
専攻医の先生が転職サイトを利用するケースは主に2パターンです。一つは初期研修直後に後期研修先を探すパターン。もう一つは後期研修の途中で他の施設を探すパターンです。
今回は初期研修直後の後期研修先を探す場合について考えていきます。
初期研修直後の後期研修先を探す場合
後期研修をご自身で探す場合は、医師求人会社を利用することになります。後期研修先もご自身で探して選ばれる先生が最近は多くなりました。多くの先生にとって最初の転職活動となるでしょう。後期研修として4月からスタートするのが普通ですので、転職の時期は決まっています。転職の時期が決まっている場合は、その期日までに内定を貰う必要があります。またその時期は先生同様に、他の研修医も就職先を探して動いています。よい求人を探すためには早めに動き出すことが重要です。そのため研修医2年目が始まったあたりから動き始めるのが良いです。
初期研修修了後の先生は専門医取得を目指すかどうかで大きく進路が変わります。以下専門医を取得する場合、取得しない場合に分けて考えてみます。
専門医取得を目指す
学会の条件をチェック✓
専門医を取得する場合は、専門医の受験資格を得るために、それぞれの学会に定められているカリキュラムをこなさなくてはなりません。診療科によっては、大学医局に所属しなければ専門医が取れない診療科もあります。この場合は先生ご自身で後期研修先を探すのではなく、どこかの医局に入局する必要があるので注意して下さい。特にマイナー科はこの傾向が強いです。
内科や総合診療科は、民間病院でも基本領域の専門医の取得を目指すことが可能です。医局に所属しない選択をする先生はご自身で後期研修先を探すことになります。この場合頼りになるのが医師求人会社です。後期研修先を自力で探すこともできますが、基本的には医師求人会社に情報を貰ったほうが上手くいく可能性が高いです。、また基本領域の専門医を取得できればよいのか、それともその先のさらに専門性の高い専門医の取得も考えているのかで、病院の選択も変わってきます。このあたりも見据えておいた方がよいです。
後期研修先選びによって、その後数年のQOLが変わる
専攻医は病院の選択によって給与や待遇が変わります。これは初期研修の時よりも顕著です。ほとんど同じ仕事をしているのに、給与が病院によって異なるのはざらにあります。また医師の労働環境には相当な差があります。ほとんど休みなく働かなければならない病院もある一方で、17時に上がれて、土日祝休みの病院もあります。どちらかがよいというのではなく、先生が求める環境とミスマッチが起きてしまうと不幸になります。忙しく、症例をどんどん経験したい先生がヒマな病院に行けば退屈でしょうし、ご自身の生活も大切にしながら勉強したい先生が、休みなしで働くのが当たり前の病院に行けば最悪でしょう。
そのため先生がどのような後期研修先を選びたいかを事前に明確にして、転職活動を行うことが大切になります。とりあえずどのような病院があるかを探してみてもよいですが、それだと本当に先生が望んでいる病院というより、見つけた求人のなかでまだマシなものを選んでしまうケースもあります。まず、先生ご自身の本音を書き出して冷静になることが転職成功のポイントです。こちらの記事も参考にしてみてください。(参考記事→転職希望条件のリストの作成 )
そこそこでやりたい先生へ
中には初期研修で疲れて、もう専門医をとるか迷っている先生もいらっしゃるでしょう。後期研修は診療科や病院を選べば、そこそこでやって、しっかり専門医をとることができる病院もあります。こういうのは流動的な世界なので、〇〇病院ならラク!というのは言えませんが、探せばあるのは事実です。体力的なことや精神的に消耗してもうこれ以上研修に耐えられないと思われているような先生も、諦めずに良く探せばかならず先生にマッチする病院はあるはずです。
事実私は、忙しい病院では専門医取得は無理だと考え、事情を説明し、そこそこでできる病院で研修し専門医を取得しました。初期研修後は正直専門医取得は諦めていましたが、たまたまそのような病院とのご縁があり、研修させてもらうことができました。
先生にマッチする病院、特に内部の事情を含めて知るのは自力のネット検索だけでは限界があります。求人会社も利用するのが懸命です。それも複数の会社を使うことをオススメします。アンテナを多く張った方が、マッチする求人がみつかる可能性が上がるためです。
もし思うような求人が見つからなくても諦めないで下さい。その場合は求人会社変えればいいだけです。たとえ4月に間に合わなくてもいいじゃないですか。融通がきく病院ほど、中途入職を受け付けているものです。医師人生は長いです。ゆっくり構えてもいいのではないでしょうか?思うような求人が見つからない場合は、地方も含めて探す地域を広げてみると、意外にあっさり見つかる場合もあります。
私が知る限り、比較的小さい病院でも専門医が取得できるのは総合診療科です。一時期へき地に行く必要はありますが、3年間の研修で専門医受験資格を取得できます。小規模の病院だと専攻医が一人ということも少なくありません。そのため色々事情や相談に応じてくれるところもあります。もし転職活動に行き詰まったら、総合診療で比較的小規模の病院も考慮してみてください。
専門医取得は目指さない
専門医はひとつの評価基準
専門医を目指さないという選択をされる先生もいらっしゃいます。新専門医制度以降、このような選択をされる先生もおり、ひとつの考え方だと思います。専門医にとらわれずに後期研修を行いたい場合は、かなり柔軟な選択が可能です。指導をしてくれる医師がいればどこでもいいので、極端な話クリニックでもいいわけです。初期研修を行った病院で、そのまま勉強を継続したいと申し出て勤める先生もいます。このあたりは施設との相談になりますので、先生の状況に応じて希望する条件にあう病院を求人エージェントと共に探すのが近道と思います。
認定医という選択肢もある
また専門医ではなく、認定医という選択肢もあります。日本プライマリ・ケア連合学会の認定医は臨床経験が7年以上で、条件を満たす症例を集めれば受験可能です。内科、総合診療科でない先生も取得が目指せます。何かしら資格が欲しい先生は、考慮する価値があると思います。
将来的な不安は残る
専門医を取得しないことで、将来的に転職がしづらくなったり、待遇が悪くなるなどのリスクはあると思います。特に現時点では、専門医の有無で診療の制限や、診療報酬の影響はありませんが、将来的には変わる可能性もあります。これは正直誰にもわかりません。
ある程度の年齢で取るのはハードルがある
もし少しでも専門医に未練がある場合は、後悔しないように取れる方法を模索した方がよいです。たとえば10年後に専門医を取得しようとすると、10年下の医師と混じって研修をしなければならず、かなり精神的にツライです。もし取得するなら若い内の方がラクであると思います。
未来は誰にも予測できない
しかしながら未来は分かりません。先輩医師に聞いたところでは、10年以上前から専門医がないと今後不利になると言われていたようですが、現状持っていても特にメリットは今までなかったという先生もいます。以前は医学博士の方が権威がありましたが、現在はあってもなくても転職や仕事にはあまり影響しません。もしかしたら専門医も今後形骸化して、他の資格やスキルが求められる時代になるのかもしれません。
現時点で先生が納得できる選択を
専門医については、医師によっても、年代によっても、立場によっても様々な意見があります。最も大切なのは先生が現時点で納得できる選択をすることです。専門医を取得する選択をしたことで逆に、先生の目標に遠回りになる可能性だってあります。取らない選択をして晩年に後悔する可能性もあります。それは誰にもわかりません。いろいろな意見を言う周りの医師も、転職エージェントも、先生の人生の責任を持ってくれるわけではありません。そのため先生ご自身で納得できる選択をするしかないのだと思います。そもそも専門医は目的ではなく、客観的な指標の一つに過ぎません。大学や病院で出世したい先生には必須でしょうが、実家のクリニックを継ぐ未来ある先生などには、もしかしたら必須のものではないのかもしれません。どうか先生にとって、納得できるベストな選択を、先生ご自身の手で選び取って頂ければ幸いです。
管理人の一例
ちなみに私は初期研修の段階で疲れ切ってしまい、専門医はもう無理だろうと諦めていました。しかしどうしても、どうにかならないか道を模索して、初期研修の後、しばらく就職せず、仕事をしない時間を設けて道を探りました。その結果、当初は全く考えていなかった総合診療の道を見つけ、幸い良い病院と縁があり、なんとか3年間乗り切って専門医を取得しました。取得して冷静にふりかえると、専門医にメリットがあるかと言われると現時点では疑問です。しかし自分の気が済んだのは事実です。今は専門医取得にチャレンジしてよかったと思っています。
まとめ
初期研修後の進路は、専門医を目指すか否かで大きく進路が変わります。いずれの道でも、先生にとってよい選択ができればそれが一番であると思います。いずれの転職でも転職活動には医師求人会社のサポートが必須です。この記事はお読みの先生は転職が初めての先生が多いと思われますので、早め早めに準備をされることをオススメいたします。