経営者の立場からみた医師転職

今回は経営者の立場から医師転職を考えてみようと思います。医師の採用は、お金も時間も労力もかかり、経営サイドにとっては悩みのタネです。経営者の立場を理解することで、先生が転職を有利に勧めるヒントが得れられます。

医師採用は医療機関にとって悩みのタネ

医療機関にとって医師はなくてはならない存在です。実際に医師が一斉に退職するようなことが起こると、診療科の縮小や、休院、閉院に追い込まれるケースもあります。

また医師採用は一人の医師を雇用するだけでも、常勤の場合は、医師求人会社に支払う手数料、募集の広告料などで数百万円単位のお金がかかりますし、それに伴う雑務もあります。お金も労力も負担が大きく、採用した医師が短期間で退職となると、かなりの痛手になります。

医療機関の理想の医師像

理想は問題を起こさず、長く勤めてくれる先生

医療機関が求める理想の医師はどのような医師でしょうか?基本的には問題を起こさずに、長く勤めてくれる、穏やかな先生が好まれます。診療の特別なスキルよりも、人当たりのよいコミュニケーション能力のある先生の方が医療機関からは歓迎されます。医師が考えているほどに診療スキルや資格が重視される場面は、特殊なケースを除いて少ないです。というのは、一般的な医療機関はcommon diseaseの対応がほとんどです。また良くも悪くも医師のスキルによって診療報酬が変わることもありません。

医師に求められるコミュニケーション能力とは?

コミュニケーション能力といっても特別なものが求められることはありません。スタッフに挨拶をする、指示をわかりやすく伝える、時間や約束を守る、報告連絡相談を行うなど、社会人として普通にしていれば全く問題ありません。注意が必要なのは、怖い先生と思われてしまうとことです。その場合スタッフとのコミュニケーションに支障が生じます。何かミスがあったとしても、怒鳴ったり、強く叱責するのはNGです。

実はコミュニケーションの問題で、契約更新を打ち切られたドクターを数人間近で見てきました。その病院は5年毎の契約更新で、よっぽのことが無い限り契約は延長となります。前述のように新たな医師採用には多大な労力がかかるからです。しかし事務スタッフに対して当たりが強かったり、看護師から苦情があったりと問題があったようで、病院側から契約更新しない旨を伝えられ、退職になりました。診療スキルで待遇に差が出ることは多くはありませんが、コミュニケーション能力ではこのような差が生じます。

医療機関の理想を把握した上で、先生が取る対策

先生が取る対策としては、コミュニケーション能力、穏やかな印象を面接の時に示すことができれば、医療機関側に好印象になります。コミュニケーション能力と言っても、特に普通に受け答えができれば問題ありません。面接に遅刻せず早めに到着すること、面接をしてもらう旨のお礼を最初に伝えること、穏やかに受け答えをすること、最後に面接のお礼を述べて退出することなど、基本的なことができればまず問題ありません。

また長く勤めたい旨をアピールすることも重要です。もちろん本心から、先生が長く勤めたいと思える医療機関に応募することが前提です。

転職後の対応は?

前述のように、契約更新がある場合は特に、入職後もコミュニケーション能力は大切な評価項目となります。ただ普通にしていれば多くの先生には問題になりません。医師の立場上、時には厳しいこともスタッフに言わなければならない場面もあると思いますが、決してパワハラにならないように注意をして下さい。

コミュニケーションにやや問題がある??医師が多い職場だと、普通にしているだけで、スタッフから信頼されたり、驚かれたりすることがあります。スタッフと円滑にコミュニケーションが取れると仕事がスムーズに進みます。医療安全にも役立ちます。是非面接時だけでなく、入職後もコミュニケーションを意識していただければ、先生にとっても働きやすく、長く勤められる職場になるかと思います。

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