医療機関側にとってもミスマッチは避けたいと思う気持ちは強いです。もちろん入職してみないと、どうしても見えてこないこともあるのは事実ですが、事前に確認できることは、確認しきった方が、転職では成功する可能性が上がります。
もしも面接時に話を聞いた結果、どうも先生に合わないな、、と感じられた場合は、焦って転職せず一旦保留か、もしくはお断りするのもよいと思います。繰り返しになりますが、やはり転職でのミスマッチは先生も医療機関もお互いに不幸になってしまいます。お断りすることに心理的に負担となる先生もいらっしゃると思いますが、医療機関としては、面接で断られるよりも、入職後にすぐに辞められてしまう方がはるかに痛いです。無理な転職は禁物です。エージェントさんは利益構造上、なるべく転職を促すと思いますが。。。