
当サイトでは、転職を検討されている先生に向けて、お役に立てるような内容を考えて、記事を投稿してきました。早いもので記事数が100件を超え、初めて訪れた先生には、やや見づらくなってきた面があるかと思います。そこで今回は今まで私がご提案してきた、医師転職戦略をまとめてみようと思います。細かい内容は関連ページを張っておきますので、そちらもご参考にして頂ければ幸いです。今回はいままでの内容の決定版になっていますので、ぜひご参考にしてください。
まずは先生の希望、条件をあぶり出す
まず最も大事なことは、先生がなぜ今回転職をしようと思われたか、その理由について、今一度明確にして頂くことです。いきなり求人を検索し始めると道に迷いやすくなります。
まずは先生が転職するきっかけになった、希望、条件をすべてあぶり出しましょう。後で内容を削ることはいくらでもできるので、ここでは遠慮なく、全ての希望を書き出してしまいましょう。その後内容を整理して、優先順位をつけていきます。
希望、条件をあぶり出すコツは、矛盾するような内容や、到底叶いそうにない内容でも、ひとまずすべてかき出してしまうことです。文書にして目に見えるようにすると、ご自身でも気が付かなかったものが、見えてくることもあります。編集や整理がしやすいように、パソコンやスマホのメモ機能を使うことがオススメです。スマホに入れておけば、いつでも気がついた時に追加することができるのでオススメです。
書き出したあとは、それぞれの希望、条件について、優先順位をつけていきます。先生の好みで良いですが、あまりに細分化するとややこしくなるので、私は、
1.絶対に譲れない希望
2.なるべく叶えたい希望
3.あったらいいなという希望
という3段階に分類して考えました。
ここで最も重要なのは、もちろん1.絶対に譲れない希望になります。転職活動を進めていくうえで、ここの希望だけは妥協してはいけない項目になります。転職活動に煮詰まったり、上手く行かないとき、思うように求人がみつからないときでも、ここの条件だけは妥協できません。ここを譲ってしまうと、なんのために転職活動をするのかわからなくなってしまうためです。
希望条件が明確になったところで、求人会社との関係に進んでいきます。
(参考記事→転職希望条件のリストの作成)
求人会社は3社以上使う
医師求人会社に元々登録されている先生は、そちらをお使いいただき、もし未登録の先生は、当サイトオススメのサイトもご参考にいただきながら、医師求人会社に登録を行います。このときの注意点は、かならず独立した3社以上の会社を併用することです。1社に絞って転職活動を進めることは、極めてリスクが高い行為になり、転職失敗の典型的なリスクファクターになります。
医師求人会社が扱う求人には、会社によってかなりの偏りがあります。先生が求めている求人がA社には豊富にあるものの、B社ではほぼ見つからないということもあります。なかなか思うような求人が見つからない場合、単純に会社を変えてみるだけで先生好みの求人がみつかることも少なくありません。
またA社とB社で同じ求人を扱っていても、異なる待遇で募集していることもあります。当然同じ求人であれば、高待遇で出している方からアプローチする方が良いわけです。これは単純に更新のタイムラグのときもありますが、更新前のタイミングで先生が応募された場合、わざわざ良い待遇に向こうが変えてくれるとは限りません。というよりほぼ無いと言ってよいでしょう。
求人会社に登録すると転職エージェントが先生の担当についてくれて色々と転職のサポートをしてくれますが、医師と同じでエージェントにも得意不得意の分野があります。また人間同士のことですので、先生との相性もあります。転職エージェントは転職活動においては極めて重要な存在であり、先生の転職成功の鍵を握っていると言っても過言ではない存在です。優秀で先生と相性の良いエージェントが担当になってくれるかどうかは、完全に運次第です。成功率を上げるためにはある程度数を打つことも、どうしても必要になります。そのような意味でも、私は少なくとも3社以上とは関わったほうがよいと考えています。
(参考記事→転職で2-3社併用する実際 医師求人会社による違い)
求人検索を行う
求人会社に登録が済むと、その会社で公開されている求人を閲覧することが可能になります。求人の検索はいきなり転職エージェントに丸投げするのではなく、ある程度先生ご自身でやっていただくことがオススメです。
たとえば東京で、一般内科の求人を探している場合、地域と診療科を指定して求人を検索していきます。東京、内科では、求人数が多量に出てきてしまうので、ある程度条件を絞って検索し、先生好みの求人を探していきます。もし気に入った求人が見つかったら、ページをPDF化して保存しておくことをおすすめします。求人は応募があって充足すると、あとで見られなくなってしまうからです。先生好みの求人をストックしておくと、後で振り返ったり、求人エージェントに依頼するときも、この求人に似たものを探して欲しいと、より具体的な提案がしやすくなります。
もちろん求人検索も3社以上を並行してみていきます。そうするとおそらく重複する求人がいくつも出てきます。医療機関名が伏せられていても、大体わかります。そのような求人が見つかったら、かならず条件が同一かどうかチェックが必要です。
ある程度求人をみていくと、先生が希望する条件での市場平均が把握できてくると思います。東京の一般内科で、外来、病棟の平均的な業務の場合、年収としては1500万円前後が相場と思います。この条件で2000万円を目指すことはかなり難しいです。年収を上げたい場合は、勤務場所を変える、仕事の内容を変える、常勤を辞めて高単価な非常勤業務をかけ合わせる、などの戦略を工夫する必要があります。
(参考記事→ 週5の常勤は、もはやコスパが悪いのか? 常勤か非常勤か? 非常勤転職の最適解)
おおよその相場が把握できたところで、先生の希望とは全く違う条件で検索をかけてみましょう。上のケースでは、外科で北海道の求人や、東京の美容外科の求人などです。そうすると先生の職場とはまた違った景色が見えてくると思います。多角的に求人をみてみることで、もし大幅に年収や待遇を変えたいとなった場合は、全く別の仕事や、地域に変えることを考慮する必要があります。
(参考記事→求人検索の具体例とポイント 求人エージェントに頼らずに自分でやる方がいいこと)
エージェントと面談する
エージェントと会うタイミングはできれば上記のように、ある程度求人の市場を把握したうえで行った方が、得るところが多いかと思います。エージェントに希望求人を探すように依頼する場合、先生が希望する仕事での平均的な相場を全く知らない状況だと、適切な依頼をできない可能性があります。たとえば、上記の東京の一般内科で病院勤務では、年収2000万円以上で探して欲しいと依頼しても、正直厳しいわけです。その場合、働く地域を地方を含めて全国規模に広げるか、東京に留まりたい場合は、在宅診療クリニックや、自由診療のお仕事に切り替える必要が出てくるわけです。あまりに相場とかけ離れたの依頼をしてしまうと、何もわかっていないと思われ、転職エージェントに舐められることになりかねません。逆に上記のことをしっかり把握して臨んでいけば、この先生はある程度のことを分かっていると思われ、転職エージェントも下手な提案はできなくなります。転職エージェントの関係構築の上で、ファーストコンタクトは結構重要です。
何人のエージェントと面談するかという問題ですが、可能な限り3人以上のエージェントと会って話してみた方がよいと思います。転職エージェントも得手不得手、先生との相性があります。先生にとってベストのエージェントがすぐ見つかればいいですが、なかなか最初からそうもいかないこともあります。エージェントは先生が選べない以上は、ある程度数を打つことも必要です。少なくとも3人に会ってみると、だいたいの雰囲気や特徴、先生と合うかどうか、先生が希望する求人の情報など、わかってくると思います。
最も避けてほしいことは、一人目の求人エージェントと、特に先生と性格的な相性が合わなかった場合、転職活動を諦めてしまうということです。正直に申し上げて、医療業界同様に、転職会社にも色々な人がいるのは事実です。特に若手の先生が、色々と希望を出すと、そんな求人は無いと、素気無く言われてしまうこともあります。転職活動中で精神的に弱っている時に、心無い言葉を浴びせられると、けっこう効きます。もし合わないと感じたエージェントとは、すぐに距離をおいて、すぐに次の会社に移りましょう。転職会社も医師求人と同様に数は多くあります。一つの会社に執着する必要はありません。
(参考記事→ 転職エージェントは大きな力になる。転職エージェントを信用しすぎない)
求人を絞り込む
先生が検索で探し出した求人や求人エージェントから提案して頂いた求人で、いいと思うものがストックできて来たら、それぞれの求人について、より本格的に検討していきます。求人票を隅々まで読み込んで、疑問点や、曖昧な点、記載していない条件について、求人エージェント経由で質問し、疑問を解消していきます。その過程で条件が合わないことが分かった求人は外していきます。生き残った求人が先生の転職先の有力候補となります。
(参考記事→求人情報のみかたを解説)
インタビューに行く
上記のように絞り込んだ求人は、実際に足を運び、実際に働いている先生に話を聞きに行きましょう。インタビューさせてもらう先生は、先生が入職した場合、立場が近い先生です。可能なら一緒に仕事をする先生や、グループ制の病院では同じグループで仕事をする先生と話せる方が良いです。インタビューはエージェントさん経由でお願いをすることになりますが、注意点は、先生と立場や診療科が異なる先生とセッティングされてしまうことです。話をさせて頂いても、一番知りたい入職後の実情が聞けないので、せっかく話をさせてもらっても、得られるところが少なくなります。必ず先生と立場、診療科が同一の先生に話を聞かせてもらうようにお願いしましょう。
上記のインタビューですが、かなり面倒なことは十分承知しています。しかしこの一手間をかけることが、転職ミスマッチによる失敗の可能性を格段に減らすことが可能です。転職失敗の多くは、入職した後に、想定していた条件や、労働環境と異なることに気づいて、しまった!となるパターンです。特に常勤での転職の際はかならず行うことをおすすめします。
また話を聞きに行った結果、思ったような職場でなくても、落胆する必要はまったくありません。むしろ転職前に気づくことができて、ラッキーです。転職後に思っていたような職場でなければ、とんでもないことになりますが、転職前であればノーダメージで引き返すことが可能です。インタビューに行った職場がすべて今ひとつだったとしても、それならまた最初に戻って、求人を検索するところから始めればいいだけです。求人会社を追加して他の会社の求人を覗いてみるのも有効です。求人選びは納得行くまで行いましょう。転職をしていると、ある時期になると、先生にとって優良な求人が流れてくる時期があります。転職までの時間が許せば、時期を待つのも転職においては有効な戦略となります。
(参考記事→入職前に実際に現場の医師に話をきく 実際に働いている先生へのインタビューについて)
条件を確認する
インタビューでいいと思う求人が見つかり、面接で内定も得られた場合、雇用契約書を交わすことになります。雇用契約書はかならず先生ご自身でチェックをしてください。疑問点や納得が行かない点はかならず明確にして、指摘しましょう。雇用契約を結ぶまでは引き返すことが可能です。逆に一度結んだ契約は、後でひっくり返すのは、非常に困難になります。契約は最初が肝心です。可能なら第三者にみてもらうのがベストですが、精読することだけは、かならずご自身で行うようにお願いします!
きれいに退職する
転職する場合は、前の職場の退職を伴うことが多いと思います。退職する際は、たとえ色々と思うところや、不満があったとしても、かならずきれいに退職することが大事です。間違っても喧嘩別れのような、後に遺恨を残すような退職は割けるべきです。医療業界は狭い世界であり、どこで評判が流れてくるかが分からないということもありますが、何より先生が次の職場に気持ちよく旅立つためです。退職をスムーズに行うことで、次の職場でも気持ちの良いスタートが切れます。様々な思いは旧職場に置いてきて、身軽に次の職場に移りましょう!
(参考記事→退職は跡を濁さず)
まとめ
今回は今までの記事を引用しつつ、初めてまたは久しぶりに転職活動を行う先生向けに、医師転職の流れや考え方についてまとめてみました。より詳細な内容は各リンクも参考にして頂ければと思います。