
今回は初期研修中の先生が転職をする際の記事です。初期研修中の転職というのが一般的にはあまり知られていません。実は初期研修の中断はそこまで珍しいものではありません。初期研修の中断をお考えの先生に、注意点やその後の転職について以下で解説していきます。
初期研修中の中断
初期研修を開始した後、先生によっては思っていた病院ではなかったという場合もあります。病院見学に行っていた時と待遇が違った、忙しすぎた、当直が多すぎる、毎日のオンコールが大変など、想定外のことに悩むケースは少なくありません。特にハードワークで体調を崩してしまう先生もいます。その場合、その医療機関で最後まで研修をやりきることが難しい場合、他の医療機関への転職を考えていくことになります。
まずは体調回復が最優先
どのような状況であったとしても、先生の体調が最優先です。心身に異常を感じたらすぐに休みましょう。できれば研修責任者の先生に直接相談し、休ませてもらうように頼みましょう。事情を説明すれば断られることはまずありません。必要なら精神科を必ず受診してください。早期の段階で介入できれば、早期の社会復帰ができます。医者はご自身の受診をためらいがちですが、精神科には、迷うような状況であれば、必ず診てもらって下さい。
実は珍しい話ではない
初期研修を中断してしまう先生は、実は珍しい話ではありません。ある年度のデータでは全研修医中約1%の医師が中断したそうです。表に出てこないだけで実は結構な数がいます。私が直接知っている先生だけでも、初期研修の中断経験がある先生は10人近くいます。その全員がハードワーク等でメンタルを病んでしまった結果、中断を余儀なくされた先生でした。
以前のある医療記事によると、初期研修の1割近くがうつ状態に近い状態であったというデータもあります。先生の周りにも、心を病みかけている初期研修の先生に心当たりはあるのではないでしょうか?
管理人の体験談
かくいう私にも初期研修を中断し、研修途中で他の病院に転職した経験があります。私の場合はもハードワークが原因で心身ともに体調を崩してしまい、中断を余儀なくされました。特にきつかったのは、連日のオンコールでした。よる仕事が終わって家に帰っても、すぐに病院から電話がかかってきて呼び戻されることも普通でした。夜中の3時に呼び戻され、すぐに病院に駆けつけたこともあります。それが平日、休日かかわらず、24時間続きました。さすがに心身ともに消耗してしまい、鳴っていない電話の幻聴で飛び起きることも増え、電話自体が怖くなりました。実はずいぶん時間が経った今でも電話が苦手です。トラウマになっているのでしょう。ある時、とうとう様子がおかしいことに気付いた上司から声をかけられ、そのまま休職することになりました。すぐに精神科にも紹介されました。うつ状態と診断され、通院、薬物治療が始まりました。
その時のことは今でも思い出したくないです。初期研修が始まったばかりで倒れてしまった自分を非常に責めて、目の前が真っ暗になりました。研修医が終わらないと医師として働くことが難しいことが知っていました。そのため、これからどうしていこうか、抗うつ剤で回らなくなった頭で堂々巡りで悩み、眠れない日が続きました。そのため一時期はかなり強い眠剤を使用していました。
いま冷静に振り返ると、完全に私の性格と、研修病院が求める仕事にミスマッチが起きている状況でした。研修病院は忙しい環境に身を置くことで現場主義でどんどん経験させて、研修医を成長させる病院でした。この環境は私にはどうしても合いませんでした。そのため、ここの病院で初期研修を最後までやることは無理だと考え、他の病院を探すことにしました。
初期研修医の中途入職を受けてくれる病院は多くはありません。マッチングのようなシステムも当然ありません。とにかくインターネットで検索をして、中断者を受けてくれる病院を探しました。当時はとにかく初期研修を終えられればいいと思っていたので、全国で探しました。その結果、一つ病院を探し当てました。アポイントをとり、率直に自分の状況を全て説明し、その結果受け入れて頂けることになりました。その病院はたまたま過去に初期研修で中断した医師を受け入れた実績があったのです。体調回復まで半年ほどかかりましたが、無事に転職をすることが出来ました。
元々の研修病院にも、率直に自分の状況を説明し、どうしてもここでは私の体力的に難しいことをお伝えして、転職の意思を伝えました。筋を通すために、メンタル的にはかなりしんどかったですが、直接訪問し、短い研修期間の感謝もお伝えしました。実は私のためにオンコールの免除や負担を減らした研修も考えてくれていたのですが、私はその病院に行くこと自体が怖くなってしまい、とても仕事をできるような状況ではなかったので、辞退することにしました。
転職先の病院は、以前の病院と比べると全く違う環境でした。同じ研修医でもここまで違うものかと驚きました。ここは時間外は当直が対応する病院なので、オンコールもありません。私が半年ほど休んでしまったので、研修修了は同期よりも遅れましたが、無事に転職先の病院で初期研修を卒業できました。もちろん途中メンタル不調が再発するなど、大変なこともありましたが、なんとかなりました。
私の場合は、たまたま上司が私の状態がおかしいことに気づいて声をかけてくれましたが、先生がもし同じような状況であれば、早めに自分から上司に言った方がよいです。実は自分でも自分の精神状態が完全に通常の状態ではなく、壊れかけていることはとっくに気付いていました。しかし我慢するしか無いと思いこんでいたので、結果的に、長期休職するまで体調を崩してしまいました。一度完全に崩れてしまうと、体調が戻るにはかなり時間がかかります。仕事ができる状況にまで回復するには、非常に大変です。復帰後も後遺症も残ります。どうか先生は、このままでは持たないと思ったら、早めに撤退してください。繰り返しますが先生の心身が一番大切です。どうかこれだけは忘れないで下さい。
私が自分から休めなかった理由の一つに、同期や一つ上の研修医にも迷惑をかけてしまうということもありました。当時は研修医で月に6-8回ほど日当直に入っていたので、私が抜けてしまうと他の同僚にしわ寄せがいってしまいます。でもいま冷静に振り返れば、研修医がいなくても日当直は回せます。むしろ回らない方が大問題です。そんな判断力さえも失っていたのでしょう。先生も同僚や病院の体制よりも大事なのは先生ご自身です。どうかそのことを決して忘れないで下さい。
求人会社でも取り扱いは多くない
初期研修の転職は一般的ではないので、医師求人会社でも取り扱いが多くはないのが実情です。しかし中には初期研修の転職を受け入れている病院の情報がある会社もあります。ダメ元のような気持ちで聞いてみるのが良いです。もし無いと言われてもショックを受ける必要はありません。メンタルが弱っている時に、先生が希望する求人がないと言われると、求人会社からも見放されたような気持ちになってしまいますが、決して気にしないで下さい。
求人会社によっては、前例がないものはよく調べないで断ってしまうこともあります。ダメと言われたら、すぐにパスして次に移りましょう。前述のように初期研修の途中で中断する先生は決して少なくありません。それらの先生はどこかしらで研修を終えています。探せばかならず見つかります。そのためこの場合でも、見つかるまで何社でもあたってみるのが良いです。このサイトのオススメ求人も参考にして下さい。(参考→当サイト厳選!医師求人会社紹介)
ネットで探すと研修中断を募集している病院もある
求人会社と併行して先生に行って頂くのが、ネットでの検索です。初期研修、中断、などのキーワードで検索すると、初期研修を中途でも受け入れてくれる病院が出てきます。私もこの方法である病院に辿り着きました。検索の1ページ目で出てこないことも多いので、何ページでもしつこく遡って検索することが大切です。キーワードとしては、初期研修、中断、受け入れ、再開、中途入職、、などキーワードを変えて、しつこく検索することがポイントです。医師求人会社でも見つからなかった病院にたどり着けることも珍しくありません。
またマッチングで定員割れしている病院であれば、研修医の受け入れにまだ余裕があると考えられます。そのため相談すると、状況によっては受け入れてもらえる可能性があります。
初期研修は時間をかけて卒業でも良い
研修を中断した場合、必須の診療科を回っていることやレポート、経験症例の条件を満たせば、90日以内であれば、休んでも研修期間を延長せずに卒業することが可能です。また90日以上休職した場合も、期間を延長して行えば、卒業できます。友人の医師には休職を挟みながら3年以上かけて初期研修を修了し、その後立派に働いている先生もいます。時間をかけても卒業できれば、問題ありません。。
初期研修を修了すれば、医者として働く幅が広がる
初期研修を修了した先生は資格上は麻酔などの一部例外を除き、特に制限なく医療行為が可能になります。初期研修を修了していないと保険診療の仕事は出来ないため、献血や検診のバイトなど限られた仕事しかすることが出来ません。美容など保険診療以外の仕事でも、初期研修修了を条件にしている医療機関の方が多いです。そのため初期研修を終えるまでは、かなり限られた仕事に限定されてしまいます。医師免許は初期研修を修了してからやっと普通に使えるようになるような側面があります。遠回りしても、時間をかけても、できれば初期研修は修了しておきたいところです。
まとめ
研修医の中断は珍しいものではありません。私が知っている医師も、その後、転職で環境を変えたりするなどで何らかの形で復帰して、全員が無事初期研修を修了し、次のステージへ羽ばたいています。いまつらい時期にいる先生もいらっしゃると思いますが、諦めなければ必ず道は開けます。休養が必要なときはしっかり休んで下さい。そして体調が回復したところで、少しずつ動き出しましょう。
先生の初期研修修了を心から応援しています。