医療脱毛クリニックへの転職

医療脱毛クリニックの皮膚トラブルと医師の対応|毛嚢炎・光線過敏・硬毛化・当て漏れ

※この記事は、2023年に別のサイト「医療脱毛クリニックバイト.com」で書いた記事を、このサイトに移してまとめ直したものです。その後、2025年には大手の医療脱毛クリニックが相次いで経営破綻するなど、業界の状況は変わっています(参考記事:医療脱毛クリニック経営破綻の衝撃)。

医療脱毛のカウンセリングでは、やけど、色素沈着、肥厚性瘢痕、硬毛化、麻酔によるアレルギー反応など、起こりうるさまざまなリスクを説明します。ただ、実際に医師が対応するものはかなり限られます。正直、拍子抜けするかもしれません。

この記事では、医療脱毛クリニックで医師が実際に対応することの多い皮膚トラブルと、その対応をまとめます。皮膚科や形成外科でない先生でも、ここに書いたことを押さえておけば、まず困ることはないと思います。

診察は、写真で行うことが多い

実は私も働き始めてから知ったのですが、医療脱毛クリニックでは、お客様を直接診察する機会はまれです。看護師さんが撮った写真を見て診察します。

レディースのクリニックでは、お客様は全員女性ですが、医師は男性のほうが多い状況です。皮膚トラブルが起こる部位も、VIO など診察に抵抗がある部位であることが少なくありません。そのため、女性の看護師さんが写真を撮り、それを見ながら診察する流れになります。写真はカルテに残せるので記録の面でも安心で、悪化したときに以前と比べることもできます。モニターで拡大できるので、肉眼より見やすいくらいです。初めは驚かれるかもしれませんが、慣れれば写真でまったく問題ありません。

初診では、光線過敏症のチェックが欠かせない

今はほとんどのクリニックで、医療レーザー脱毛が行われています。従来のニードル脱毛に比べて短時間で広い範囲を施術できますが、光線過敏症には気をつける必要があります。内服薬や外用薬を使っているお客様の薬のチェックは、初診時に必須です。

多くのクリニックではマニュアルが用意されていますので、それに従えば大丈夫です。マニュアルに載っていない珍しい薬は、個別に調べます。便利なのが、PMDA(医薬品医療機器総合機構)の医療用医薬品の添付文書の検索です。薬の名前で添付文書を開き、ブラウザのページ内検索で「光」と入力します。「光線過敏症」「日光への曝露を最小限に」などの記載が見つかれば、光線過敏症の危険が高いとして休薬が必要です。何も出てこなければ、リスクは低いと考えられます。

休薬期間はクリニックの決まりに従えばよいですが、多くの薬剤は前後1週間空ければ、おおむね問題ないと考えています。ただし、ニキビ治療薬のディフェリンゲル0.1%やベピオゲル2.5%、それらの配合剤は、長めに避けるクリニックが多いです。ビタミンA系の内服(イソトレチノインなど)も注意が必要で、前後数か月の休薬期間を設けているクリニックもあります。脱毛クリニックはお客様が若めなので、ニキビの薬を使っている方は多く、特に注意しています。花粉症の季節に多い抗アレルギー薬は、問題なく使えるものが多い印象です。

いちばん多いのは毛嚢炎

実務でいちばん多い皮膚トラブルは、毛嚢炎です。どうしても一定の確率で起こるようで、どのクリニックにも必ず対応マニュアルがあります。

標準的には抗菌薬で対応します。軽い炎症なら抗菌薬の外用(ダラシンTゲル1%、アクアチムクリーム1%など)、範囲がやや広い場合やこじらせている場合は内服も併用します(ルリッド錠150、ビブラマイシン錠50mgなど)。炎症後色素沈着を防ぐために、シナール配合錠などのビタミン剤を併用するクリニックもあります。慣れないうちは、外用と内服を併用しておくのが無難かもしれません。数例も診れば慣れて、あとはルーチンワークにできます。

薬はクリニックに常備しているものから選ぶので、普段使わない薬もあると思います。多くのクリニックでは、皮膚トラブルの診察や処方を脱毛料金に含めているため、費用の面からジェネリックや安価な薬に限られることもあります。標準治療からやや外れたマニュアルもありますが、アルバイトの医師としては、意地を張らず、マニュアルに素直に従うのがよいと思います。マニュアル外の対応は間違いが起こりやすく、医療安全の面でも、決められたセットを使うのが無難です。

当て漏れの判断

医療脱毛では、一定の確率でレーザーの当て漏れが起こります。お客様からの申し出で診察し、当て漏れかどうかの最終判断は医師が行います。

レーザーを当てて2〜3週間たつと、毛がポロポロと抜け落ちます。ただ、毛周期の関係で、一部抜けない毛があるのは普通のことです。これは当て漏れではないので、そのように説明すれば大丈夫です。当て漏れを疑うのは、一部分だけ毛がまったく抜けずに密集しているときや、線状・帯状に抜けない毛が残っているときです。

起こりやすいのは VIO です。痛みが強いので、お客様の様子を見ながら休み休み施術し、出力の調整で機械を操作することも多いため、再開するときに場所を間違えやすいのです。

当て漏れと判断したら、その部位を無料でもう一度施術します。その部位だけなので、クリニックの負担はほとんどありません。微妙で判断が難しいときは、当て漏れとして扱い、もう一度照射したほうが、お客様の満足度は高いです。医療脱毛は自由診療で、ここで厳密な医学的判断が求められているわけではありません。満足していただければ、追加の施術を選んでいただけたり、ほかのお客様を紹介していただけたりすることもあります。

まれだが知っておきたい、硬毛化・増毛化

硬毛化・増毛化は、脱毛のはずが逆に毛が濃く、目立つようになる副作用です。カウンセリングでは必ず説明する項目ですが、頻度は日本では1%弱とも言われ、臨床の印象ではもっと低いと思います。産毛の多い顔、うなじ、背中、上腕、肩などに起こり、仕組みはまだ分かっていない部分が多いようです。私自身、間違いなく硬毛化と言える症例にはまだ出会ったことがなく、疑いの症例が年に1例あるかないかです。

判定は、施術前後の写真の比較で行います。施術前の写真がなければ、ほぼ判定できません。後のほうが毛が濃くなっていれば硬毛化として対応し、微妙なときは念のため「硬毛化疑い」として扱います。

対応は、主に4つが考えられます。

  1. その部位の施術を中止する
  2. 施術を今までどおり続ける
  3. 出力を上げて続ける
  4. ニードル脱毛に切り替える

最も無難で、実務でもほとんどとられているのは、1の中止です。その部位の脱毛はあきらめることになりますが、悪化は避けられ、時間がたつと元の状態に戻ることも期待できます。お客様の強い希望があれば、リスクを十分に説明したうえで、2の継続が対応できる範囲でしょう。3はやけどや硬毛化の悪化のリスクが高く、おすすめしません。4のニードル脱毛は確実性は高いものの、時間も技術も必要で痛みも強く、今では現実的ではありません。

困ったら、マニュアルと本部へ

判断に迷ったときは、まずクリニックのマニュアルに沿いましょう。それでも難しいケースは、本部に相談できます。大手のクリニックでは、経験豊富な常勤医師に相談できる体制をとっています。スポットなど慣れない医師が勤務することも多いためです。困ったときは、こうした支えを遠慮なく使いましょう。

まとめ

  • 診察は写真で行うことが多く、慣れれば問題ありません。
  • 初診では、使っている薬の光線過敏症のチェックが欠かせません。
  • いちばん多いのは毛嚢炎で、マニュアルどおり抗菌薬で対応します。
  • 当て漏れは、迷ったら当て漏れとして扱うほうが、お客様の満足度は高いです。
  • 硬毛化はまれです。迷ったら、その部位の施術を中止するのが最も安全です。

医療脱毛クリニックの仕事全体については、こちらにまとめています(参考記事:医療脱毛クリニックの医師の仕事)。

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この記事を書いた人:管理人 転職経験のある現役医師。複数の医師求人会社と面談し、いくつもの医療機関の採用面接を受けて転職しました。自分が転職するときに知りたかった情報を、失敗談も含めて書いています。 プロフィールを見る →