専門医は必要か?

これから後期研修をする先生や、後期研修中の先生が専門医を目指すかどうかという話題です。専門医は可能なら取得しておいた方が無難であることは間違いありませんが、先生が目指すものや、先生の環境は先生それぞれです。専門医を取得しようかどうか、迷っている先生に以下で解説していきます。

迷うなら取得を目指す方がいい。

もし先生が専門医取得を迷うような状況だったら、とりあえず取得しておいた方が間違いありません。現時点で専門医があることですごく有利になることや、待遇が良くなるという恩恵を受けることは正直少ないです。しかし今後専門医取得が標準になると、転職時に持っていないことで不利になる可能性があります。転職で希望する求人に就職できなかったり、足元を見られて不利な条件での転職を余儀なくされるなどのリスクです。誤解を恐れずに言えば、先生の労働力を、安く買い叩かれてしまうという危険性があるということです。

現時点では必須でないが、ある方が転職はしやすい

現時点では、専門医が必須という転職の方が珍しいです。専門医があると少し給与が良くなる求人もたまにある程度です。そのため専門医があるからものすごく有利な条件で就職できるということもなく、専門医がないからすごく不利になることもありません。

専門医があるメリットは先生の臨床能力をある程度、担保できる点です。先方の医療機関としては専門医を取得している先生であれば、その領域についてある程度の能力はあることを確認できます。逆に言えば現時点では、そのくらいの利点しかないとも言えるかもしれません。医師転職では臨床能力もそうですが、人柄やコミュニケーションが取れるかを重視している医療機関も少なくありません。卓越した臨床能力やスキルを求めている医療機関の方が少ないです。平均的な臨床能力を持って人格が優れている人が求められることのほうが多いです、

しかし今後、専門医を持つことが標準になった場合は、この状況が変わる可能性はあります。10年後には専門医を持っていることがプラス要素ではなく、必要条件になる可能性もあります。その場合は専門医がないと、転職市場で選べる職場が限定されるような可能性は否定できません。

大切なのは先生が目指すもの

最も大切なのはことは、先生がどのような医師のキャリアを形成したいか、どのような人生を歩みたいかということで、専門医取得が目的ではありません。なるべく早く実家を継ぐ必要があるような先生には、専門医のカリキュラムが遠回りになってしまう可能性もあります。若い内にたくさん働いて、なるべく早く資産形成をして、晩年はゆっくりしたいと考えている先生にも、専門医は不要かもしれません。状況は先生によって異なり、目指す目標も異なります。後期研修先を考えるときは、専門を決めるときでもありますが、同時に先生の人生についても改めて考えてみるよい機会です。是非ご自身の気持ちに正直に向きあう時間を設けていただけたらと思います。

専門医制度を作っている側の医師は当然ですが、専門医を推奨する先生です。そのような先生や、同じような環境にいる先生は専門医をとることは最低条件のように言う先生もいます。専門医をとってからがやっとスタートだという意見もあります。しかしこれは当然ですがポジショントークです。先生の状況や目標を考えての意見ではありません。専門医取得が最適解ではない環境の先生もいます。結局の所、先生ご自身でその時点で最も良いと思う選択をする他ないのだと思います。先生の希望をあぶり出すには、こちらの記事も参考にして下さい。(参考記事→転職希望条件のリストの作成

専門医取得よりも、医者の仕事を続ける方が大事

当然ですが、心身を壊してでも専門医を目指すのは得策ではありません。心身を一度壊してしまうと、専門医取得どころか、通常の仕事を続けることも困難です。仕事どころか普通の社会活動さえも困難になります。そこまで追い込まれてまで、チャレンジすることではありません。まずは先生ご自身の心身を最優先にしましょう。ここを間違えてしまうのが一番危険です。健康があれば、医者の仕事はなんとかなるものです。

初期研修で疲れてしまい専門医は目指せないとお考えの先生、後期研修の途中で疲れてしまい専門医取得は難しいと考えている先生、そのような先生もいらっしゃると思います。まずは体調回復を最優先にしましょう。必要ならためらわずに精神科に診てもらって下さい。休むこともある意味仕事の一つです。疲れてしまったときは、心身を壊し切る前に休みましょう。

体調が回復したところで考えましょう。心身が回復すると現場にすんなり復帰できる先生もいますが、無理だと思ったら環境を変えましょう。転職をしましょう。その場合は専門医よりも先生が体調を崩さずに働けるかを優先して下さい。転職については、こちらの記事も参照して下さい。(参考記事→専攻医の転職① 専攻医の転職②

認定医や他の資格もある

もし資格が欲しい先生は、認定医を取得することも考えられます。認定医は専門医よりも取得のハードルが低めです。日本プライマリ・ケア連合学会の認定医は7年以上の臨床経験とレポートで受験資格があります。産業医は講習を1週間ほど集中講義を受けると、試験なしで取得できます。その他、認知症サポート医やなどややマニアックですが、講習だけで取得できる資格や、取得ハードルが比較的低い資格は存在します。そのような資格を取得することも一つの考えです。

今後はどうなるかは誰にもわからない

専門医制度や周辺の環境を含めて、今後どのようになっていくかは、実際のところ誰にもわかりません。取得して有利になる可能性もありますし、あまり変わらない可能性もあります。取得しないことで今後不利になる可能性もありますが、やはりあまり変わらない可能性もあります。もし迷うのであれば、取得しておいた方が無難であることは間違いありません。しかし先生によって、状況や環境はそれぞれです。よくお考えになった結果、専門医にチャレンジしても、取得しない選択をされてもそれは良いのだと思います。

まとめ

専門医について、色々な立場や環境の先生によって、色々な意見があるのは事実です。大切なことは繰り返しになりますが、先生にとってそれが良いかどうかと言うことです。先生の目標や状況を把握しているのは先生しかおりません。どうか外野の意見に惑わされず、先生にとってベストの選択をして頂ければと思います。

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