
専攻医の先生が転職サイトを利用するケースは主に2パターンです。一つは初期研修直後に後期研修先を探すパターン。もう一つは後期研修の途中で他の施設を探すパターンです。
今回は後期研修の途中で他の施設に切り替える場合を解説していきます。
後期研修先で思うような研修先でなかったというケース
こんなはずじゃなかった、、。
先生は初期研修を終了したあと、いよいよ専門を選択し、今まで以上に高度な医療に邁進されていきます。しかししばらくして、当初思っていた環境や状況と違ったというケースもあります。実は後期研修の途中で上手く行かなくなるケースもそんなに珍しいものではないです。実際私の知り合いの医師にも後期研修の途中で進路を変えた方が何人もいます。
これでは持たないと感じたら、早めに撤退を考えるべき
もし先生の環境がどう考えても継続できないほど忙しかったり、身体を壊すのは時間の問題というような環境であれば、職場を変えるのは現実的な判断です。真面目な先生ほど燃え尽きて倒れるまで頑張ってしまいます。しかし倒れるまで頑張るべきではありません。余力を残して撤退をしたほうが、絶対によいです。一度心身を完全に壊してしまうと、本当に大変です。仕事に復帰するのに時間も労力もかかります。倒れるまで頑張れば、周りも仕方ないと思ってくれるだろう、、、などと考えず、先生ご自身の体調を一番大切にしなくてはなりません。繰り返しますが、倒れるまで、燃え尽きてしまうまで、決して頑張りきってしまわないで下さい。余力を残して転職しましょう。
職場を変えたところで新しい環境で働けるのであれば全く問題ありません。職場や環境を変えることで問題なく臨床をできる先生は数多くいます。実際私はそのような先生の例もたくさん見てきています。たまたま合わない職場、環境を選んでしまっただけです。先生の能力でなくただのミスマッチのことが多いので、気にせずに先生に合う環境に移ればいいだけの話です。
パターンはいくつかある。
後期研修の途中で転職する場合、専門医を目指すか、転科も検討するかで以下の4通りが考えられます。
①今までと同じ科で専門医を目指す
②今までと同じ科で専門医は目指さない。
③転科して新たに専門医を目指す
④転科して専門医は目指さない。
以下この4パターンについて考えてみます。
①今までと同じ科で専門医を目指す
診療科は今までと同じ科で、専門医の取得も引き続き目指す場合です。今やっている診療科は続けたいし、専門医をも目指したいけれど、今の環境では継続が難しいようなパターンです。こちらのケースでは、専門医がとれる施設への転職が必要です。目標は明確なので専門医を取れる施設への転職を転職エージェントと共に探しましょう。また同時に今の先生の転職の理由を明確にすることが必要です。例えばハードワーク過ぎるのであれば、今より忙しくない病院を選ぶ必要がありますし、連日のオンコールが負担なのであればオンコール当番制の病院や主治医制ではなくグループ制の病院を選ぶなどです。初めにこの条件は譲れない!ということは明確にしたほうが転職はスムーズに進みます。こちらの記事も参考にしてみてください。(参考記事→転職希望条件のリストの作成)
②今までと同じ科で専門医は目指さない。
診療科は同じ科を続けたいけれども、専門医の取得は目指さないパターンです。こちらの場合は、特に専門医が取れる施設へ限定されないので、転職の範囲は広くなります。もしハードワークや人間関係が理由で体調を崩して、専門医を断念するという気持ちになっているのであれば、専門医を諦めるのは早いかもしれません。意外なほどに環境を変えることで上手くいくケースもあります。医師の労働環境は医療機関や上司によって天と地ほどの差があるからです。
もしよくお考えの上で、専門医は特に目指さないという選択をされるのであれば、上記のように転職先の範囲は広くなります。条件の交渉や教育環境など、転職エージェントと相談してよりよい環境への転職を目指して行きましょう。
③転科して新たに専門医を目指す
進んだ診療科が思っていたものでもなかった場合や途中で他の診療科を目指したくなった場合などで、専門医も目指すケースです。こちらは転科になるので、転科先で一から再スタートをすることになります。しかし専攻医の先生の段階では再スタートしたとしても同期とそこまで年齢も変わらないので抵抗なく入れると思います。
こちらも先生の転科のきっかけを事前に明確にする必要があります。単純に興味が変わったなどであれば問題ありませんが、例えば外科に進んだが、体力的に厳しいから内科に転科したい先生のケースを考えてみます。この場合、そこまできつくない病院に移って、外科を継続することも考えられます。内科に転向した場合でも、急性期のハードな病院を選んでしまうと外科と変わらない忙しさで再転職が必要になるかもしれません。この場合は、診療科よりも先に、労働環境がそこまでハードでない病院をまず選ぶ必要があります。転科は必須では無いかもしれません。
先生が色々お考えになってそれで転科の意志が決まったのであれば全く問題ありません。後期研修を一からやり直す場合は、通常の転科よりもハードルは高くありません。転職エージェントと相談しつつ、専門医取得可能な病院を探しましょう。また転科先によっては、民間病院では専門医取得が難しいケースもあるので注意です。その場合はどこかしらの大学医局に所属する必要があります。
④転科して専門医は目指さない。
転科をして、なおかつ専門医も特に目指さないパターンです。こちらの場合もそのような経緯になった理由を先生に分析して頂き、転職を考えて頂く必要があります。冷静に分析して頂くと、上の①~③のケースに移行できるケースもあります。
転職理由をお考え頂いた結果、転科が必要で専門医取得も特に目指さない場合は、先生がご希望する転職先を探していくことになります。この場合も転職エージェントと一緒に転職先を探していくことが大切です。
一度の失敗で諦めることはまったくない
たとえ先生は後期研修で上手く行かないことがあり、転職や休職をすることになっても、専門医を諦めたり、まして臨床を辞めてしまう必要は全くありません。研修中に転職で環境を変えて、その後専門医を取得したり、臨床で立派に活躍されている先生は多くいます。実際私も直接そのような医師を何人も知っています。そういう先生は人の気持がわかる、心を持った医師であり、人格的にも立派な人が多いです。多くの場合、上手く行かなかったとしても、それは先生の能力というよりも、先生と病院や上司とのミスマッチであることが多いです。環境を変えるだけで上手くいくケースも少なくありません。就職前に病院見学に行ったり、先輩医師から話を聞いても実際のところは入職してみないと分からないことが多いです。たまたま先生に合わないところを引いてしまっただけなので、事故のようなものです。誰にでも起こりえますし、どんなに気をつけていても時に避けがたいものです。
私も実際に研修途中で挫折した経験があります。その時は目の前が真っ暗になり、もう本当に臨床そのものをやめようと思ったことも何度もありましたが、環境を変えて、これでダメならもう諦めようとダメ元で再チャレンジした結果、なんとか後期研修を修了し、その後も臨床を続けています。
たまたまかもしれませんが、私は研修中に環境が合わず転職する医師に多くめぐりあいました。多くの先生がハードワークや上司との関係が上手く行かないなどで、前の職場でついていけず転職された先生でした。先生によってはうつ病などの精神疾患を発症するまで我慢してしまった先生も少なくありません。しかし多くの先生は環境を変えることで、今も立派に臨床で働くことが出来ています。専門医を取得した先生もいますし、途中で別の道を選択して臨床を続けている先生もいます。
多くの先生をみていて、その先生にとって適切な労働環境を選ぶことは、非常に重要であると感じます。ある先生には非常によい職場でも、他の先生には地獄のような職場であることは普通にあります。多くの原因は医師と医療機関のミスマッチです。ミスマッチが原因で臨床から離れてしまう先生もいます。これは非常にもったいないことであると思います。
求人会社は複数社利用が重要
転職活動ではあっさり見つかることもある一方で、なかなか先生の条件にあう求人が出てこないこともタイミングによってはあります。その場合も決して諦めないで下さい。やはりアンテナを多く張るためにも、複数の求人会社を利用することが大切です。見つからなければ利用する求人会社を増やせばいいだけです。転職では幸いにして先生が利用する料金はかかりません。転職先の医療機関が負担してくれます。時間が許す限り利用できるものは利用した方がよいです。
条件を見直してみる
もし思うような条件で見つからない時は視点を変えてみると上手くいくことがあります。希望する条件のうち、どうしても欲しいものは譲らないままですが、これは譲れるという条件は外してみるのです。
もっとも良い例が勤務地です。たとえば独身の先生であれば、後期研修の一時期と割り切れば、一気に全国に拡大できるので、希望条件の病院が見つかる可能性が上がります。たとえば東京で探していた先生も、最寄りの空港から1時間以内であればよいという条件に変えれば一気に範囲が広がります。飛行機に乗ってしまえば数時間以内に東京に帰れるので、問題をクリア出来るかもしれません。
また専門医取得を最優先にしたい先生であれば、思い切って専門医が取得しやすい診療科に転科するということも考えられます。大学医局に所属しなければ取得できない診療科から、民間病院でも取得可能な診療科に変えることや、研修期間が5年かかる診療科から3年で取得可能な診療科に変えるなどです。
心身に不調がある場合は、一度休んでみるのも選択肢
転職をお考えの先生で、心身をすでに壊してしまっている先生や、壊しかけている先生は、転職前にまず休んだほうがよいです。長い医師人生の中で、一時期、立ち止まって休む期間があっても問題ありません。むしろ心身を壊してしまう方がよっぽど問題です。医師も身体が最大の資本です。心身に不調がある場合は、とにかく休みましょう。休もうか迷ったら休みましょう。迷っている時点で既に危険信号が灯っている可能性が高いです。遠慮はいりません。残酷なことかもしれませんが、先生が休んでも病院は回ります。病院というか会社組織は人が抜けても問題ないシステムで出来ています。先生が抜けて本当に回らなくなる病院ならその方がよっぽど問題です。早く逃げ出した方がよいです。責任感が強い先生ほど、ご自身を追い込んで、倒れるまで頑張りきってしまいがちです。頑張り切って燃え尽きてしまう前に、どうか休みをとって下さい。
まとめ
今回は後期研修中の転職についての記事でした。色々と書きましたが、結論として最も大切なことは、先生にとって働きやすい医療機関とご縁ができることです。それが先生にとっても、転職先の医療機関にとっても双方に幸せなことです。
就職をすれば、時に先生と医療機関でミスマッチが起きることもあります。それは事前に予期できるものばかりではありません。ミスマッチが起きてもそういうものと割り切って、染着せずに、次を探せばいいだけの話です。合わない病院はこちらからさっさとパスしてしまいしょう。そして先生にとってよい転職先を探して行きましょう。
先生の幸せな転職を心から応援しています。