
医師の退職はその多くが、先生の方から退職を申し出ることがほとんどです。理由は様々ですが、よっぽどのことがない限り、医療機関側から医師を解雇することはありません。特に常勤医師は、法律により労働者として非常に強固に保護されており、解雇が非常に困難ですが、非常勤医師は有期契約の期間が終わるタイミングで契約更新せずに、雇い止めに遭うケースが存在します。
今回は医師の雇い止めについて考えて行きます。
非常勤医師の雇用形態
非常勤医師はその勤務先によりますが、一定の期間雇用契約を結び、特に問題がなければ、契約は更新していく流れが多いです。契約を更新しないケースはほとんど先生側の都合によるものが多く、医療機関側から契約を更新しないことは多くありません。また新たに医師を探して、雇用するには多くの手間とお金がかかるからです。医療機関側としては、診療体制が大きく変わったり、常勤の医師がよっぽど充足するなどなければ、契約を更新したい場合が多いのです。
契約期間は医療機関や診療内容によりますが、半年から数年のところが多いようです。自由診療は半年ごとの短めのところが多い気がします
医師が雇い止めとなるケースではほとんどがコミュニケーションが原因。
医師が雇い止めにあうケースの、そのほとんどの原因はコミュニケーションの問題です。患者さんへの態度はもちろんありますが、それよりも内部の職員からの評判が重要なことのほうが多いようです。特にスタッフに当たりが強い厳しい先生がいると、診療の輪が乱れ、場合によってはパワハラが原因で、看護師さんや事務さんが辞めしまう悪循環を生じうるからでしょう。
私が知る限り、臨床の腕が悪いという理由で、雇い止めに遭った医師は一人も知りません。雇い止めとなった先生は、職員への当たりが強い先生や、職員を困らせるような先生でした。
非常勤医師の例
中堅の女性の先生で、患者さんや医師の間では評判は悪くない先生でしたが、事務さんへの当たりが強い面がありました。また看護師さんに対しても、人によっては厳しいところがあったかもしれません。コミュニケーションは全く問題ない先生でしたが、ときに当たりが厳しいところがスタッフ間で知られていたようです。非常勤の5年契約で、その先生は当然更新されるものと思っていましたが、更新の数ヶ月前に、契約打ち切りを言い渡されたそうです。青天の霹靂で、そこから急いで次の勤務先を探されたと伺いました。その先生は非常勤をいくつか掛け持っていたため、そこまで切羽詰まっていた状況ではありませんが、やはり急なことだったので大変だったようです。退職前に少しお話をしましたが、ご自身でも患者さんからというより、内部のスタッフからの問題かな、、、とおしゃっておりました。その先生としては、良かれと思って言ったこともあったようですが、結果的には上手く伝わらなかったようです。
またこれは憶測ですが、薬剤の入れ替えや、導入にも熱心な面がありました。もしかしたら幹部からみると、色々言うことで、煙たがられてしまた面もあったのかもしれません。
常勤医師の例
例外的ですが常勤医師でも雇い止めに遭った例を目にしたことがあります。その先生は一定の年齢の先生でしたが、やはりスタッフからの評判が芳しく無く、特に看護師さんから苦情が出ているようでした。定年の年齢で、通常であれば再雇用されるのが通例でしたが、再雇用されず、契約を切られてしまったようです。その先生は今までもいくつも病院を転々とされていたようで、もしかすると今までにも退職を促された例があったのかもしれません。少しブランクを経て、他の医療機関に再就職されましたが、一定の年齢で新たな常勤先を見つけるのは大変だったのではないかと思います。
非常勤の場合は外からの評判は意識せざるを得ない。。。
非常勤の先生は、契約を切られてしまうと仕事を失ってしまいます。一緒に働くスタッフからの評判は意識が必要でしょう。しかし何も特別なことをする必要はありません。スタッフと円滑なコミュニケーションを心がけていれば、特に問題が起こることはまずないでしょう。注意が必要なのは、決して感情的にならないことです。めったなことでは怒らない方がいいです。何か注意するにしても、柔らかく伝えることが大事です。
また非常勤先をいくつか掛け持っている先生は、医療機関によっては、やや古いことや、おかしなことをしているケースを目にするとこともあると思います。これについても、致命的にならないようなことであれば、非常勤という身分である以上、過度に踏み込まないほうが無難です。管理業務は常勤の先生にお任せしましょう。先生が良かれと思って言っても、煙たがられることも少なくありません。。
具体的な対策は?
まずはなんといってもスタッフとのコミュニケーションです。挨拶を交わす、指示はわかりやすく伝える、怒らない、注意するときも優しく、などしていればまず問題ないでしょう。
あとは時間を守ることも大事です。勤務時間には余裕を持って着けるようにしておくほうが良いです。電車が止まってしまった場合など、明らかに先生に非が無いケースはもちろん仕方ないですが、遅刻を繰り返すと、特に経営陣からの信頼を失ってしまいます。就業時間前に仕事が終わったからと勝手に早く帰るのもNGです。
食事会や飲み会などは、無理に行く必要はないでしょう。もちろん好きな先生は出席してもよいと思いますが、仕事中に普通にできていれば、仕事外に無理に付き合う必要はないと思います。
まとめ
先生が実際に雇い止めに遭うケースはかなり稀だと思います。今回は「コミュニケーション」を何度も繰り返しましたが、いわゆるコミュ力が高いというのは、医師の業務にはあまり必要ありませんし、また求められてもいないように思います。社会人として、普通のことを普通にできる以上はまず求められません。
余談ですが、ある先生は一般的にみればコミュ力が高いとは言えない、寡黙な先生でしたが、事務スタッフから信頼されていました。仕事も特段すごいスキルがあるというわけではなかったですが、淡々と丁寧に仕事を積み上げる先生でした。もちろん雇い止めとは無縁の先生でした。
このサイトをご覧の先生には、特に問題はないと思いますが、少しでも気に留めていただくと、よい勤務先で長く続けることができると思います。