ハイブリッド勤務の考察(週4常勤+週1非常勤)

常勤、非常勤のそれぞれのメリットをいいところ取りをする方法として、週4日常勤で勤めつつ、週1日非常勤の業務を掛け合わせる方法があります。ハイブリッド勤務とこのサイトで呼称している方法です。今回はこのハイブリッド勤務について考えていこうと思います。

ハイブリッド勤務=週4常勤+週1非常勤

ハイブリッド勤務とは、勤務日数が週4日の常勤先を確保しつつ、非常勤の勤務を週1日、組み合わせて行う方法です。私が勝手に名付けたので、一般的な呼称ではありませんが、便利な名前なのでこちらのサイトで使用しています。

ハイブリッド勤務の特徴としては、常勤先を確保して安定性を確保しつつ、非常勤のメリットを取り込むことで、それぞれのいいところ取りができることです。

常勤先を確保しているので、社会保険料の管理は不要で、雇用形態も一定の安定性を確保し、万が一病気休職の際なども保障が得られます。また退職金もあります。そして常勤職員は、労働者として強力に保護されているため、滅多なことでは職を失うこともありません。

優良な非常勤を組み合わせることで、週5日常勤よりも収入を確保できます。非常勤で得た収入は社会保険料と切り離されるので、そちらの面での節税効果も期待できます。また万が一、常勤先の経営が厳しくなった際も、勤務先を分散しているので、一気に職を失うことはなく、リスクヘッジが効いています。週1日は自由診療など、常勤先と全く違う仕事にするといい気分転換にもなります。

週5日常勤と比べた場合

週5日常勤で勤務する場合と、ハイブリッド勤務の場合について、個々の項目について、深く掘り下げていこうと思います。

収入アップが可能

こちらの記事でも言及していますが、非常勤先で給与が高い職場を選ぶと、同じ週5日働くにしても、非常勤を組み合わせる方が収入UPを狙えます。また下記の社会保険料の節税効果も合わせると額面以上に手取りを増やせる可能性があります。(参考記事→週5の常勤は、もはやコスパが悪いのか?

もちろん常勤の収入が2000万円を超えるなど、もともとかなりの高給の場合は別ですが、非常勤でも訪問診療の現場で求人を選べば、日給10万円を目指すことも現実的に可能であり、戦略をきちんと取れば、多くの先生が年収UPに結びつくと思います。

社会保険料の管理不要で節税効果も

常勤を週4日に減らすと、給与が4/5に減り、給与に連動する標準報酬月額も減ることになります。標準報酬月額は、常勤の給与のみに連動するため、非常勤の給与でいくらもらっても影響しません。そのため社会保険料の負担が減ることで、非常勤の給料と合わせると、以前よりもトータルの手取り額を増やすことが可能です。

(※元々かなりの高給をもらっている場合は、標準報酬月額が上限MAXのままで、負担が変わらないケースもあります、参考までに標準報酬月額の資料のリンクを貼っておきます)

気分転換になる

これは隠れたメリットだと思いますが、週1日は普段の常勤と全く違った現場で仕事をすると結構良い気分転換になります。たとえば常勤では保険診療をしている先生が非常勤では自由診療の現場に行ったり、常勤では病棟管理を主にしている先生が、非常勤で訪問診療の仕事をしたりすると、良い気分転換になります。週5日同じ職場で、似たような仕事をしていると良くも悪くもルーチンワークとなって来る面もありますが、週1回でも別の職場で仕事をすると、結構気分転換になり良いと思います。

リスクヘッジになる

週5日常勤で同じ医療機関に勤めている場合は、万が一その医療機関が破綻した場合などは、一気に職を失ってしまいます。正直医療機関が経営破綻する可能性は比較的低いと思われますが、医療経営については厳しい見通しが予想され、今後無いとは言い切れません。事実、経営が厳しくなってきている医療機関も多く、破綻する病院のニュースも散見されています。

常勤で週5日勤めるというのは、その医療機関へ、先生の全ての労働力を、ベットしているのと同じです。万が一のことがあれば、一気に職を失うリスクがあります。今まではあまり顕在化しないリスクでしたが、実は週5常勤ならではの隠れたリスクとも言えます。

今の世代が定年まで逃げ切れるかは本当に不透明です。経営破綻まで行かなくても、昇給が昔のようにしないシステムになったり、退職金が削られたりというのは、現実的に起こり得るリスクであると思います。事実、現役世代に不利なシステムになってきてしまっている状況です。

非常勤1日であったとしても、勤務先を分散することは一定のリスクヘッジになります。全ての仕事を失って、収入が0になってしまうことと、週1日でも仕事を確保して年収400-500万円でも確保しているのでは、全く気の持ちようが違います。貯蓄と非常勤の収入があれば、ある程度時間が稼げるので、新たな常勤先を探したり、非常勤の仕事を増やす転職活動も落ち着いて出来るでしょう。冷静に転職活動をすれば、万が一のことがあっても、その後生き残れる可能性が高いと思います。

週5日常勤をある日急に失った場合は、かなり精神的にキツイと思います。収入もそこで途絶えるので、金銭的にも追い詰められます。そのような状況下で冷静に転職活動をするのは、どんなに強い先生であっても困難であると推察します。冷静さを欠いた転職では、優良な求人を確保するのはなかなか難しく、取り敢えず、手っ取り早く仕事を確保しようと動いてしまう可能性が高いです。先方にも先生の状況を知られると、足元をみられ、先生の労働力を相場よりも安く買い叩かれてしまったり、不利な労働条件で契約してしまうリスクもあります。

非常勤と比べた場合

非常勤のみの勤務に振り切った場合と、ハイブリッド勤務と比べた場合でも、個々の項目について以下で考えて行きます。

雇用の安定性

ハイブリッド勤務では、常勤先を確保しているので、常勤の安定性を確保できます。常勤医師は労働者としての保護が強力であり、滅多なことでは仕事を失うことはありません。先生が辞めると言わない限りは定年まで仕事が確保出来る可能性が高いです。常勤の場合は有期契約ではなく、無期契約で定年まで働くことを想定している場合がほとんどだからです。

対して非常勤のみの場合は、契約期間で仕事が切られてしまうリスクを常に抱えています。いつ仕事を失ってしまうかもしれないという不安は非常勤ならではの悩みです。もちろん非常勤にも雇用形態を守るルールもありますが、常勤より不安定であるという側面は拭えないと思います。

労働者としての強力な保護

ハイブリッド勤務の場合は、労働者としての保障、保護、権利もしっかり確保できます。万が一病気で休職することになっても、傷病手当などの保障もしっかり出ます。もし何かあっても常勤の医療機関が守ってくれる可能性が高いです。

しかし非常勤の場合は、働けなくなったらその時点で収入が途絶えてしまいます。非常勤は仕事が出来なくなったら、そこで終わってしまいます。これは非常勤のみ振り切った場合の大きなリスクの一つであると思います。

社会保険料の管理不要

ハイブリッド勤務で、常勤の仕事を確保している場合は、社会保険料の管理は常勤先におまかせできるので先生の管理は不要です。常勤の場合、健康保険+厚生年金に自動的に加入できるので、手続きや保険料の納付も自動的に代行してくれます。

それに対して非常勤のみの場合は、社会保険料の管理はご自身で管理し、納付、確定申告まで行わなければなりません。事務作業が苦手な先生には結構面倒であると思います。

退職金あり

これは勤務先にもよりますが、基本的に常勤の医療機関では退職金が出ることが多いです。週5日の場合と比べればもちろん減額されるものの、一定のお金を退職時に受け取れる可能性が高いでしょう。

非常勤の場合は、退職金はなく、退職金の分を普段の給与に上乗せされていると解釈することもできます。そのためご自身で老後の資金対策を講じる必要があります。もちろん今の時代は常勤の先生でも老後資金は一定積み立てておく必要があると思いますが、少しでもまとまったお金が定年時に入ってくるのは大きいと思います。

週3日常勤+週2日非常勤はどうか?

ハイブリッド勤務として、上のスタイルでは週4日常勤+週1日を想定していますが、週3日常勤+週2日非常勤というスタイルも考えられます。もちろんこちらもアリです。非常勤の週2日を、週1日ずつ別の職場にすれば、さらにリスク分散にもなります。

しかしこちらの場合、週3日常勤を探す必要がありますが、こちらがなかなか難しいのです。医療機関によっては、週の労働時間が20時間を超えれば、常勤扱いとしてくれるケースもありますが、このような募集は、この記事を執筆時点では、かなり珍しいというのが現実です。そのため今回は週4日のスタイルでご紹介しています。もちろん週3日で優良な求人が確保できれば、戦略として十分アリだと思います。

デメリットは?

もちろんリスクも0ではない

ハイブリッド勤務は、常勤と非常勤のいいところ取りが出来るので、有効な働き方の一つであると思いますし、最適解となりうるものと考えていますが、もちろんデメリットもあります。以下で考えていきます。

非常勤の雇い止め

非常勤の場合は有期契約なので、どうしても雇い止めにあうリスクは常にあります。もちろん週1日なので、仮に雇い止めにあったとしても、週4日常勤に収入があるので、生活が破綻するようなことにはなりませんが、収入ダウンのリスクはあります。ただ安定した常勤を確保しているので、そこまで焦ることなく、新たな仕事を探せば良いだけです。週1日の非常勤であれば、募集数が多いので、比較的容易に確保できると思います。

休みの調整が2ヶ所必要

長期休暇で海外旅行に行く際などは、休みを調整するのが2つの医療機関になるので、それがやや面倒です。ちなみに週1日非常勤でも有給休暇の取得は可能ですので、週5日常勤と同様に、長期休暇も調整すれば現実的に可能です

常勤が破綻した場合、、

常勤が経営破綻すると、週4日の常勤を失うことになるので、確かに大きな痛手になりますが、これは週5日常勤であっても抱えるリスクであり、むしろ非常勤がある分、ハイブリッド勤務の方がまだマシとも解釈できます。これはついては、どうしようもないように思います。

週4日常勤が忙しい場合のリスク

週4日常勤がかなり忙しく、特に連日オンコールがあるような職場だと、週5→週4にしたところで、業務負担が変わらず、給与のみが下がってしまうリスクがあります。これでは割に合わないので、週4日の常勤は、あまり激しい現場ではなく、ほどほどの職場を確保することがオススメです。

現状では、メリットがデメリットを上回ると思われる

現状では私としては、給与、安定性、社会保険料など総合的に考えると、週5日常勤単体よりも、ハイブリッド勤務の方がメリットがあるのでは無いかと考えています。

週5日常勤よりも、給与アップ、社会保険料の節約、リスクヘッジメリットを確保しつつ、非常勤単独よりも圧倒的に安定していることから、多くの先生にとって選択肢の一つになるのではないかと考えます。

すでに週5日の先生がこの戦略をとるには?

週5日の医療機関でも、週4であれば常勤を認めてくれるところが、交渉すると意外にも多いです。もし今の職場が気に入っていれば、現在の職場を週4常勤に変更する交渉をする手もあります。(参考記事→いまの週5常勤を週4常勤に変更を交渉する

※余談 研究日があった時代はメジャーな手法の一つだったのか?

私は知らない世代なのですが、上の先生の時代には研究日という日が週1日あり、その日は労働が免除され、研究をしたり、他の医療機関で仕事をしていたそうです。この場合は、週5日の給与を貰いながらなので、現在よりさらにメリットがあったと思います。上の世代の先生はまだまだ医師が優遇されていた時代らしく、話を聞くと羨ましく感じます。いい時代もあったのですね。いまは本当に厳しい時代であると感じます。

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