転職準備

医師の転職で面接・病院見学の際に確認しておきたいこと――求人票だけではわからない職場の実態

以前、当サイトでは、医師の転職に際して、入職前に病院見学を行い、できれば自分と近い立場の先生から直接話を聞いておくことが重要だとご紹介しました。しかし、具体的にどのような点を確認すればよいのかについては、これまで簡単に触れる程度で、一つの記事として詳しく取り上げたことがありませんでした。そこで今回は、医師が転職する際に、面接や病院見学で確認しておきたいことについて、私自身の経験も交えながら整理してみたいと思います。(参考記事:入職前に実際に現場の医師に話をきく、実際に働いている先生へのインタビューについて、経験を積んだ医師でも病院見学をしていいのか――転職前に現場を確認することの大切さ)

特に重要なのは、求人票や面接で説明される勤務条件と、実際に働き始めてからの勤務実態は、必ずしも一致しないという点です。求人票に記載されている条件が魅力的であっても、実際には想定していなかった業務が発生したり、休暇を取りにくかったりすることがあります。また、勤務条件そのものに問題がなくても、職場の雰囲気や人間関係が合わず、長く勤務することが難しくなる場合もあります。確認したいことは数多くありますが、私が特に重要だと考えている点を、順番にご紹介したいと思います。

当直・日直の回数だけでなく、勤務の実態まで確認する

まず、多くの先生が気にされるのは、当直や日直の回数ではないかと思います。一般病棟を持つ病院で常勤医として働く場合、私の経験では、週1回程度の当直が固定で割り当てられていたり、週1回の当直に加えて月1回程度の日直が設定されていたりする職場も珍しくありません。例えば、毎週決まった曜日に当直を担当し、それとは別に月1回、日曜日の日直を担当するといった形です。ただし、実際の勤務体制は病院によってかなり異なります。毎月のシフトが不規則で、前月にならないと当直日が決まらないところもありますし、固定の当直日が設定されていても、頻繁に変更を依頼される職場もあります。場合によっては、医師同士で当直の押し付け合いのような状況になっていることもあり、単純に回数だけを確認すればよいというものではありません。

また、当直の内容についても確認が必要です。ほとんど呼ばれることがなく、いわゆる「寝当直」に近い職場もあれば、一晩中救急対応に追われ、ほとんど眠れないような職場もあります。同じ月4回の当直であっても、実際の負担はまったく異なります。ある程度規模の大きな病院であれば、各診療科のオンコール体制が整備されており、緊急手術が必要な場合には外科の先生に連絡して対応してもらえるのか、それとも当直医がかなり広い範囲まで判断しなければならないのかという点も重要です。救急外来についても、軽症の一次救急が中心なのか、重症患者まで対応する必要があるのか、あるいは病棟対応が中心なのかによって、求められる役割は大きく変わります。そのため、当直中にどの程度の患者さんを診察するのか、実際に何時間くらい眠れるのか、専門外の患者さんにどこまで対応する必要があるのかといった点まで確認しておく方がよいと思います。

さらに、当直明けの勤務についても確認しておきたいところです。当直明けにそのまま帰宅できるのか、午前中だけ勤務して帰れるのか、それとも通常勤務を続ける必要があるのか。最近では当直翌日を休みにする病院も見られますが、実際にどのような運用になっているのかは、病院ごとに確認する必要があります。当サイトをご覧になっている先生の中には、そもそも当直をしたくないという理由で転職を検討されている方も少なくないと思います。その場合には、当直が免除されるという説明を受けるだけではなく、当直なしという条件を入職時にきちんと書面に残してもらうことが大切です。入職後に認識の違いが生じないよう、この点は特に強調しておきたいと思います。

オンコールと、見落としやすい土曜日午後の「残り番」

オンコールについても、当サイトではこれまで何度か取り上げてきましたが、転職前に確認しておきたい重要な項目です。同じオンコールという言葉でも、実際に求められる対応は病院によって異なります。電話対応だけで済むことが多いのか、頻繁に病院へ呼び出されるのか、どの程度の時間内に駆けつける必要があるのかといった点を確認する必要があります。また、オンコール当番の頻度だけでなく、実際にどのくらい呼び出されているのかを聞いておくことも重要です。オンコールの負担については、以前の記事でも詳しく取り上げていますので、そちらも参考にしていただければと思います。(参考記事:オンコール対応について。、入院患者さんを受け持つ場合でもオンコール免除の求人はあるのか?)

当直や日直とは別に、意外と見落としやすいのが、土曜日午後などの「残り番」です。病院によっては、土曜日の午前診療が終わった後も、病棟対応や救急外来のために医師が残る必要があり、その担当を順番に割り当てているところがあります。実質的には土曜日午後の日直に近い業務ですが、通常の当直や日直とは別の扱いになっていることもあります。このような勤務で注意したいのは、単純に休日が減るということだけではありません。病院内にほかの医師が少なくなる時間帯に、一人で判断しなければならない状況が発生する可能性があることです。こうした環境に強いストレスを感じる先生にとっては、当直や日直が少なくても、残り番があることで勤務の負担が大きくなる場合があります。求人票には記載されていないこともありますので、土曜日午後や休日に、当直・日直以外の勤務当番が存在しないかどうかも確認しておくとよいと思います。

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有給休暇・夏季休暇・年末年始の休みは実際に取れるのか

勤務条件を確認するうえで、休暇の実態も非常に重要です。有給休暇が何日付与されるのかということは、雇用条件を確認すればわかります。しかし、本当に重要なのは、実際にどの程度取得できているのか、希望した日に休暇を取りやすい環境なのかという点です。例えば、制度上は夏季休暇が用意されていても、実際には業務が忙しく、ほとんど取得できていない先生がいる病院もあります。また、有給休暇についても、休暇を取得した扱いになっているにもかかわらず、その日に病院へ出勤して仕事をしている先生がいるという話もあります。もちろん、このような運用は問題ですが、制度として休暇が存在することと、実際に休めることは別の話です。(参考記事:勤務医も労働者である|有給休暇・解雇・退職の権利と労働基準監督署)

年末年始についても同様です。病院として休診日が設定されていても、病棟の患者さんがいる以上、医師による対応が必要になる場合があります。そのため、年末年始にどの程度出勤する必要があるのか、当番制なのか、実際にまとまった休暇が取れるのかといった点も確認しておきたいところです。特に、転職の目的が勤務負担の軽減や家族との時間の確保である先生にとっては、休暇の取りやすさは給与と同じくらい重要な条件になることもあると思います。面接時の説明だけでなく、可能であれば実際に勤務している先生に、有給休暇や夏季休暇をどのように取得しているのか聞いてみることをおすすめします。

外来患者数と病棟の受け持ち患者数

外来や病棟で、どの程度の患者さんを担当する必要があるのかも、勤務負担を考えるうえで重要です。病棟の受け持ち患者数については、急性期病院なのか、慢性期病院なのかによって大きく異なります。例えば、状態の安定した患者さんが中心の療養病棟やリハビリテーション病棟では、医師1人で50人程度の患者さんを担当しているところもあります。一方、急性期病院では受け持ち患者数が10人程度であっても、重症患者やICUの患者さんばかりであれば、非常に負担の大きい勤務になることもあります。私自身の印象では、急性期と慢性期の患者さんを合わせて15〜20人前後を担当するような職場もありますが、これは病院の機能や診療科によってかなり違います。そのため、単純に受け持ち患者数が多いか少ないかだけで判断するのではなく、どのような患者さんを、どの程度の責任を持って担当するのかというところまで確認しておく必要があります。

外来についても同様で、1コマあたり何人程度の患者さんを診察するのか、どのような患者層なのかによって、実際の業務負担は異なります。これらは面接や見学の際に質問すれば、通常はある程度具体的に教えてもらえる内容だと思います。また、注意したいのは医師の人数が変動した場合です。例えば、常勤医が急に退職したり、複数の医師が一斉に退職したりすると、残された医師の受け持ち患者数が急に増えることがあります。将来の人員変動まで正確に予測することは難しいですが、現在の医師数や実際の業務分担については、事前に確認しておく方がよいでしょう。

時間外労働と、勤務日以外の出勤について

時間外労働についても、求人票に記載された勤務時間だけでは判断できない部分があります。実際には定時からどの程度遅くまで勤務しているのか、時間外の呼び出しがどのくらいあるのか、勤務日以外にも病院へ行く必要があるのか。また、そのような勤務が発生した場合に、手当がどの程度支払われるのかといった点は、事前に確認しておくべきだと思います。例えば、月曜日から金曜日までの週5日勤務という契約であっても、実際には土曜日の午前中にも病院へ来ることが、ほぼ前提になっているような職場もあります。また、土曜日や日曜日の午前中に病棟の患者さんを診察することが、慣例のようになっている病院もあります。こうした勤務が当然のものとして扱われている場合、求人票に記載されている勤務日数から想像するよりも、実際の負担は大きくなります。

医療機関では、勤務時間と勤務時間外の境界が曖昧になっているところも、まだまだあるように感じます。休日に担当患者さんの状態が気になって病院へ行くことと、実際には出勤しなければ業務が回らないことは、分けて考える必要があります。特に、仕事と私生活の切り替えを重視して転職される先生にとっては、こうした時間外労働や勤務日以外の出勤について、どの程度求められる職場なのかを確認しておくことが大切だと思います。

各診療科との連携や、緊急時の対応体制

もう一つ確認しておきたいのが、各診療科との連携や、自分一人では対応できない患者さんが発生した場合の対応体制です。特に、当直や休日の勤務では、自分の専門外の患者さんに対応しなければならない場面が生じることがあります。その際、ほかの診療科の先生に相談できる体制があるのか、必要に応じて専門医に来てもらえるのかということは、勤務するうえで大きな違いになります。また、自院では対応できない重症患者さんについて、ほかの医療機関へ搬送する体制が整っているのか、判断に迷った際のマニュアルや相談先が明確になっているのかという点も確認しておきたいところです。特に、一人で判断する場面をできるだけ避けたい先生にとっては、非常に重要なポイントになると思います。

病院見学では、病棟や医局の整理整頓にも注目する

ここまでは、主に雇用条件や実際の勤務内容についてご紹介してきました。ここからは、病院見学の際に、私が確認しておいた方がよいと考えている職場環境についてお話ししたいと思います。まず、病棟や医局がきちんと整理整頓されているかどうかという点です。これは私自身の経験から感じていることですが、病棟や医局が極端に散らかっている病院については、少し注意した方がよいのではないかと思います。例えば、物があちこちに積み上げられていたり、ゴミが放置されていたり、長い間掃除されていないように見えたりするところです。もちろん、病棟にはさまざまな医療機器や物品が置かれていますし、忙しい時間帯には一時的に物が散らかることもあるでしょう。そのような状態まで問題視する必要はないと思いますが、明らかに整理整頓がなされていない状態が日常的に続いているような職場については、少し気になるところがあります。

私は、職場の整理整頓の状態には、そこで働く人たちの余裕や、職場の管理体制がある程度反映されているのではないかと感じています。もちろん、整理整頓されているからといって必ずしも良い職場とは限りませんし、その逆も同様です。ただ、日常的に使う場所がどの程度管理されているのかという点は、職場環境を知る一つの手がかりになると思います。特に医局については、今でもかなり散らかっている病院があるように思います。病院によっては医局秘書などの事務職員が配置されており、医局の環境を管理しているところもあります。そうした職員がきちんと配置され、清掃や整理整頓が日常的に行われている医局は、比較的働きやすい環境が整えられているのではないかという印象を受けます。逆に、書類や雑誌が積み上げられ、ゴミが放置されているような医局については、単に物が散らかっているということ以上に、職場全体の管理体制がどうなっているのか気になるところです。

当直室の状態も、職場環境を知る重要な手がかりになる

病院見学の際に、可能であれば確認しておきたいのが当直室です。当直室についても、きちんと管理されている病院と、そうではない病院があるように思います。清潔で、しっかりと休息が取れるように整備されているところもあれば、かなり環境の悪いところもあります。例えば、古い本や週刊誌、漫画雑誌などが大量に積み上げられていたり、いつから置かれているのかわからない物が放置されていたり、部屋全体が埃っぽかったりするような当直室です。中には、病院内の施設とは思えないほど環境の悪いところもあると聞きます。

私の知り合いの先生にも、勤務していた病院の環境が非常に悪く、結果として長く勤務を続けられなかった方がいました。その病院は当直室だけでなく、病院内のほかの場所もかなり汚かったそうです。もちろん、退職した理由がそれだけだったとは思いませんが、そうした職場環境も少なからず影響していたのではないかと思います。ここでお伝えしたいのは、当直室が古いからよくないということではありません。古い病院であっても、清掃や設備の管理がきちんと行われていれば、それほど問題ではないと思います。むしろ、当直室のように職員が日常的に使用する場所が、どの程度大切に扱われているのかということが重要なのではないでしょうか。こうした場所の管理状況を見ることで、その病院が働く医師の環境をどの程度重視しているのか、ある程度推測できるように思います。

職員が生き生きと働いているか、病院全体の雰囲気を見る

病院見学で、もう一つ非常に重要だと思うのが、そこで働いている職員の表情や雰囲気です。これは医師だけではありません。看護師、事務職員、薬剤師、リハビリテーション職、医療ソーシャルワーカー、介護職など、病院で働いているさまざまな職種の方々が、どのような様子で仕事をしているのかを見ていただきたいと思います。職員が比較的明るく、生き生きと働いている病院では、待遇や人間関係、職場の風通しなどが、ある程度良好なのではないかという印象を受けます。もちろん、見学した短い時間だけで判断できるものではありませんが、職員同士の会話や表情、仕事をしている様子から伝わってくるものはあると思います。

反対に、職員が明らかに疲れ切っていたり、病院全体にどんよりとした雰囲気が漂っていたりする場合には、少し注意した方がよいかもしれません。先生方も、これまでさまざまな医療機関で勤務されてきたと思いますので、実際に足を運んでみれば、何となく職場の空気が悪いと感じることがあるのではないでしょうか。もちろん、忙しい時間帯であれば、職員が疲れていたり、余裕がなかったりすることはあります。しかし、病院全体の雰囲気として、どこか重苦しさが感じられる場合には、それが一時的なものなのか、日常的なものなのかを気にしておいた方がよいと思います。また、例えば見学中に、どこかの部屋から怒鳴り声が聞こえてくるような場合は、かなり慎重に判断した方がよいでしょう。職場での人間関係やコミュニケーションに問題がある可能性もありますし、少なくとも私であれば、そのような職場への転職には強い不安を感じると思います。

面接や見学で聞いた話は、どこまで信用できるのか

ここまで、面接や病院見学で確認したいことをご紹介してきましたが、もう一つ考えておきたいのが、実際に聞いた話をどこまで信用してよいのかという点です。当然ながら、面接や病院見学で説明された内容が、必ずしも勤務実態のすべてを表しているとは限りません。ただし、病院の雰囲気や職員の様子など、先生ご自身が実際に見て感じた印象については、それなりに大切にしてよいのではないかと思います。また、採用担当の事務職員から聞く話と、実際に現場で働いている医師から聞く話では、少し違いがあることも考えられます。これは事務職員が誤った説明をしているという意味ではありません。雇用条件や制度に関しては事務職員の方が詳しいこともありますが、実際の病棟業務や当直の忙しさ、休暇の取りやすさといった点については、現場で勤務している医師の方が実情をよく知っている場合が多いと思います。

私自身の経験では、病院見学に来た医師に対して、現場の先生が実態とかけ離れた説明をすることは、あまり多くないように感じています。もちろん、誰もが正確に話してくれるとは限りませんし、病院によっても事情は異なるでしょう。ただ、実際に働いている医師にとって、無理に良いことばかり話して入職してもらったとしても、その先生がすぐに退職してしまえば、結果としてあまり意味がありません。むしろ、同じ医師という立場で話をしていると、比較的率直に職場の実情を教えてくれることも多いように思います。例えば、「当直は実際にはかなり忙しい」「夏休みは制度上あるけれど、なかなか取れない」「休日も病棟を見に来ている先生が多い」といった話は、実際に勤務している先生だからこそわかる内容です。

ただし、同じ職場であっても、先生によって受け止め方が違うという点には注意が必要です。ある先生にとっては働きやすい病院でも、別の先生にとっては負担が大きく感じられることがあります。例えば、当直や時間外労働がある程度多くても気にならない先生もいれば、勤務時間や休日を厳密に分けたい先生もいるでしょう。そのため、現場の医師から聞いた話は非常に参考になりますが、最終的には、その先生の価値観を通した意見であるということも理解しておく必要があります。それでも、有給休暇が実際に取れているのか、夏季休暇を何日程度取得しているのか、当直はどの程度忙しいのかといった、比較的具体的な内容については、現場の先生に直接聞くことで、かなり実態に近い情報を得られるのではないかと思います。

病院見学をして印象が悪かったとしても、それは無駄ではない

最後に、病院見学をした結果、あまり良い印象を持てなかった場合についてお話ししたいと思います。これは以前にもお伝えしたことがありますが、実際に病院見学へ行ってみて、「ちょっとこの病院は違うな」「ここで働くのは難しいかもしれない」と感じたとしても、私はそれでよかったのではないかと思います。転職活動では、求人票を何度も読み込んだり、病院のホームページを確認したり、通勤経路を調べたりしながら、入職後の生活を想像することがあると思います。その中で、条件が非常に魅力的で、自分に合っていそうだと感じる病院が見つかれば、当然ながら期待も大きくなります。ところが、実際に病院へ足を運んでみると、事前の印象とはかなり違っていたということもあります。勤務条件そのものには大きな問題がなくても、職場の雰囲気が合わなかったり、どうしても受け入れにくい点が見つかったりすることもあります。

こうした経験をすると、少しがっかりしてしまうかもしれません。特に、普段の仕事が忙しい中で、わざわざ有給休暇を使って半日ほど時間を確保し、病院見学に出向いたのであれば、なおさらだと思います。せっかく時間を使ったのに、結局あまり良くなかったということで、無駄なことをしてしまったように感じる先生もいるかもしれません。しかし、私はそのようには考えていません。むしろ、入職する前に、自分には合わないかもしれないと気づくことができたのであれば、病院見学をした意味は十分にあったと思います。

仮に、事前の病院見学を行わず、面接での印象だけで入職を決めてしまったとします。そして実際に働き始めてから、勤務条件や職場環境が想像していたものと大きく違っていたことに気づいたとしたら、その後の対応はかなり難しくなります。もちろん、入職後に転職し直すことが不可能というわけではありません。しかし、新しい職場に入ったばかりの段階で、また転職活動を始めるというのは、それなりに大きな負担になるでしょう。そう考えると、入職前の段階で問題に気づくことができたのは、むしろ良かったことだと思います。見学に費やした半日という時間も、結果として大きな転職の失敗を避けるために役立ったのであれば、決して無駄ではありません。

最初に見学した病院で決める必要はない

特に、こうした経験は、転職活動を始めて最初の1〜2施設で起こりやすいのではないかと思います。というのも、最初に見学へ行く病院というのは、求人票を見て、かなり魅力的だと感じたところであることが多いからです。事前にホームページを調べたり、通勤のシミュレーションをしたりして、ある程度その病院で働くことを想像したうえで、実際に足を運ぶことになります。そのため、見学した際の印象が事前の期待と大きく違っていると、思っていた以上に落胆してしまうことがあります。そして、最初からうまくいかないと、「医師の転職というのはやはり難しいものなのかもしれない」と感じてしまう先生もいるかもしれません。

もちろん、最初に見学した病院が非常に良く、そのまま転職先が決まることもあります。しかし、必ずしも最初から自分に合う職場が見つかるとは限りません。また、事前に気持ちが固まりかけていたために、実際に見学して多少の違和感があっても、そのまま入職を決めてしまうというケースもあると思います。せっかくここまで話が進んだのだから、もうこの病院で決めてしまおうという気持ちになることもあるでしょう。ただ、私としては、そうしたときこそ、一度立ち止まって考えた方がよいのではないかと思います。多少気になるところがあるからといって、すぐに候補から外す必要はありませんが、何となく違うと感じたのであれば、すぐに結論を出さず、いったん候補として残したまま、ほかの医療機関も見学してみるという方法があります。実際に別の病院を見てみると、最初の病院の良さを再認識することもあるでしょうし、逆に、もっと自分に合う職場が見つかることもあると思います。いずれにしても、比較対象があることで、より納得して転職先を選びやすくなるのではないでしょうか。

病院見学を繰り返すことで、求人票を見る目も養われる

もう一つお伝えしたいのは、病院見学を経験すること自体が、その後の転職活動に役立つということです。最初は、求人票に記載された条件を一つひとつ確認しながら、この病院はどのようなところなのだろうかと想像することになります。しかし、実際に病院を見学し、現場の先生から話を聞くと、求人票に書かれていることと、実際の勤務実態との違いが少しずつわかってきます。これは、いわば求人票を読んで想像していたことの答え合わせのようなものです。こうした経験を1回、2回と繰り返すだけでも、求人票を見る目はかなり養われるのではないかと思います。例えば、この条件であれば実際にはこのような勤務になりそうだとか、この病院の規模でこの勤務条件なら、もう少し具体的に確認しておいた方がよさそうだとか、以前は気づかなかった点にも目が向くようになります。

そうなってくると、次の医療機関を探す際にも、以前より効率よく求人を比較できるようになると思います。最初の段階では見えていなかったことが、病院見学を経験することで少しずつ見えてくるわけです。もちろん、転職活動ばかり繰り返して、求人を見ること自体が目的になってしまう必要はありません。ただ、最初に見学した病院が期待外れだったとしても、その経験によって得られるものは少なくないと思います。むしろ、最初の病院で感じた違和感や、確認しておけばよかったと思ったことを、次の求人探しに活かしていただきたいと思います。その結果として、当初想定していた病院よりも、さらに自分に合った職場に巡り合えることもあるでしょう。

医師の転職は、給与や勤務日数といった数字だけで決められるものではありません。実際の勤務負担や職場の人間関係、医療機関の雰囲気など、求人票だけではなかなかわからない部分も重要になります。だからこそ、転職先を決める前に、可能な範囲で実際に病院へ足を運び、現場の先生の話を聞いてみることをおすすめします。もし見学した病院が期待していたものと違っていたとしても、転職活動そのものに失望する必要はありません。その経験を次の病院選びに活かし、先生ご自身が納得して働ける職場を探していただければと思います。

医師の転職で確認しておきたい面接・病院見学チェックリスト

最後に、ここまでご紹介した内容をチェックリストとしてまとめました。面接時に採用担当者へ確認する項目と、病院見学の際に実際の勤務医へ確認する項目、そして先生ご自身の目で観察しておきたい項目に分けています。すべてを一度の面接や病院見学で確認するのは難しいかもしれませんが、転職先を最終的に決める前には、一通り確認しておくことをおすすめします。

【勤務条件・当直・オンコール】

  • 当直・日直は月に何回あるか。固定制か、毎月のシフト制か。
  • 当直の実際の忙しさはどの程度か。睡眠時間を確保できるか。
  • 当直明けは帰宅できるか。翌日の勤務はどうなるか。
  • オンコールは月に何回あり、実際の呼び出しはどの程度あるか。
  • 土曜日午後の残り番や、休日の病棟当番はあるか。
  • 当直や時間外に一人で判断する場面がどの程度あるか。
  • 各診療科のオンコール体制や、専門外の患者への対応体制は整っているか。

【休暇・勤務時間・業務量】

  • 有給休暇は実際に年間何日程度取得できているか。
  • 夏季休暇や年末年始に、まとまった休暇を取得できるか。
  • 休暇中の代診や病棟対応はどのように分担されているか。
  • 実際には定時から何時頃に帰宅できるか。
  • 勤務日以外の出勤が事実上必要になっていないか。
  • 時間外労働や休日出勤の手当はどのように支給されるか。
  • 外来1コマあたりの患者数、病棟の受け持ち患者数はどの程度か。
  • 医師が退職した場合、残された医師の負担はどのように調整されるか。

【病院見学で確認したい職場環境】

  • 病棟や医局は清潔で、整理整頓されているか。
  • 当直室は清潔で、十分に休息できる環境か。
  • 医師だけでなく、看護師や事務職員なども落ち着いて働いているか。
  • 職員同士の会話や連携は円滑に見えるか。
  • 実際に勤務している先生から、勤務実態について率直な話を聞けたか。
  • 病院全体の雰囲気に、気になる違和感はなかったか。

【入職を決める前の最終確認】

  • 求人票、面接での説明、現場の勤務実態に大きな違いはないか。
  • 年収、勤務日数、当直免除などの重要条件が書面に明記されているか。
  • 気になる点を残したまま、入職を決めようとしていないか。
  • ほかの医療機関とも比較したうえで、納得して選べているか。

特に重要なのは、「制度上どうなっているか」だけでなく、「実際にはどう運用されているか」を確認することです。採用担当者から聞いた勤務条件に加え、実際に勤務している先生から具体的な話を聞くことで、求人票だけでは見えてこなかった職場の実態が、より明確になるのではないかと思います。

転職を考えはじめた先生へ 管理人が実際に使った求人会社2社と、その使い分けをまとめています。
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この記事を書いた人:管理人 転職経験のある現役医師。複数の医師求人会社と面談し、いくつもの医療機関の採用面接を受けて転職しました。自分が転職するときに知りたかった情報を、失敗談も含めて書いています。 プロフィールを見る →