
はじめに。
このページをご覧の先生は、転職を考えている先生であると思います。
医局の派遣を除き、医師が転職する回数はそう多くはありません。また就職した先では短くても数年は勤務することが多いです。その後の医師人生やキャリア形成、QOLにも影響するため、転職は慎重に行う必要があります
私は常勤、非常勤を含め、医師求人会社は通算5社以上利用し、何度か転職をした経験があります。面談した求人会社のエージェントは10名近くになり、医療機関の担当者と面接した経験も数多くあります。
医師転職の情報は、インターネット上に多くありますが、実際に経験した医師が書いている情報は極めて少ないです。
ここではまず、先生が転職活動をする前に、私の転職経験をご紹介しようと思います。多くの体験談がそうですが、上手く行った経験よりも、上手く行かなかった経験の方が参考にできることが多いです。私が失敗したこと、上手く行かなかったこと、もっとこうすればよかったと思うことも含めて率直にご紹介することで、先生の転職の参考にしていただければ幸いです。
💉転職サイトを活用した管理人の転職体験談
初めての転職活動
私が最初に医師求人会社の方と面談をしたのは研修医の1年目のときでした。非常に忙しい病院とマッチしてしまい、この病院で3年目は無理だと感じたときです。今考えるとなぜあんなに忙しい病院を希望してしまったか不思議ですが、正直深く考えずに研修先を選んでしまったのでしょう。その後、初期研修先を変えることになりましたが、これが私の転職活動の始まりでした。
2回目の転職活動
次に面談をしたのは、後期研修先を決めるためでした。このときが本格的な最初の転職になります。近くに相談できる先生もいなかったため、完全に手探りの状態で始めました。インターネットを使って情報収集もしましたが、なかなか私が欲しい情報にたどりつけず、苦労した記憶があります。その時の経験がこのサイトを立ち上げるきっかけになりました。
とにかく情報を得ようと思い、複数の医師求人会社に問い合わせ、面談をしました。仮にA社、B社、C社とします。どこを選んでよいかも分からないので、ひとまず検索で上位にでてくる会社で目に止まった会社を利用しました。
A社(大手)
A社はいわゆる大手の会社です。多くの先生が一度が聞いたことがあると思います。こちらの担当の方は非常に優秀で、初回の面談から、私が気になって問い合わせた求人以外にも、似た求人の情報を提供してくれました。相談する中で自分の方向性を再確認したり、あまり表には出せないオフレコの情報なども教えて頂き、非常に頼りになるエージェントでした。実際に医療機関に面接する際も同行してくれて、条件面なども交渉してくれました。最終的にこちらの会社の紹介で就職することになります。
B社(中堅)
B社は中堅の会社です。こちらの会社の方は私が専攻医ということもあってか、あまりやる気を感じない印象でした。初期研修上がりの医者に紹介する求人はほとんど無いとまで言われましたが、一つ就職先を紹介されました。一応話を聞きに行きましたが、結局話はまとまりませんでした。
印象的なのが、紹介してくれた医療機関の担当の方が、B社はあまりよい噂を聞かないと言っていたことでした。B社を利用している私のことを心配してくれるありさまで、ここまで求人会社によって違いがあるものかと感じました。この経験で転職を成功させるには、求人会社も非常に大切であると学びました。
C社(中堅)
C社も中堅の会社です。こちらの会社には私の希望とマッチする就職先がなく面接に至ることもありませんでした。後によくよく考えると、他の会社に比べ扱っている求人数が少ないようでした。それでも色々エージェントは探してくれて、最終的には標榜を変えてもいいという求人まで持ってきてくれました。しかしその当時は、私はエージェントのその執念に引いてしまい、結局そこで関係は終わりました。後から振り返ると、その執念を理解するには、医師求人会社の利益構造を理解する必要がありました。
医師求人会社の利益構造
医師求人会社は当然ですが、医師と医療機関をマッチングさせることで成り立っているビジネスです。医者を医療機関に紹介すると、先生の年収のおよそ20%が医師求人会社に支払われます。先生の年収がたとえば2000万円で成立すると、医療機関から求人会社へ400万円ものお金が支払われることになります。医師の年収は高めなので、他の転職市場に比べても非常に大きなお金が動くビジネスです。
この利益構造を理解すると、転職の際に有利になります。たとえば、先生が希望にマッチする医療機関が見つかった際に、もう少し給与を上げたいとします。直接先生が相談するのは気が引けるかもしれませんが、求人会社に相談すると喜んで交渉してくれます。前述のように、先生の年収が増えればその分手数料も高額になるためです。
C社との経験を通して求人会社には、私にとって良い転職になるかよりも、自分の利益のために転職させようとするエージェントもいることを学びました。そのエージェントは私の転職を仲介しようと必死だったのでしょう。もしかしたら会社からの圧力やノルマもあったのかもしれません。
転職活動中の注意点!
もし先生が転職活動の途中で、先生にとって不本意な転職を勧めてきたり、気が進まないなど、何が違和感を感じたら、その会社のエージェントとは距離を置くことをおすすめします。一度転職活動を白紙に戻すことも考えましょう。そのようなときはまず冷静になることが大切です。ひどいエージェントになると、今を逃したら次は無い、こんな優良な転職先はもう2度と無いなどと、脅しにも近い言葉を使って迫ってくるケースもあるようです。冷静に考えてそんなことはまずありません。医療機関は無数にあります。時間をかけて、冷静に探せば、先生の希望に近い転職先はかならず見つかります。
3回目の転職活動
その後だいぶ経って、諸々の事情で非常勤で週に一回勤めることになり、その勤務先を探す必要がありました。その際は今までの失敗からかなり学んでいたので、もっともスムーズに運んだ就職でした。自分の希望や譲れない条件など、全て自分で事前に洗い出し、就職先を探しました。この時は自分でネットであたりを付けていた医療機関を仲介してもらったところ、スムーズに話が進み、すんなり話がまとまりました。
この時、私がとった方法を簡単にご紹介します。まず私が希望する条件、譲れない条件、勤務できる曜日などを全て書き出しました。そのうえで、大手の医師求人サイトから、良さそうな求人をいくつかピックアップしました。
最終的には、2つの求人に絞りました。一つは、家の近くの往診クリニックの仕事で給与は10万円、拘束時間は9時間。もう一つは大手美容クリニックで給与は9万円、拘束時間は10時間でした。条件としては前者の往診クリニックの方が良かったものの、勤務内容は往診クリニックはかなり忙しそうで、美容クリニックはかなり時間に余裕を持って仕事をできる環境でした。
両者並行して話を勧めていましたが、途中で往診クリニックの方で週に複数回勤務できる方の応募があり、そちらの方で求人が充足しました。そのため最終的には後者の美容クリニックに決まりました。結果的には私にとってはよい非常勤先になり継続して勤務しています。
私のように、打診していた求人や気になっていた求人が、転職活動中に充足してしまうことは実は結構あります。自分が候補に上げていた案件が埋まってしまうと気持ちが焦ることもありますが、その必要はありません。先生も転職活動をされるとおわかりになると思いますが、求人は結構流動性が高く、次々に新しい案件がでてきます。むしろ少し待っているといい求人が出てくることも普通にあります。たとえ狙っていた求人がなくなっても、全く焦る必要はないので大丈夫です。
転職成功のためのステップ
先生が転職活動をされるときのステップを簡単に紹介します。
求人会社の利用
現在、医師が転職しようとする場合、ほとんどのケースでは医師求人会社を経由して転職活動をすることになります。ただ医師求人会社は非常に数が多く、それぞでの会社で個性があり、どの会社を選べばよいか最初はよく分からないと思います。そこでこちらのサイトでは、先生のご希望やご年齢に応じた優良求人サイトをご紹介します。
求人会社に登録すると、先生の転職をサポートしてくれる担当者がつきます。医者の世界でいえば外来主治医のようなものです。この担当者は人によってかなり実力や得意分野に差があります。医師にも専門があるように、病院への交渉に強い方もいれば、美容業界へのパイプが太い方、給与交渉が得意な方など、人によってバラバラです。
担当者を選ぶことはこちらからは出来ません。なのでどのような担当になるかは完全に運任せになってしまいます。場合によっては先生の希望する案件が得意でなかったり、能力的に微妙な人にあたってしまう可能性もあるわけです。担当の方の相性もあるでしょうし、ある程度当たり外れがあるのはやむを得ないです。
そのためリスクを分散するために医師求人会社は複数登録して、併行して利用するのが推奨されます。ここであまりに数が多くも先生の負担になると思いますので、3社ほどが利用するのがよいでしょう。
医師求人サイトはこちらを参考にしてください。
医師求人に会社に登録すると、その会社が扱っている医師求人が閲覧できるようになります。またその会社の担当の方から連絡があり、先生が探している案件を伝えると希望に近い求人を探してくれます。求人の中には非公開求人も少なくないですが、会員登録をすると、そのような案件も提案してくれます。
求人会社の担当者とは、できれば一度対面で面談をしておくとよいでしょう。その人が先生に合うか、信用できる人かどうか、転職パートナーとしてどうかなど見極めるには会って話すのが近道です。また対面での面談のときは、表に出てこないオフレコ情報も聞けることが多いです。
先生の希望を明確にする
医師求人会社の登録と併行して、転職先に関する先生の希望を明確にすることです。転職を成功させるには、最初に先生の希望を明確にすることが大切です。多くの先生は忙しい臨床をやりながら転職活動をするため、なかなか時間がとれません。そのためなんとなくで転職サイトに登録して、なんとなく良さそうなところで決めてしまうケースが多いです。転職先が先生にとってマッチするものであればよいのですが、中には入ったら思ったものと違った、こんな条件とは思わなかったなど、後悔するケースもあります。転職後に再度転職するのは労力的にも面倒で、履歴書の見栄えも悪くなります。譲れない条件はもちろん、細かい希望も含め、転職前には全て洗い出す必要があります
やや大げさに言えば、転職前に自己分析を行うと思って下さい。大学生が就職活動を行う際に、自己分析シートで自分を振り返り、分析して就職活動に臨むのと同じ要領です。まずは先生が希望する条件を全て書き出しましょう。パソコンでも紙でも構いません。そしてそれらを絶対に譲れない条件、できれば欲しい条件、あればいい条件など重要度で分けます。重要度のリストができたらその項目に沿って、求人を探していきます。求人会社のエージェントと面談するときも、リストをもとに行います。
上のリストを作るのは結構面倒な作業です。しかしこれがあると転職の軸がブレずに成功する可能性が高くなります。医師転職はあっさり決まるケースもありますが、希望の転職先が見つかるのに時間がかかるケースもあります。特に再就職までの時間が限られる場合などは、当初の軸がブレて、先生にとってよい就職先をみつけるよりも、ただ転職することが目的になってしまうケースもあります。私もなかなか希望するような転職先が見つからず、どこでもいいからとりあえず就職しなければという気持ちになりかけたことがありました。当初の気持ちを持ち続けることが転職成功には必須です。その時に最初の希望を書き出したリストが必ず役に立ちます。
さらに具体的な方法については、他の記事でも順次アップしていきます。